MFへのコンバートの可能性も!?スカウトレポート: ユリエン・ティンバー
若手選手の発掘と育成に関して、アヤックスほどの実績を残しているクラブは欧州全体を見回してみてもほとんどいない。
ヨハン・クライフやマルコファンバステン、セードルフといったレジェンドたちがアカデミー出身であるだけでなく、アヤックスは1982年から約2000試合に渡って常にユース卒の選手を一人以上試合で起用する、という途方もない記録を保持している。
そして、ティンバーもまた当初こそフェイエノールトユースに在籍したものの、この例にもれず、アヤックスのユースアカデミーが輩出した名手の一人だ。
彼がトップチームで台頭したのは2020のことだったが、1年ごとにアヤックスでの彼の重要性は増した。彼を見出したテンハーグがマンチェスターユナイテッドへ移り、マンチェスターにティンバーも呼び寄せようとした際にはティンバーもアムステルダムを離れることとなるかと思われたが、結果的には不振に陥ったアヤックスの変革期を支えるようクラブに説得され、ユナイテッドは代わりにリサンドロ・マルティネスを獲得した。
Still here tho ❌❌❌ pic.twitter.com/CuHy54RO3R
— Jurrien Timber (@JurrienTimber) July 6, 2022
ティンバー自身は昨季はアヤックスの誰よりも試合に多く出場し、大きな輝きを放ったものの、結果的にアヤックスはタイトルをフェイエノールトに明け渡すだけではなく、CL出場権も失う、というシーズンとなった。
ティンバーの強み
パス
ティンバーの最大の強みはやはり彼がボール保持を全く苦にしないことだろう。リサンドロ・マルティネスの退団に伴って、彼はより伝統的なタイプのCBであるカルバン・バッシーの横でボールを前に進めるという役割を任せれた。
彼はスタッツ的には成功パス数、プログレッシブパス数、ファイナルサードへのパス数の全てで5大リーグ上位3%に入る数字を残している。
彼のパスは一発を狙うというよりも堅実な短中距離のものが多く、どちらかというと野心的なパスをタイミングと安全なパスをのタイミングをきちんと見分けるタイプだ。
ただし、ロングボールはゆったりとした弾道で、相手に獲って守備が容易なものが多い傾向にあるので、この点に関しては今後成長の余地はありそうだ。
ドリブル
確かにパスのスタッツも目立つのだが、やはりティンバーの一番の強みパスよりもむしろドリブルだ。182cmとCBとしては長身とは言えないが、逆にこれが機敏な動きを可能にしており、彼は体の動きやターンを駆使してプレスを容易に逃れることが出来る。
最初の5-10ヤードの加速は素晴らしく、かつそのスピードでボールを動かしても制御できる技術の高さを備えており、相手との距離勝ち赤いエリアでボールを受けてもそこを脱出し、スペースにドリブルで抜け出していくことが出来るのだ。
アヤックス時代は守備的MFのアルバレスと試合中にポジションチェンジを行うことが良くあり、中盤でのプレイも苦にしない。もしティンバーがアーセナルでサイドバックとしてプレイするのであれば、同じように中盤でプレイする姿も見られるだろう。
また、プログレッシブキャリーだけではなくシュート創出アクションの数字もトップレベルに高く、より前線での活躍も期待できることも見て取れる。
ティンバーの守備力
ティンバーでの攻撃面での貢献が多いからと言って、守備が不得意なわけではない。アヤックスはボールを支配することが多いが、彼は常に相手のストライカーに付きまとい、相手の脅威をそこでストップする役割を担っていた。
相手FWは常にティンバーのマークから逃れられるように全力をつくさなくては、なかなか自由になれない。
彼はスピードもあるため、広いスペースを守ることも出来、アグレッシブなプレイとファウルのラインを判断するのも上手い。
コンバートの可能性
アーセナルがずっとブライトンのカイセドを狙っていることを考えると、興味深いのはティンバーとカイセドの共通点だ。もしかすると、カイセドの半額で獲得できる代役としてティンバーに白羽の矢を立てたのだろうか?
2人ともアグレッシブな守備が持ち味で、フィジカル面に秀でている。どちらも様々なポジションがこなせるユーティリティ性を持っている。もちろん、現時点では中盤としてはカイセドの方がワンランク上だが、スタイル的にはカイセドとティンバーのプレイエリアはよく似ている。
Jurriën Timber carried the ball 5,038m upfield in 2022-23; more than any other Eredivisie player.
— Opta Analyst (@OptaAnalyst) June 26, 2023
Across the top 5 Euro leagues, only Pau Torres, Facundo Medina, Arthur Theate, Kevin Danso & Axel Disasi covered more distance with progressive ball carries from central defence. pic.twitter.com/YHL6RqCxwj
ティンバーの改善点
彼を見ていて多くのスカウトが気づいただろう彼の弱みが空中戦だ。スタイル的にも彼は典型的なCBタイプではないが、オランダリーグでも47%◇宇宙船で勝利できておらず、これは相手FWとより直接的にやりあう機会が増えるであろうプレミアリーグでは問題となるかもしれない。
ティンバーは地上での技術が高いにもかかわらず、体格だけではなく技術的な部分でも、ジャンプのタイミングなどもあまり良いとは言えない。
ただし、アーセナルの最終ラインには既に空中戦に強いCBが揃っており、起用ポジション次第ではこれはそこまで問題にはならないかもしれない。
また、もう一つの課題は、ティンバーは少し相手選手につり出されすぎる傾向にある点だ。彼は非常に低い位置まで相手FWについていくことが多く、これはエールディビジでは機能したかもしれないが、プレミアリーグでは彼が空けたスペースを他の選手につかれてしまう可能性が高い。
彼の積極性は失わずに、もう少し周囲に気を配ったプレイを心掛ける必要はありそうだ。同じことはドリブルにも言え、ボールを持ちすぎて失ってしまう、という場面は減らしたい。
まとめ
2022年にティンバーについて聞かれたテンハーグは『彼はアヤックスアカデミーが輩出した偉大なリーダーだよ。スキルやユーティリティ性だけでなく、素晴らしいプロフェッショナルで、キャプテンの器だ。』“と語った。
経験を積んだ若手、ユーティリティ性、メンタリティ、これはアルテタとエドゥの補強方針において何度も現れる共通のテーマだ。ハヴァーツやライス、ウーデゴールやラムズデールのように、既にトップリーグで経験を積みながらも、現監督のもと成長の余地を大きく残す選手。
ティンバーが来季どのポジションでプレイすることになるのか、まだわからないが、彼のような粘り強くボール奪取が行える選手は今のチームにはおらず、例えばベン・ホワイトの右サイドバックのポジションで、逆サイドのジンチェンコのように中に入るプレイも出来そうだ。
これによりアーセナルは右サイドからのドリブルによるボール前進という選択肢も得ることになるだろう。
オランダから来たタレントが、プレミアリーグで苦戦することが多いのは事実だが、アーセナルはきちんとリサーチを行ったうえでティンバー獲得に動いたように見える。活躍できる条件は揃っており、あとはティンバー本人次第だろう。
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コメント一覧
オランダがユースを総て433にすると聞いた時、(EUだから)仕方ないと思いつつ寂しさも感じた。浅はかだった。
少人数での対人を中心としたトレーニングメソッドは失われておらず、むしろフルコートでは常にミラーなので妥協、差別、誤魔化しの可能性は減った。
グーリットの適正ポジションは永遠の謎だが、テインバーはそうならない。
MFはティアニーなどにも…。