【戦術コラム】アーセナルを前に進めるジョルジーニョ
ファンは自分の応援するチームや選手たちに多くを求めるものだし、結果として自チームの選手がもたらすプラスの点ではなく、抱える欠点に注目してしまうことも多い。
ジョルジーニョがその非常に良い例だろう、
冬の移籍市場で中盤の選手を探すアーセナルが白羽の矢を立てたのがジョルジーニョだった。彼はスピードがなく、走力やフィジカルもなく、そしてパスレンジも最高とは言えない。
これこそが、アーセナルのジョルジーニョ獲得に際して多くのファンが注目した点だった。彼が得意なことではなく、苦手な事だったというわけだ。
だが、土曜日のアストン・ヴィラ戦でジョルジーニョは彼がチームにどのような価値をもたらせるのか、なぜアーセナルが獲得に動いたのかを示して見せた。
スタッツサイトのFBrefはプログレッシブパスを『ボールを10ヤード以上前進させる、あるいはボックス内へと侵入させるパス』と定義しているが、今季の90分のあたりのプログレッシブパス数を見るとアーセナルのチーム内ランキングはジンチェンコ、ホワイト、に次いでアーセナルの中盤の心臓であるトーマス・パーティはチーム3位、そこにウーデゴールが続く、という形となっている。
彼は今季ノッティンガム・フォレスト戦、ブレントフォード戦、ウェストハム戦の3試合でそれぞれ14本のプログレッシブパスを記録しており、これが彼の一試合当たりの最大の数字だ。
だが、ジョルジーニョはアーセナルでの先発2試合目にしてアストンヴィラ戦で15本ものプログレッシブパスを記録、パーティの今季最高記録を既に更新してしまった。しかも、このうちの3本はボックス内へのパスだ。
ジョルジーニョが得意ではないプレイは一旦脇に置き、彼の長所に目を向けてみれば、彼のパス能力がアーセナルにとって非常に重要な役割を果たしてくれる可能性があるのは明らかだ。
最近アーセナルは深く引いた守備陣を崩すのに苦戦しており、これこそがジョルジーニョが獲得された理由だろう。アストンヴィラ戦でもアーセナルが後半試合を支配するのにおいて、右サイドバックのオーバーラップと合わせてジョルジーニョのプレイは重要だった。
守備的なシステムで臨んできた相手を崩すにあたって、今季のアーセナルの鍵となっているのは前線の6人目の選手の存在だ。
通常は5人で構成される前線にプラスアルファで加わるこの役割の選手は右サイドを上がってくるベン・ホワイトであることが多い。これにより、サカは2人のDFを相手にする必要がなくなり、中に進んでいくか、ボールを受けるという選択肢を与えることが出来る。
但し、これは最近の試合ではあまり見られておらず、アーセナルのウイングはタッチライン際でボールを受けて孤立気味であることが多い。
ヴィラ戦ではアーセナルは再び上の6人目のアタッカーとしてホワイトを用いる形を見せ、この時サカに向けてボールを供給したのがジョルジーニョだった。結果的にはつながらなかったが、前半の下の場面がその例だ。
ヴィラの左サイドバック、モレノがホワイトに注意を向けたことで空いたスペースにサカは走り込み、より相手CBとゴールに近い位置でボールを受けられていた。
後半アーセナルは勢いを増し、似たような場面からエンケティアがポストを叩くシーンが生まれた。
そして、またしてもホワイトが高い位置をとった所からアーセナルの2度目の同点弾も生まれた。ジョルジーニョがサカに送ったパスからコーナーの獲得に成功したのだ。
また、このようなプレイはホワイトに代えて冨安が登場して以降も、継続して行われ、同じようにオーバーラップでオプションとなっていた。
実際に冨安は交代出場から数分後にピッチを駆け上がり、サカにジョルジーニョからのパスを受けるスペースを提供した。
その後もオーバーラップした冨安の存在に相手左サイドバックのディーニュは悩まされた。この場面では得点は決まらなかったが、アーセナルが安定して右サイドからボールを進められていたのはポジティブ何点であり、特にそれに新加入のジョルジーニョが大きな役割を果たしたというのは歓迎すべき点だろう。
この試合で彼は5度のシュート創出アクションを統べてパスから記録した。
ジョルジーニョはこれまでのプレースタイル的に安全なショートパスをずっと繋ぎ続ける、という印象が強いが、実際には彼はよりボールを前に進め、チャンスを生み出すパスも得意とする名手だ。
ジョルジーニョのプレミアリーグデビューシーズンとなった18/19シーズンとその翌年、2年連続で彼はプレミアリーグで誰よりも多く、ファイナルサードへのパスを通している。
そのパス能力はヴィラ戦でも明らかであり、彼のおかげで相手に継続してプレッシャーをかけ続けられたことで結果的に得点も生まれ、アーセナルは勝利を収めた。
より直接的にも、ジョルジーニョがシュートを打てるスペースが生まれたのは、彼が再三再四縦パスを狙っていたため、ヴィラの選手たちが押し下げられたことと無関係ではないだろう。
この3年間でジョルジーニョは22本しかミドルシュートを打っておらず、かつアストンヴィラ戦のオウンゴールを別にすれば、未だかつてミドルシュートから得点したことはないので、今後彼が中長距離のシュートから得点を量産することは期待できないだろうが、この試合での総合的なパフォーマンスは素晴らしいものだった。
ジョルジーニョは選手の限界だけでなく、長所にも目を向けるべきであるということを、ファンに思い出させてくれる存在になりそうだ。
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