【戦術コラム】アーセナルvsマンチェスター・ユナイテッド振り返り 後編
(この記事は前編の続きとなっています)
ベジェリンの素晴らしさ
ウィリアンが先週『ポジショナルプレーではピッチ上で動き回る自由がないというわけではない。動く自由はあるが、ポジションと監督の要求、支持、そして何がチームのためになるかをリスペクトしなくてはならないというだけだ。』
オールドトラフォードでベジェリンがこれをまさに体現しており、攻撃面で相手に最も脅威をもたらしたが、これは自身のシステム内での役割を理解したうえでのことだった。
ベジェリンは彼の走りでチームに非常に良い意味での変化をもたらし、オーバーラップは相手につかまらず、ユナイテッドがダイヤモンド型の布陣でベジェリンをマークするウイングが居ないのを利用してショー相手に数的優位を作り出した。
これらのオーバーラップからオーバメヤンへのニアミスや、オーバメヤンがラカゼットにパスを出した惜しい場面が生まれた。
これらはスタッツ上はシュートに繋がっていないのでチャンスとはカウントされないかもしれないが、2つのビッグチャンスまであと数cmという所にまで迫った。
サカのヘディングシュートもベジェリンのクロスからだった。
特に自身が中に入った際のベジェリンの戦術理解力は素晴らしく、自身が中に入る際にはウィリアンに横幅を保つために外に出るよう指示を出した。ここから彼はショーに寄っていく位置を取ることも出来るし、少し下がってライン間でボールを受けて仕掛けることも出来る。
このようなポジショニングはレスター戦では見られなかったもので、オーバメヤンが右に居た際にはベジェリンは常に外からのオーバーラップを仕掛けていた。だが、今回の試合では上のような場面でショーはウィリアンにつくべきか、ベジェリンにつくべきかで頭を悩ませることとなった。
アーセナルの"フロント5″はレスター戦では単調で、レスターの守備というよりもアーセナルの選手たちが動きと創造性を欠いていたことでお和えられてしまった。
ベジェリンとセバージョスが右サイドで混雑し、誰もライン間で受けるオプションを提供しなかったのだ。
だが、ベジェリンがより中に少し下がった位置に落ちた際には、ルイスのピンポイントロングパス一辺倒となってしまっていたアーセナルの非常に有効な解決策となった。
このような中央のスペースでのプレイはベジェリンに合っており、彼が中にはいるという選択を下せるというのは彼のシステムの理解度の高さを示している。もしかすると、グアルディオラ在籍時のバルセロナで時間を過ごしたことがアルテタが求めるものを理解するうえで良い影響を与えているのかもしれない。
もちろん中でのプレイだけではなく、PKを獲得した中から外へのランも見られた。これはベジェリンがファイナルサードで効果的に活用するプレイで、ボールを受ける、あるいは敵をポジション外につり出すことが出来る。
アルテタはフロント5にピッチの横幅をカバーしてほしいと思っていることは間違いないが、ベジェリンなりの解釈と野心的な走り込みのおかげで、アーセナルの攻撃はファイナルサードでより予測するのが難しくなった。
そして、結果的にこれが試合の勝利へとつながったのだ。ついにアーセナルは勝ち点3をオールドトラフォードで手にすることが出来た。
この試合でスールシャールはマンチェスター・ユナイテッドを指揮して100試合目だったようだが、アルテタがアーセナルで100試合を率いるころにはより完成度の高いチームになっているだろうと信じるに足る十分な理由がある。
アルテタの次のステップはチャンスをより億作ることだが、今回の試合はアーセナルが正しい道筋にあることを示すサインとなったといえるだろう。
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