【アーセナル新加入】ヤクブ・キヴィオルのプレースタイルと彼がチームにもたらすもの
アーセナルはついこの間レアンドロ・トロサールの獲得を発表したばかりだが、立て続けにポーランド代表のヤクブ・キヴィオルのセリエAスペツィアからの獲得を発表した。
移籍金は20m£を超えると報じられているが、彼は一体どのような選手で、アーセナルに何をもたらしてくれるのだろうか。
スターダムを駆け上がるキヴィオル
サッカー選手の成長やキャリアのステップアップは何がきっかけで、どの時期に起こるかわからないというのはサッカーの歴史が証明している。
オリビエ・ジルーは22歳までフランス3部でプレイしていたが、今やフランス代表で最も得点を決めたストライカーだし、ボージャン・クルキッチは10代の頃ユース年代のありとあらゆる記録を更新したが、その後の10年を英二部、カナダ、日本で過ごすこととなった。
似たようなことがヤクブ・キヴィオルにも言えるだろう。彼はアンデルレヒトのユース出身だが、そこではトップチームに昇格できず、2つのスロバキアのクラブで3年をすごしたのち、セリエAの下位でプレイするスペツィアの移籍を2021年に勝ち取ったと思った途端に気付けば、プレミアリーグ首位のアーセナルでプレイすることになっているのだから。
もちろん彼は一夜にして大成長を遂げたわけではなく、スペツィアのスカウティング力は賞賛されるべきだろう。キヴィオルの所属クラブの財政危機を受けて2m€でキヴィオルを獲得すると、スペツィアは彼をポーランド代表としてW杯に呼ばれるほどの選手へと育て上げた。
彼はポーランドの4試合すべてで先発し、ACミランやユベントス、ドルトムントと言ったクラブが彼に興味を示すこととなった。
Jakub Kiwior. 6’2 CB, rarely deployed as a DM.
Arsenal fans, thoughts? pic.twitter.com/Xjdt4edsNw
— H (@ClockEndH) January 20, 2023
キヴィオルのパス
彼のプレイを見て真っ先に目立つのは、キヴィオルがビルドアップのファーストフェイズで責任を負うことを全くいとわないという点だ。こういった役割はどちらかというと落ち着いたベテランに任せられることの方が多いが、当時の監督であったチアゴ・モッタはキヴィオルを後ろでのボール回しの中心に指名した。
彼は3バックの一番後ろに下がってボールを受けることもあれば、中盤でフリーマンとしてボールを受けることもあるが、常にGKや味方のCBがパスを出そうと探す存在で、そこからターンで形を作り、斜めのパスを精確に届けることが出来る。
もちろんプレイするチームの違いもあるため、純粋にパスのスタッツを見ると、サリバとガブリエルの方が優れてはいるが、スペツィアの選手で言えば、キヴィオルは今季パス数とパス成功率でチーム2位と1位の数字を記録している。
また、特に目立つのは彼の斜めのロングパスだが、他にも中盤に届ける鋭いパスや、サイドへのロブパスなど、パスのバリエーションは豊富だ。
ボール前進
また、キヴィオルを見たスカウトは彼のパスに注目するだろうが、ドリブルでのボール前進の完成度も高い。だからこそ、時折左サイドバックや中盤というポジションでも起用されているのだろう。
上背はあるが優美な動きでミドルサードを相手をかわして進んでいく姿が見られる。長身の体をコントロールするやり方は少しネマニャ・マティッチを彷彿とさせるところがあり、体格の割に動きは機敏でシャープだ。
これにより彼はスムーズに相手のプレイを回避することが出来る。
DFとしては彼のドリブル数は多く、キヴィオルのドリブルはスペツィアがパスによるボール前進に窮した時の手段として機能している。
守備面
キヴィオルは今季ここまでのセリエAで第3位のシュートブロック数を記録しており、かつインターセプト数はチーム1位だ。
身長がありつつもスペースをカバーできるだけのスピードがある、というスタイルは自由自在に動き回るジンチェンコの後ろをカバーする現在のガブリエルの控えとしては適していると言えるだろう。
ただし、若いDFにはありがちなことではあるが、キヴィオルには改善点もある。スペツィアはセリエA会に沈むチームであり、ギリギリでの守備を強いられる機会も多い。そのため、キヴィオルもゴール前でのスライディングやタックル、ブロックを見せるが、彼は相手をゴールから離れた方向に誘導する代わりに少々簡単に飛び込んでいきすぎてしまう傾向がある。
このようなイチかバチか的な傾向はアルテタがDFに求めるものではないだろう。もちろん、これは単に守備機会が多いことに由来するのかもしれず、アーセナルでは改善される可能性はあるが。
まとめ
最近のアーセナルの補強はどの選手を獲得するか、というよりも特定の性質を持った選手獲得へとシフトしつつある。
チームのシステムは明確であり、それぞれの役割にあった選手が求められている。キヴィオルも同様に、技術の高さと孤立した状態でも守備を行えるフィジカル、左足でのボール配給、と彼が獲得された理由とその素質は明らかだ。
ここからはキヴィオルがそのポテンシャルを実現できるか、というのが重要になるが、まだ彼は欧州5大リーグで18か月しかプレイ経験がなく、スペツィアでも43試合出場があるのみだという点は留意する必要があるだろう。
だが、今すぐ即戦力として活躍しなければならない、というプレッシャーはないので、今の環境であればしっかりと適応できるはずだ。
もちろん将来の才能への投資に近道はないが、今回アーセナルのスカウトたちは有望な選手を発掘したように見える。キヴィオルの代理人によると、キヴィオル本人もアルテタと話し、彼のプロジェクトに"魅了され"、これが移籍の決め手となったそうだ。
キヴィオル本人も含め、アルテタが思い描くプロセスを信頼しようではないか。
source(当該サイトの許可を得て翻訳しています):
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません