【スカウティング・レポート】ティアニーの控えをチャンピオンシップで探す
アーセナルの最近の好調に、キーラン・ティアニーが左CBからサイドバックへとポジションを移して輝きを放っていることが関係あるのは間違いない。
4バックにシフトしたのに伴って、ティアニーは今季チームで最もチャンス創出数が多い選手となっている。
ティアニーは90分上下動を繰り返せるスタミナとフィジカルを備えており、彼の守備力だけではなく攻撃力も活用できるようになったのは大きなプラスだが、コラシナツが去った今、アーセナルには明確な左サイドバックの控えがいない。
ナイルズ、セドリック、サカあたりが一応は左サイドバックでプレイすることはできるかもしれないが、利き足的にティアニーと同じような攻撃面での貢献が期待できるのはサカのみで、そしてそのサカは、攻撃陣のほかの場所で必要とされている。
今季ティアニーはほぼ休みなく稼働しているが、彼の運動量とフィジカルなスタイルを考えるに、時折彼を休ませられるのが理想的だ。ただどうやらアルテタはバックアップがいない状態でティアニーを外すのもリスクが大きいと考えているようだ。
今回は、データとビデオによる分析から、ティアニーの控えとしてアーセナルが獲得を狙うべき選手を探してみようと思う。アーセナルの財政面での制約と、ホームグロウン選手の少なさから、英二部チャンピオンシップの選手に絞って分析を行った。
分析のプロセス
データ分析によるターゲット候補の選定
アーセナルにはティアニーが今こなしている仕事をこなすことが出来る控え左サイドバックが必要だ。
まず、相手をドリブルでかわし、質の高いクロスを上げることが出来る必要があり、かつ守備面でもソリッドで、左サイドで上下動を繰り返せるだけのフィジカルを備えている必要がある。
また、もしその選手がウイングバックやCBとしてもプレイできるようであれば、アーセナルが3-4-3を用いる際にも対応できるので、さらに都合が良い。
上の図は、チャンピオンシップで500分以上プレイした左右両サイドバックのドリブル数とクロスの数を示している。
バイエルン行きが噂されているリチャーズと、ウルブズからローンでコベントリーに来ているライン・ジャイルズが左サイドバックとしてはこれらのスタッツでトップに立っており、右サイドバックで目立つのはンガキアとスペンスだ。
また、ブレントフォードのリコ・ヘンリーとダービー・カウンティのリー・ブキャナンのスタッツもなかなか良い。
また、上の図は90分当たりの守備でのデュエル勝利回数と、守備アクションの回数を表した図だ。
こちらでもリチャーズとブキャナンは良い数字を残しており、カーディフにアーセナルからローンで出ているオセイ=トゥトゥも素晴らしい成績を残している。
一方で、リコ・ヘンリーの守備アクション数は少ないが、これはブレントフォードが単純にポゼッションで圧倒することが多い結果であるという見方もできる。
ベストチョイス: リー・ブキャナン
ここまで名前が挙がったヘンリーやリチャーズ、ブキャナンとジャイルズらのその他のスタッツを参考にしつつビデオで実際のプレイを見て分析した結果、私個人としてのティアニーの控えとしてのベストチョイスはリー・ブキャナンであるという結論に達した。
まず、リチャーズに関してはバイエルン行きが濃厚で、リコ・ヘンリーに関してはこのままブレントフォードが昇格する可能性もあるし、移籍がありうるとしても移籍金が高額になる可能性が高い。
したがって、現実的に可能性が高そうなのはブキャナンとジャイルズの二人だ。
この二人のうちでは、ブキャナンの方がティアニーによりスタイルが近いと感じるし、ジャイルズは所属先がウルブズなので、獲得交渉がよりトリッキーなものになるだろう。
ブキャナンはU-21イングランド代表で、2019年にダービーでデビューして以来、チャンピオンシップで20試合に出場している。
この記事を書くにあたって、ダービーの分析を行っているツイッターアカウントにいくらの移籍金でクラブが彼の放出を容認すると思うか、という質問をしたところ、以下のような答えが返ってきた。
彼の年齢と出場試合数、そしてイングランドU-21代表であることを考えると、通常であれば恐らく7m£程度は要求しただろう。だが、現在のダービーの経営状況を考えると、3-4m£+ボーナス程度でももしかすると獲得可能かもしれない。
ダービーは経営状況がかなり悪く、給与支払いに滞りが生じたりもしている。したがって、望まない選手売却を行わざるを得ない可能性もあるようだ。
したがって、ホームグロウンで特徴がティアニーと似ており、若く安価で獲得可能なブキャナンこそがアーセナルにとっての理想のターゲットなのではないだろうか。
リー・ブキャナンのスカウティングレポート
ダービーのシステム次第でブキャナンは左WBとサイドバック両方でのプレイ経験があり、今季は怪我が多いクレイグ・フォーサイスとローテーションしながら試合に出場している。
フィジカルとスタミナ
そこまで足が速いというわけではないが、ブキャナンはスタミナのあるアスリートで、身長以上の空中戦の強さも持ち合わせている。
攻守両面で空中戦勝利が期待でき、セットプレイでも力となるだろう。
体格も良く、身長は180cmに届かないくらいだが、押し負けたりすることはなく、プレミアリーグでも十分やれるだろう。
そして、今季先発16試合のうち12試合は90分間走り切っている。
戦術面でアーセナルにフィットするか
ブキャナンは、ティアニーと同じように、どちらかというと伝統的なタイプのサイドバックで、サイドでひたすら上下動を繰り返し、クロスを入れるような選手だ。
ダービーでは横幅をとり相手DFを引き延ばす役目を担当しており、今のティアニーと同じようにアーセナルで左の大外で相手にとっての問題を作り出すのはお手の物だろう。
クロス
上のデータのセクションで見た通り、ブキャナンは左サイドからかなりの頻度でクロスを上げている。
だが特筆すべきはその質で、技術的には常に完璧なわけではないが、ボックス内のスペースを狙う意識が高い。
浅い位置と深い位置両方でクロスを上げることが出来、彼のスピードのあるクロスはモンレアルを彷彿とさせるものがある。
守備のポジショニングと1対1
ブキャナンに弱点があるとすれば守備時のポジショニングで、対応力の自信の表れかもしれないが、時々CBに近い位置をとりすぎ、サイドを空けてしまうことがある。
その結果、すきを突かれてクロスを簡単に上げさせてしまったりすることがあるのだ。おそらくコーチング次第で改善は可能だろうが、懸念点といっていいだろう。
一方で、彼は1対1にかなりの強さを誇り、飛び込んでいくのではなく忍耐力をもって対応することが得意だ。
総合的に、ブキャナンはアーセナルの求める点を多く満たしており、バーゲン価格で獲得可能な左サイドバックの控え候補だといえるだろう。
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