アーセナルを憂う

オリジナル

(ちょっとだらっと雑感を書いてみました。)

アーセン・ベンゲルがアーセナル監督の座を退いた時、ほとんどのアーセナルファンがこう思ったに違いない。『よし、これでこの先何があるとしてもこれ以上悪くなることはあるまい。』と。

だが、それは希望的観測に過ぎず、だが実際には、一年半が与えられたウナイ・エメリもアーセナルを立て直すことが出来ず、ベンゲル監督がアーセナルが砕け散らないようになんとか水際で支えていただけで、実情はファンが考えるよりもはるかに悪いということが明らかになった。

フロントか、オーナーか、それとも選手か。あるいは単に他のチームが成長し過ぎており、競争が激しすぎるのか。恐らくいろいろな理由が絡み合ってのことだろうが、ウナイ・エメリのもとアーセナルは特に今シーズン、急降下を続けた。

そして、ついにエメリも解任となり、またしてもアーセナルファンは同じ罠に嵌ってしまった。恐らく多くの人が、『これ以上悪くなることはあるまい』と考えていたに違いない。

だが現実は更に過酷だった。フレディ・ユングベリが暫定監督に就任したが、今のところチームは全く改善の兆しを見せておらず、攻撃、守備、フロント、どこから手を付けていいのかわからないような状態だ。

エメリ体制の一員だったユングベリが引き継いだということもあるのかもしれないが、今のアーセナルは自由にプレイできているようには見えず、状況は時を追うごとに悪化しているようにすら見える。(ここまでユングベリは数回の練習しかチームとこなしておらず、もちろんこれはユングベリのせいだといいたいわけではない。)

記憶に新しいところでは、最近はチェルシーがモウリーニョのもと同じような事態に陥っていた。チェルシーは2015/16シーズンに20年以上ぶりとなる10位という成績を記録している。

どうやら今季のアーセナルも同じような道筋をたどるのではないかと思われるが、チェルシーの立て直しの速さは見習わなくてはならない。彼らは、その翌年になんとプレミアリーグ優勝を果たしているのだ。今季もそうだが、それ以降も継続して4位争いには食い込んできており、また数年のうちに優勝争いに加わろうと虎視眈々と狙っている。

今やプレミアリーグは中位下位のチームでも潤沢な資産を持ち、高いクオリティを持った選手が揃っている。いかに歴史があるとはいえ、アーセナルが一度英国のエリートクラブのステータスを手放してしまえば、マンチェスターシティがそうであったように、どこかがその椅子に収まってしまうだろう。既にレスターシティがその兆しを見せつつある。

かつてはリバプールが中位やヨーロッパリーグ圏内に沈んでいたが、アーセナルの経済事情を考えると、一度そのようなクラブになってしまえば、もう一度CL圏内に復帰するのにどれくらいかかるのか、まったくもって想像もつかない。

この事態を避けるためには、フロントは迅速に行動する必要がある。アーセナルのビジョンを常に思い描き続けてきた偉大な監督が去り、アーセナルは未来が全く見えずにいる。監督が居なくともアーセナルが前に進めるように今のような運営体制を整えたはずなのだから、クラブの道筋を示すのはサンジェイやエドゥの仕事だろう。

まずは監督決めがその第一歩で、ユングベリを任命するにせよ、外部から招聘するにせよ、素早く、そして正確な判断を下し、アーセナルを託すに値する人物を見つけ、彼に十分な準備期間と援助を与える必要がある。

恐らく今季のトップ4は絶望的なため、現実的にはプレミアリーグでELに影響を与えない程度の成績は保ちつつチーム作りを行い、ヨーロッパリーグ優勝で一発逆転を狙う、という形になるのだろう。

もしCL出場権獲得がかなわなければ(現時点では可能性は極めて低く思えるが)、夏、あるいは早ければこの冬にでも主力の流出は必至だ。既にラカゼットとオーバメヤンは現状に満足していないサインが見え始めている。

正直なところ、ある程度の流出はもう覚悟するべきだろう。オーバメヤンやラカゼットはCLレベルのクラブで十分に活躍できるレベルの選手であり、彼らがより上のレベルでのプレイを望むのは仕方がない。

したがって、フロントは難しい決断を強いられることになる。彼らに限らず、移籍を望む選手を留め、フリーで放出のリスクを冒してでもあと一シーズンでCL出場権を狙いに行くのか、あるいは諦めてある程度の移籍金と引き換えにスターたちを放出し、育成や将来有望な選手獲得のための資金に充てるのかだ。

個人的には優先順位をつけ、2,3人の移籍は容認しつつもチームにとって必要不可欠な人材は死力を尽くして留める、という覚悟が必要だと思う。

また、何より避けなくてはならないのは、アーセナルという長年に築いてきたブランドの棄損だ。これを最小限にとどめなくてはならない。そのためには、チームの不和や監督の軽視などはもってのほかで、厳格に対処しなくてはならないだろう。

今の時点でアーセナルがヨーロッパでもトップクラブの一員として見られることはもう望むべくもないが、現在は少し調子を落としているが、数シーズンの間にはCL出場権も獲得できそうな魅力的なサッカーを行う古豪、程度の評判を残せれば、選手も集まりやすく、逆襲の狼煙を上げるのも容易になるだろう。

一方で、評判や信頼というのは失うときは一瞬だ。今アーセナルのかじ取りを間違えれば、我々は恐らくチャンピオンズリーグやタイトル争いに非常に長いお別れを言うことになってしまうことも十分ありうる。

そうなれば、ファンも離れ、収益は減り、本当の意味での中位クラブに転落してしまうだろう。スタン・クロエンケがアーセナルの株式を取得して以降、単にアーセン・ベンゲルに全権を委任し、グリーンライトを出していればアーセナルというクラブの市場価値はプレミアリーグの人気高騰とも相まって、どんどん上がっていった。

だが今、アーセナルの経営は重大な岐路に立たされている。エメリの任命が失敗に終わった今、アーセナルにとって猶予はもうあまりない。クロエンケ家と彼らが任命するフロントは、初めて失敗の代償がとてつもなく大きくつくかもしれないという緊張感を持って仕事に臨まなくてはならないのだ。

アーセナルが復活を遂げるには、まず次期監督の任命を正しい時期に、正しく行う必要がある。一ファンとしてアーセナルの現状を憂いながらも、このクラブの今後を見届けていきたいと思う。

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