アーセナルの今季を四分割して振り返る① スローなビルドアップが特徴のシーズン序盤
今季のアーセナルとアルテタにとって、長期的な将来と短期的な成績のバランスをとるのが課題になるだろうことは常にわかっていた。
この数年間でアーセナルはこの優先順位をぼやけさせてしまう、という罠にはまってしまった。将来に向けて若手の育成に舵を切るべきか?それとももっと多く実績あるベテランを起用すべきか?
最近のアーセナルは二兎を追う者は一兎をも得ず、といった形で両方を追求しようとした結果失敗に終わっている。
アーセナルの短期的な課題は明らかで、全てにおいて改善の余地がある。攻撃も守備もだ。長期的な目標は、何年かに一度ではなく、継続してトップ4入りを果たせるようなチームを作ることのはずだが、かといって、直近の成績が悪ければ将来にも悪影響を与えるし、逆に将来に対する方針がなければ短期的な改善も難しい。
だからこそ、アーセナルは2017年から下降を続けているわけだ。まるで自身の尻尾を追いかけて回る犬のように。
クラブの将来的な利益のために短期的な解決策を追い求め、長期的なスパンでのプランがないので短期的な成功も訪れない。
この傾向はミケル・アルテタの1年目にも見て取れた。
アルテタに好意的な見方をすれば、プレシーズンがなかった今季は彼が監督業について、チームに何を望むか、そして選手たちについて学ぶための1シーズンだったという事も出来なくはないが、一方で、アルテタの学習プロセスはそこまで迅速とはいえず、明らかに結果が出ていないアイディアに頼り、あとは幸運を祈り続けるという場面も散見された。
もしかすると、現実的に考えて、これがアルテタに出来る最善だったのかもしれない。だが、一切問題、アーセナルにとって今季は失われたシーズンのように感じられる。
開幕直後の好調後は破滅的なシーズン前半になり、その後持ち直して見込みがありそうなシーズン中盤を迎えたが、怪我の影響もあり、ペースは落ちた。
結果として、現時点で我々はアルテタのもとアーセナルが改善されたのか、はたまた悪化しているのか、あるいはアルテタがそもそもアーセナルで何を目指しているのかよくわからない、という状況にいる。
本来シーズンを分解して分析するのは簡単ではないが、今期に関して言えば、明確に4つのフェイズに分かれたと言える。不調→最悪→改善→怪我による失速(EL敗退)・そして最終盤の好調という流れだ。
悪くないスタート
アーセナルはシーズン再序盤は昨季のFA杯で機能した流れをそのまま引き継いでいた。3バックを採用、その一角のティアニーは前に上がり、中盤は2枚、オーバメヤンは左から中に入っていく、という形だ。
この時期のアーセナルの特徴としては、ボール保持時に非常にスローだったという点がある。11月半ばの時点で、アスレチックの記事が指摘していた通り、アーセナルはプレミアリーグで最もゆっくりボールを前に運ぶチームだった。
さらに、この時点で、90分当たりのファイナルサードにたどり着くポゼッション数がアーセナルより少なかったのはニューカッスルの1チームのみだった。
つまり、アーセナルはボールを保持してもどこにもたどり着けないケースが多く、シュートとチャンスの数が非常に少なかったという事だ。
したがって、試合中に良いチャンスは1度程度しか訪れず、アーセナルの試合結果はこれを決めきれるかどうかに左右されることとなった。
この頃のアーセナルのプレスはボールを奪う事よりも相手にボールを中盤に運ばせないことを目的としていた。もちろんこれ自体が問題というわけではなく、プレスに失敗して守備陣が晒されるという場面は少ないし、このアプローチはオールドトラフォードで上手くいった。
ラカゼットがCBをマークするのではなく、CMFのマクトミネイについていくというやり方に苦戦し、マンチェスターユナイテッドはボールを前線に進めることが出来なかった。
しかし、後ろからのビルドアップに自信を持っているチームや、一発で後ろから前線につなぐことを志向するようなチームはアーセナルを攻略することが出来た。
アーセナルは一度ミドルブロックを突破されてしまうと、ボール奪取を試みたり、中盤から前線に運ばれないようにするよりも、後ろに引いてボックスを守ろうとする傾向があった。
とはいえ、シーズン序盤のアーセナルはスローであまり面白くはないサッカーを展開していたとはいえ、ある程度勝ち点は拾えていた。
ただし、これは内容的に僅差の試合がアーセナル側に転んでくれたのが大きな要因だ。開幕戦のフラム相手の勝利を除けば、この時期のアーセナルは試合の数少ない、あるいは唯一のチャンスを決めることで勝利を収めることなどが目立っており、相手を圧倒できていたわけではなかった。
シーズン最初の7試合のうち4試合で、アーセナルのシュート数は6本以下となっていたが、その4試合で3勝1敗という結果だった。
同時にこの7試合のうち4試合でアーセナルは相手のシュートを10本以下に抑えていた。この時期のガナーズは塩試合製造機となっていたが、この後、状況は悪化する。
(②の7戦無敗の時期、に続きます)
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