エメリのインタビューが浮き彫りにしたアーセナルフロントの問題点

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先日、ウナイ・エメリがまたしてもアーセナルについて語った。

(そのインタビューの記事はこちら)

アーセナルで過ごした時間やエジルとの関係性、そして退団に関してなど、多くの興味深い点があった。また、恐らく公にはできない多くの事情が裏にはまだあるのだろう。その中でも、私が特に気になったことが一つある。

エジルとエメリの関係に関しては、今更蒸し返しても仕方がないように感じられる。エメリはエジルを助けるため全力を尽くしたというが、同時に、ヨーロッパリーグ決勝直後のミーティングにエジルは姿を見せなかったという。

つまり、監督は、自分はエジルの力を引き出そうとしたが、彼の振る舞いやパフォーマンスにおいて十分なリターンが得られなかったということが言いたいのだろう。

正直なところ、私自身はエジルの味方でもエメリの見方でもないが、初めから2人の間には問題があることは明らかだった。彼らのどちらにどれくらいの割合で非があると判断するかは、読者の皆様におまかせしよう。

より私が気になったのは、エメリが夏にウィルフレッド・ザハの獲得を望んでいた、という点だ。交渉は当然秘密裏に行われたはずだが、ザハの兄がアーセナル移籍は彼の夢だと発言したことで、その情報は公に知られることとなった。

ペペは良い選手だが、我々は彼の性格などについては知らず、適応には忍耐と時間が必要だった。私個人の希望としてはより適応に時間がかからない選手を望んでいた。

ザハと一人で試合を勝利に導ける選手だった。トッテナム、マンシティ、そして我々相手に。とんでもないパフォーマンスだった。私は上層部に彼こそが私の望む選手だと告げた。私は既にザハと話をしていたし、彼自身も移籍を望んでいた。

これは、エメリ時代のアーセナルの機能不全を象徴しているように思える。私が言いたいのは、エメリだけではなく、クラブの上層部も含めての話だ。

まず第一に、ザハは良い選手だが、パレスの要求額の80Mというのはどう考えても高すぎる。もちろん、彼らは自クラブのスター選手に大金を要求する権利はあるが、ザハの残した数字を考えると、そこまでの価値があるとは思えない。

もちろん彼は時折素晴らしいパフォーマンスを見せることもあり、より上位のクラブであれば、一貫性をもってプレイできる、という意見にも一理あるかもしれない。

だが、これまでザハ史上最高の結果を残したシーズンでも10ゴール5アシストしか出来ていないのだ。

また、ザハがアーセナルを一人で打ち破ったというエメリのコメントは、正直なところ何を意味しているのか全く持って不明だ。

エメリはパレスとアーセナルを指揮した期間中に3度対戦しているが、その度の試合でも、ザハはそれなりに活躍したものの、試合を決めるような圧倒的なパフォーマンスを見せたことはない。

それどころか、パレスが唯一アーセナルに勝利したのは昨季のエミレーツでの試合で、これはむしろエメリがメンバーを落としたことに原因があるといえる。

確かにザハは点を決めたが、それはムスタフィがミスをしただけのことだ。もし、ザハがとてつもないドリブル突破からアシスト、あるいは得点を決めたのであれば感心する気持ちも分かるが、良く失点につながるミスを犯すことで知られるDFのミスを利用して点を決めることがそこまで凄いことには思えない。

その前の2-2に終わったセルハーストパークの試合でも、試合を左右したのはムスタフィのミスだった。そして、その後ザハはジャカの足を飛び越えてPKを獲得したが、この試合でジャカはサイドバックでプレイさせられていた。

そして、その前のホームのパレス戦はジャカとファンが衝突し、キャプテンマークを投げ捨てた例の試合だ。これも蒸し返す必要はないが、この時も、ザハの目立った活躍といえばスクランブル出場したサイドバック(カラム・チェンバース)からPKを獲得しただけだ。

とはいえ、エメリの的外れなコメントは置いておくしても、ラウール・サンジェイがエメリの望む選手を分かっていながら別の選手を獲得したという事実は示唆に富んでいる。

エメリが欲しがっていたのはプレミアリーグ経験のある左ウイングだったが、アーセナルが獲得したのはリーグアンの24歳の右ウイングだった。

パレスはアーセナル側の不誠実なオファーに機嫌を損ねていたといわれ、まるでアーセナルには本気でザハの獲得を目指すつもりはなかったかのように感じたのだという。

どちらかというと、エメリをなだめるために形式的なオファーのみを出し、別の選手の獲得に着地した、という見方の方が正確なようだ。

もし私が昨夏ザハとペペどちらを獲得すべきか、と聞かれたら、ペペと答えていただろう。したがって、私はクラブのペペの獲得自体に批判的なわけではない。

だが、クラブが監督の意向を無視して選手を獲得するというのは、あまり調和のとれた移籍戦略とは言えない。

確かに、アーセナルとしては両選手の年齢と移籍金を考えれば、より将来性のあるペペの方が良いとの判断は理解できる。

しかし、ここで思い出してほしいのは、エメリがとんでもなく酷い成績を残していた時でさえ、かなり長期間にわたってサンジェイはエメリをサポートしたという点だ。我々が想定したよりもずいぶんと長かった。

ファンの間でエメリ解任論が燃え上がり始めた時でさえも、少し挑発的ともいえる姿勢でファンを否定しようとした。

当時から私は指摘していたが、このような事態であれば、当然エメリの責任はある程度限られたものになってくる。監督が酷い成績を残しているにもかかわらず、解任に踏み切ろうとしないのはフロントの責任でもあるからだ。

したがって、ここまで追い込まれたエメリをサポートし続けたフロント陣が、なぜ移籍市場でエメリの望む選手を獲得しようとしなかったのか、というのは不思議な点だ。

結局実現しなかったため、ザハの移籍交渉に関する詳細は我々には知るすべがないが、ペペの獲得には複数の代理人が関わり、彼らに巨額の手数料をアーセナルは支払ったといわれている。

移籍市場とはそういうものだ、という意見もあるだろうが、やはり、監督の希望とクラブの方向性が異なる、というのはあまり健全な状態ではないはずだ。

もちろんクラブが機能不全に陥ったのはフロントだけの責任ではなく、エメリに同情の余地はあまりない。彼は4人のキャプテンがチームを去ったことを嘆いたが、そもそも5人キャプテンを任命するというのがバカげた考えだったのだ。

アーセナルのキャプテンを巡り、監督と選手がここまで対立することになったのは、エメリだけではなく、アーセナルフロントの汚点でもある。

ザハの状況に関しても、もちろんクラブは監督の意向を無視して選手獲得を行う権利があるが、しかし、こういったことを続けていると、今後アーセナルを指揮する監督にあまり良い印象を与えないだろう。

また、もしペペが今季大活躍を見せていれば、クラブを擁護するのはもう少し楽だっただろうが、エメリ、ユングベリ、アルテタが3人そろってペペの練習態度に疑問を呈するコメントを出しており、今のところ彼のアーセナルへの移籍は成功を収めたとは言えない。

もちろんまだ彼は24で、今後アーセナルで結果を残す可能性は十分にあるが。

だからこそ、本来であればこの夏の移籍市場はとても興味深いものになっただけに残念だ。アルテタは希望通りの選手を獲得できるのか。それとも、サンジェイとのつながりの深い代理人主導での選手獲得を行うのか。

エメリの時代が終わったことに私は満足しているが、このクラブの抱える問題は、監督だけにとどまらず、その上にも及ぶものであることは明らかだ。

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Posted by gern3137