青天のダビド・ルイス: 徹底分析
アーセナルがCBのオプションとしてダビド・ルイスを獲得すると予想できた人は誰もいなかっただろう。 今回の状況は、彼が2016年にチェルシーに戻った時と非常によく似ている。チェルシーはついにクリバリを獲得できず、移籍市場が残り48時間となったところでルイスがスタンフォードブリッジに帰還したのだ。
ルイスは代理人のキア・ジューラブシャンが抱える多くのブラジル人スターの一人で、彼の果たした役割は非常に大きかった。チェルシーはあまり乗り気でなかったものの彼の顧客のパトも受け入れ、そのローンが残り一年となったところでルイスがやってきた。そして、逆にチェルシーにいたジューラブシャンの選手二人、ラミレスとオスカルは高値で中国に売却された。
コリンチャンス時代からジューラブシャンはエドゥと強い絆があり、この友情と、またサンジェイとのコネクションが、ルイスの移籍を可能にしたのだろう。他のオプションの可能性がほとんどなかったことを考えれば、アーセナルはプレミア経験が豊富なベテランDFを獲得したという意味では一定のロジックは見いだせる。
彼は32歳で、トップレベルでのキャリアは終わりに近づいている。アーセナルが27Mを18歳のCBに費やしたことを思えば、短期的な守備の補強は理に適っている。
とはいえ、ルイスは賛否両論ある選手で、彼は素晴らしい能力も備えているが、同時に大惨事にもなりうる。彼の長所が活かせるシステムでは、ルイスは試合を支配できる。実際のところ、2016年以降のチェルシーでは素晴らしい活躍を見せた。バックスリーの中心として、コンテ時代にはチームをリーグ優勝に導く活躍を見せたし、サッリが4バックを導入してからも、リュディガーあるいはクリステンセンの隣で良いプレイを見せた。
彼は明らかにサッリの下でプレイをするのを楽しんだようで、何度も監督への称賛を口にしている。サッリの哲学は、彼の驚異的なパスレンジといった長所を生かすことが出来たからだ。
ルイスは単にボールを前に進めるパスが上手いだけではなく、プレミアリーグで最もチャンスを作るのが上手い選手でもある。ルイスは11のビッグチャンスを昨季創出し、これはアーセナルのどの選手よりも多い。彼がCBということを考えるとこの数字は驚異的だ。ルイスのパス能力のおかげで、チェルシーはセスクやマティッチといったトランジション時のスピードに欠ける選手を起用しなくて済んだ。
確かにガナーズファンが彼の守備力を気にするのはわかるが、彼のパスはチームに新たな一面を加える。もしかすると、彼が居れば、中盤にグラニト・ジャカの代わりにより機動力のある選手を起用することすらできるかもしれない。
そしてDFとしても、正しいパートナーが居れば、彼は敵を圧倒することができる。彼とシウヴァのPSG・ブラジル代表でのコンビは世界で最も優れたペアだったといっても過言ではない。だが、2014年W杯でチアゴ・シウヴァが出場停止だった際に何が起こったかは皆さんご存知だろう。これ以降ルイスの代表でのキャリアも下降線をたどった。なぜならシウヴァが新監督のドゥンガと衝突し、かつルイスはシウヴァがいないと非常に粗いプレイを見せるようになってしまったからだ。
ルイスはその後2015年に代表に復帰したが、何度かの雑なプレイでその信頼を失った。特に2016年のウルグアイ戦でのスアレスへの対応は非常にまずく、その後監督の信頼を再び得ることはなかった。
このように雑なプレイを見せる選手だという評判は、彼のキャリアを通してついて回っている。2011年にギャリー・ネビルは彼を『10歳の子どもがTVゲームを操作しているかのようなプレイを見せる』と酷評した。
だが、代表戦でのプレイとは裏腹に、2013年にPSGに移籍して以降は、彼のプレイはクラブレベルでは比較的安定している。
その後、チアゴ・シウヴァと別れてチェルシーに復帰してからも、彼は3バック4バックを問わず、パートナーが誰であっても安定した活躍を残しているし、より成熟し、落ち着いて素晴らしいプレイが出来ることを示している。
だが、彼は一時コンテの構想を外れていたことがあった。確かにコンテとうまくいかない選手は何人かいたが、彼は、自分が満足していない際にそれを口に出すことを厭わない。これが、チェルシーが彼を直接のライバルであるアーセナルに売却することにした理由の一つかもしれない。
アーセナルの守備は混とんとしており、そこに落ち着きを取り戻せる選手が必要だ。問題は、ルイスがその選手になれるかということだが、全ては彼とソクラティスの相性次第だろう。
CBの相性というのは非常に大切で、恐らく彼ら二人がアーセナルの守備陣を今季支えることになる。それぞれ32,31歳という経験豊富なペアで、彼らがプレイしている間にホールディングやサリバといった選手の準備を整えるというプランだろう。
また、ルイスは明るくポジティブなキャラクターで、寛大さを持つ選手だといわれている。これらの気質は彼がキリスト教徒であることと関係があるという人もいる。彼はファンとの関係性も良いし、プライベートでチェルシー女子チームの応援に参加したりなどという一面も見せていた。
彼がアーセナルの守備の救世主になれるかはまだわからないが、短期的な補強として筋の通るものであることは確かだ。彼は複雑なキャリアを送ってきたが、性格はシンプルだ。彼はハッピーな時は良いプレイを見せ、不満がある時は悪いプレイを見せる。時間が経てば、彼がノースロンドンで幸せを見つけ出せるか明らかになるだろう。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません