【戦術分析】盲点を突くグラニト・ジャカ
数年前、あるいはほんの1年前の時点ですら、アーセナルの対戦相手がアーセナルの攻撃を止めるためにはボックス内に飛び込んでくるグラニト・ジャカの対策を講じなくてはならない日が来るとは想像すらできなかった。
それどころか、ジャカがアーセナルでプレミアリーグ200試合出場を達成すると思うか?と問われれば、自信をもって答えることも出来なかっただろう。
だが、ジャカは先日のフォレスト戦でプレミアリーグ200試合目を記録、今季は3ゴール3アシストの活躍を見せている。
彼はアーセナルでの新たな役割を非常に上手くこなしているが、今後注目なのは、対戦相手がよりジャカの役割に注意を払い、対策を行ってきた際にこの好調を維持できるか、という点だ。
以前のアーセナルの攻撃を予想するのは簡単だった。ジャカが上がることはなかったし、ウイングが中に入り、左サイドバックがオーバーラップする、という形が非常に多かったからだ。
だが、最近のアーセナルはより流動的で予測が難しい攻撃を見せている。まだ今季も前半戦だが、既にジャカはボックス内で43タッチを記録しており、これは過去2シーズンの合計(42)を上回っている。
そして、アーセナル対ノッティンガム・フォレストの試合でフォレストは、は大きな脅威となりうるジャカに対してMFのイェイツをマンマーク気味にぶつける、という対策を講じた。
通常4-5-1でよりボールを持たれることが予想される相手に対応する場合は選手間のスペースを小さく保つのが基本だ。だが、この試合でイェイツは縦にも横にもかなりジャカについてきており、このおかげでジャカは彼をつり出して、チームメイトがプレイするスペースを生むことが出来ていた。
また、ジャカが前に居た際には彼がイェイツを止めていたおかげでジェズスが前を向いてボールを受けられる場面が生まれたし、アウォニイはトーマス・パーティの相手をしなくてはならなかったため、守備陣がボールを持つことは容易だった。
もしフォレストにプレスをかけるつもりがあるのであれば、フォーメーションを変更する必要があったはずだ。
ジャカの高いポジショニングにより、アーセナルはフォレストを縦に引き延ばすことが出来ていた。
もちろん、とはいえそこからアーセナルはボールを前に進めるだけでなくチャンスを作る必要もあったわけだが、ここでもジャカの動きが鍵となった。
ジャカは何度かタッチライン際の大外まで流れていくような動きを見せ、イェイツを引き付けることで、マルティネッリやジェズスが活用できるスペースを生み出した。
この試合ではガブリエルが5本ものプログレッシブパスを中央のジェズスに通していたが、ジェズスが下がり、そこにマルティネッリが走るという形も見られた。
ノッティンガム・フォレストはコンパクトに対応していた一方で、アーセナルはジャカとウーデゴールがサイドに張り出すことで数的優位を作れており、この対応にフォレストは迷ってしまうこととなった。彼らを追ってサイドに出て行けばコンパクトさは失われ、中央にジェズスが活用できるスペースが生まれてしまう。
しかし、放っておけば、サイドにボールが出た際に数的不利に陥ってしまう。
ジャカは常にイェイツの外側に立つような位置でプレイしており、結局ノッティンガム・フォレストはこれに対する解決策を試合中には見つけ出すことが出来なかった。
加えて、彼らは今季のアーセナルの攻撃の有効な武器の一つであるジャカのファイナルサードでの走り込みも何度も許してしまっていた。
ジャカは大外にまず位置することでイェイツの注意を一旦自身から話させ、そこから彼の視野の外に走り込む、というプレイを何度も繰り返していた。
前半の時点で何度もジャカは良いランを見せていたが、後半ついに同じような走り込みからアーセナルの2点目が生まれた。
ノッティンガム・フォレストは明らかにグラニト・ジャカ対策を用意してきていたが、これはうまくいかなかったのだ。確かに、短距離のスピードはジャカはそこまでないが、動き出しは非常にシャープだし、今季のプレミアリーグでボックス内のボールタッチ数ランキングでジャカは上位25人に入っており、これはソンフンミンやデブライネよりも多い。
彼は走り込みが上手いし、左サイドで相手を引き付けてくれるマルティネッリの存在を非常に上手く活用する。
もちろん、相手の中盤の外にポジションを取り、そこから中に走り込むというのは特に新しい戦術と言うわけではないが、それでも対戦相手が対策を講じてきたにもかかわらず、ジャカが上手くその対策を破ることに成功したのを観るのは良いものだ。
昨季から今の攻撃の形は始まっているが、今季ついに、チームはまるで無意識のうちに行っているかのように流動的に攻撃を繰り出せるようになっている。今後もこれを継続できれば、今季のアーセナルが大きな成功を収めることは間違いないだろう。
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