チェルシーとアブラモビッチへの経済制裁と、プレミアリーグクラブのオーナーシップ見直しの必要性について

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昨日、英国政府はチェルシーのオーナーであるロマン・アブラモビッチに経済制裁を科すことを発表した。政府の発表によると、その理由は以下の通りだ。

ロマン・アブラモビッチはロシアの現政権と友好的なオリガルヒ(等旧ソ連諸国の資本主義化(主に国有企業の民営化)の過程で形成された政治的影響力を有する新興財閥)であり、ウクライナの独立と領域、主権を脅かす存在であるウラジーミル・プーチンと何十年間にわたって親しい関係である。

この措置が、チェルシーに与える影響は深刻なものだ。

経済制裁の影響の詳細についてはこちらのガーディアンの記事で詳細に解説されている。

チェルシーは今日に至るまでずっと、ウクライナで産婦人科を爆撃したロシア軍に戦車製造のための鉄鋼を提供し続けてきた企業のオーナーである人物によって保有されてきたわけだが、それに関して、こちらのデイビッド・コンによる記事は非常に興味深かった。

サッカー界はアブラモビッチがどのような人物なのかを知りながらも、それからずっと目を背けてきたのだ。弁解の余地はない・

イングランドのサッカー関係者はアブラモビッチ、そして彼がもたらす資金を歓迎した。なぜなら、それによりエンターテイメントがより大規模に、華やかでグラマラスになると考えたからだろう。

先日も書いたが、アブラモビッチの資金はイングランドどころか、ヨーロッパのサッカーを変えてしまった。

“変えた"という言葉は生ぬるいくらいだ。

確かに裕福なクラブオーナーの前例がチェルシー以前になかったわけではなく、人々はブラックバーンのジャック・ウォーカーを例として挙げるが、大きな違いは、彼は心の底からのブラックバーンファンであり、自分の財産を用いてクラブに成功をもたらそうとしたという点だ。

一方で、アブラモビッチは最初からチェルシーファンだったわけではない。彼はチェルシー買収前にトッテナムを買収しようとしていたし、彼とチェルシーの好意的な関係は、スポーツウォッシングに裏打ちされ、彼に良い評判をもたらすことから生じたものであったはずだ。

だが、プレミアリーグ、スカイスポーツ、選手たち、そして代理人は皆アブラモビッチの金をチャンスだととらえた。より大きなプロダクト、引き上げられる料金や給与。

確かに、謎の人物が突如現れ、札束を用いて世界中の有名選手を買い始めれば、そのコンテンツは視聴者やスポンサーにとって更に魅力的になることだろう。

しかも、この影響はチェルシーだけに留まらず、他のクラブもより資金を使うようになった。例えば、移籍市場の相場が引き上げられてしまえば、他のプレイヤーがその影響から逃れるのは無理だ。

もし〇〇という選手が以前までであれば25m£の移籍金で週給10万£でけいやyくしていたとしても、もしチェルシーがやってきて、50m£、そして週給20万£支払おう、と言えばそれは他のクラブや選手にも影響を与える。

クラブは選手の市場価値をより高く見積もり、より高額の移籍金を要求するようになるし、選手と代理人はそれと比較して、彼に〇〇£の価値があるのであれば、自分だって同じだ、といえるようになる。

これが19年続いたこと、かつチェルシーの後に続く兆万長者オーナーの出現を考えれば、今のサッカー界の置かれた状況も驚きではない。

そして、もう一つアブラモビッチによるチェルシー買収がサッカー界に与えた有害な影響に、彼のようなクラブ経営のスタイルがサッカー界において目指すべき姿だという印象を与えてしまったことがある。

トップレベルで戦うためには、クラブのオーナーはオリガルヒあるいは国家がバックについていなくてはならず、市場のレートをはるかに上回る資金を投入し、FFPのような規制を破り、そして世界でもベストの弁護士を雇ってそれも問題ないことにしてしまう必要がある、ということになってしまった。

この文脈で見れば、ニューカッスルファンが実質サウジアラビア国営ファンドが彼らのオーナとなったことを喜んだのは理解できる。だが、そのためにはイエメンで起きている戦争や飢饉、ジャーナリストの惨殺、人権侵害などから目を逸らす必要がある。

ファンはこれらを気にかける必要などないだろうか?あるいは。

現状英国とサウジアラビアは友好的な関係にある。だが、いつの日かそれも変わるかもしれない。もしそうなった時に経済制裁がニューカッスルには課され、今のチェルシーと同じような事態に陥るかもしれない。万一そうなっても、そんなことは知らなかったのだ、ということはできないだろう。

先ほどのコンの記事、いかにサッカー界が不都合な現実から目を背けてきたかという話に戻るが、イングランドのサッカー関係者のうちで、クラブのオーナーシップのパンドラの箱を開けるという決断を一体誰が下し、かつそれにより個人集団レベルで利益を得たのは誰なのか、などといった点を真剣に検証する必要があるだろう。

プレミアリーグ、放送会社、指示か、首相、そしてUEFAやFIFAの関係者だ。これがサッカーに与えた影響は甚大で、そしてそれは良い方向へのものではなかった。

もちろんこれを歓迎していたという意味ではファンも同様なのだが、とはいえ、サッカーファンに何かできる事があっただろうか?

チェルシーファンはこの買収を喜んでいた一方で、我々はチェルシーを嫌悪していた。なぜならチェルシーファン含め我々は皆この資金がどのようにもたらされ、どこから来たものかわかっていたからだ。まるで、インチキをしているようなものだという自覚があったはずだ。

とはいえ、ファンの力でこれを止めることが出来たとも思えない。

今回の騒動ではあまり触れられていないが、アブラモビッチのような人物は訴訟などに対して非常にアグレッシブだ。詳細を話すこと反しないが、私も彼の弁護士から警告を受けたことがあるし、同じように、ウズマノフがアーセナルを買収するのでは、という話が出た際には彼のチームも彼が言及される報道に目を光らせており、いつでも訂正や削除を要求していた。

このような状況下で、アブラモビッチやウズマノフのような人物に対して、一般の人間が反対の声を上げるのはほぼ不可能だった。そして、より大規模な団体が反対を表明することもなかったので、一般のファンの声はシャットダウンされた。

今後のサッカー界がどうなるのかは誰にもわからないだろう。まだドラマチックな展開は続きそうだ。

チェルシーファンがアブラモビッチのことをヒーローのようにその名を歌うのは勝手だが、現実を見つめる必要がある。ウクライナ侵攻により、200万人が既に難民となり、何千もの無垢な人々が亡くなり、町は破壊されたのだ。核施設への攻撃も行われている。

このような状況で、チェルシーのスポンサーがどうなるかや、アウェイ戦にバスを使わなくてはならないことなどを、誰が気にかけてくれるというのだ?

今回の件で、そもそもサッカークラブのオーナーとなることを許されるべき人物の基準について再考する議論が行われるべきだ。将来の話に限らず、現在のオーナーたちも含めたてだ。現時点で既にオーナとしての資格を喪失すべきであるような事業に関連がある人々もいる。

確かに、今更そんなことをしても泥棒に入られてから戸締りに気を付けるようなものなのだが、この件は単にチェルシーとアブラモビッチだけの問題としてはならない。

そろそろサッカー界は目を逸らすのをやめ、自分たちの不始末にきちんと向かい合うべきだ。

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Posted by gern3137