【アーセナル新加入】スカウトレポート: ファビオ・ビエイラ
アーセナルのファビオ・ビエイラ獲得が正式に発表された。
Bem-vindo, Fabio ❤️
— Arsenal (@Arsenal) June 21, 2022
ポルトガルリーグのいわゆるビッグスリーと言われるクラブは皆素晴らしいタレントを輩出しているが、どちらかというとベンフィカとスポルティングはアカデミー育ちの選手が多い一方で、ポルトは安く買って高く売る、という育成の上手さが特徴だと言われている。
これまでに彼らはファルカオ、ハメス・ロドリゲス、ミリトンといった選手たちを安く買い、その後高額の移籍金で売ることで利益を上げてきた。この10年間で彼らが移籍金で挙げた利益は565m€とベンフィカの690m€に次いで欧州全クラブ中2位の数字となっている。
ただし、ポルトは青田買いが全てのクラブというわけではなく、ルーベン・ネヴェスやアンドレ・シウヴァはユースアカデミーの出身だ。
だが、特に2000年以降生まれのポルトユースの若手は高い評価を受けており、コンセイソン率いるポルトが国内ダブルを達成するにあたって、GKのコスタ、右サイドバックのジョアン・マリオ、MFのヴィティーニャ、そしてもちろんアーセナル加入が決まったファビオ・ビエイラらが原動力となった。
ビエイラにとっての昨シーズンは二つの期間に分けることが出来る。夏にU21ユーロでMVPに選ばれたにもかかわらず、シーズン前半はあまり出場機会がなかった。
簡単に言えば、コンセイソンの4-4-2のシステムではビエイラの居場所がなかったのだ。彼は典型的なサイドプレイヤーとも、中盤の選手ともどちらであるともいえなかった。
ポルトの攻撃の中心はルイス・ディアスだったが、彼が1月にリバプールへと去ったことで、監督はより柔軟に、ビエイラをトップ下やセカンドストライカーとして、時には右ウイングとしても起用することになった。
そして、ビエイラはすごいスピードで監督からの信頼にこたえ、66分当たり1ゴール/アシストというすさまじい数字を残した。
ユーティリティ性があり、複数ポジションをこなすことが出来る選手というのを最近アーセナルはかなり意識して獲得に動いているようで、確かにビエイラはこの条件に当てはまっているが、ピッチにおいて何より目立つのは彼のパス能力だろう。
昨季ビエイラはリーグ2位のアシスト数を記録(1239分しかプレイしていないにもかかわらずだ)、90分当たりのキーパス数は2.3とリーグ8位だった。
オープンプレイからのアシストに限ればビエイラは90分当たりの数字はリーグ1位だったし、90分当たりのスルーパスの本数はリオネル・メッシに次いで欧州中でも2番目に多かった。
彼はまるで熟練のゴルファーのように、チップで浮かせたり、長い距離を飛ばしたり、ハードな短いパスを出したりと、ボールを使ってありとあらゆることが出来る。
また、ビエイラの獲得は少しアーセン・ベンゲル時代のノスタルジーを感じさせるものがある。アーセナルで彼の前にプレイした"ヴィエラ"とは対照的だが、ファビオ・ビエイラは体格は小さいが、技術に溢れ、ボールを持ちチームメイトと連携するのを好むようなMFだ。
彼はヒールパスをはじめとするトリッキーなパスを多用するし、ウーデゴールのように右のハーフスペースで、相手のサイドバックとCBの間に完璧なスルーパスを通すことが得意だ。彼のスルーパスに、マルティネッリやスミスロウといった選手が走り込むところを想像すると非常にエキサイティングだ。
また、ビエイラは左利きの選手には少し珍しいが、逆足の精度も高い。昨季は3ゴール3アシストが右足で挙げたものだった。
さらに、ビエイラはパスが上手いだけではなく、ボールを運ぶのも得意で、プログレッシブキャリー回数もリーグトップレベルだった。だからこそ、彼はマンチェスター・シティのベルナルド・シウバと比較されるのだろう。
170cmという身長を考えれば驚くべきことではないが、ビエイラはフィジカルに優れた選手とは言えず、ビエイラが加入しても、アーセナルの中盤はより力強くなることはないだろう。
だが、彼のスペースを見つける力、羽毛のようなファーストタッチ、知的な動きはボールを持った時に彼に時間を与えてくれるはずだ。
そして、彼はハードワークが出来ない選手というわけではない。昨季ポルトガルリーグでは90分当たり1.7のタックル数を記録しており、アーセナルの中盤の選手と記録すると、これを上回っていたのはトーマス・パーティだけだ。
ビエイラはデュエルに強いとはいえず、コンタクトに強くなるために、今後少し肉体改造は必要になるだろうが、プレスでは、彼はパスレーンを消し、相手をミスに追い込むのが上手い。
ただ、もちろんフィジカル面だけに関した話ではないが、ビエイラはキャリアを通してポルトガルリーグでしかプレイした経験がない選手なので、ある程度適応に時間はかかるだろう。
ポルトガルリーグは上位3クラブとその他のクラブの間にはかなりクオリティに差があり、この上位3クラブでプレイする選手たちが前からの激しいプレスに晒されることはあまりない。したがって、ゆっくりとターンし、周りを見てからパスする余裕がある、というわけだ。
だが、このような余裕はプレミアリーグでは与えられないだろう。アーセナルではロコンガが適応の難しさを既に示している(もちろん、かといって、ロコンガが今後プレミアリーグに適応できないだろう、と決めつけるのはまだ早すぎるが)
『既にトップ下にはウーデゴールが居る』『サカはどうなるのだ?』という声も聞かれるが、昨季アーセナルがキープレイヤーが不調だった際に、攻撃の最終局面で結果を出したり、低く構えた相手を崩す決定打となれる選手が不足していたのは明らかだった。
単純に、良い選手を戦力に加えれば、チームの戦力はより高まるということだ。高い技術を持った選手が一人スカッドに増えれば、相手のディープブロックを攻略したり、ボールをキープして相手のプレッシャーを軽減するといった戦略をとる際のやり方にバリエーションが生まれる。
もちろん、ビエイラ自身は、アーセナル在籍中のアタッカーのサポートをするだけではなく、彼らからポジションを奪う気でもいるだろう。
アーセナルとアルテタはビエイラの中にポテンシャルを見出し、獲得に至ったわけだが、報道によると、彼のことを1年間以上スカウティングしていたという。
ビエイラは創造性と高い技術を併せ持った選手であり、年齢や給与面から見ても今のアーセナルのプロジェクトと合致する、エキサイティングなタレントだ。
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