トーマス・パーティはアルテタにとって完璧な選手である

分析

移籍市場最終日に劇的な経緯でトーマス・パーティを獲得したアーセナルだが、彼はいったいどのような理由でアルテタに望まれ、かつクラブは50m€という大枚を叩くことに決めたのだろうか?

スペースをカバーする能力と1対1の強さ

ガーナ出身でアトレティコ・マドリードのユースアカデミーの卒業生であるトーマス・パーティは身長も180cm以上あり、ボールを前に進めるのに必要な技術を備え、中盤での戦いに負けないフィジカルを持っている。

シメオネの下アトレティコは4-4-1-1をよく採用し、相手のプレスに対応、カウンターで勝負を仕掛けていた。攻撃はサイドとストライカーを中心に行われる。

このせいで、自チームがボールを失った際にはパーティは広大なスペースをカバーすることが求められていたが、彼はこの役目をサウールと共に非常に良くこなした。

トーマスがその真価を発揮するのは一対一で相手と向かい合った時だ。一試合当たり2.8の平均タックル数を記録していることからわかるように、恵まれたフィジカルを活かし、アグレッシブにボールを奪い取ることができる。

また、彼はボールの落下地点と相手選手の位置取りを読むことの上手さでも知られており、90分当たり1.7のインターセプト、8.2のボール回収というのは昨季のアーセナルの選手誰よりも多い数字だ。

パスとドリブル能力

更にエキサイティングなことに、トーマスは才能あるドリブラーでもあり、これは今のアーセナルに最も必要な能力だ。昨季のパーティは90分当たり2.7のドリブル突破に成功、66回挑戦し、成功率は89%だった。これは50回以上のドリブルを試みた選手の中では最高の成功率で、アーセナルでそれに最も近いセバージョスですら27回なので、その多さがわかるだろう。

また、守備力とドリブルほどの高い評価を受けていないのが不思議だが、彼はパス能力も素晴らしい。守備でサウールやコケといった選手たちより貢献が多いにもかかわらず、90分当たりの前へのパス(20)、ファイナルサードへのパス(12)、プログレッシブパス(11)数全てでサウール、コケ、サヴィッチ以上の数字を残しているのだ。

アトレティコのDF達はそこまで技術に秀でているとはいえず、トーマスが後ろに下がってボール配給を担当、ライン間にシャープなパスを送り込むことが多かった。

彼のトレードマークのパスは二種類あり、1つ目は右サイドバック(通常はトリッピアー)への斜めのロングパスだ。これによりサイドのMFは中に入り、ボックス内に走りこむことが可能となる。

2つ目は、より繊細なチップパスで、これは相手が高いラインを敷いてきた場合にモラタに効果的に通すことに成功していた。オーバメヤンの走り込みとの相性もよさそうだ。

課題

シメオネをして『トーマスはポジションとトランジションの理解が素晴らしい。彼が一貫して最高のパフォーマンスを残せればヨーロッパ中のトップクラブが注目するのも頷ける。』と言わしめた。

本当にその通りで、いくつかのビッグクラブが彼の獲得に興味を示していた。

彼は非常にオールラウンドな選手で、改善点を挙げるのは難しいが、しいて言うのであれば、混雑したエリアでのパスが少し乱れることがある。これは、GKからボールをつなごうとするアーセナルにとってはマイナスとなるかもしれない。

また、相手がそこまで大きな脅威となっていないときでもファウルに手を出してしまうときがあるので、これは、将来的に改善しなくてはならないだろう。

また、これはパーティ自身とは関係はないが、アーセナルにとって今回の投資はかなりの規模のものだ。キャリアのピークを迎える選手への投資は魅力的ではあるが、週給20万£以上とされる給与はクラブで3番目のもので、万が一この補強が失敗に終わった場合のリスクは非常に大きい。

まとめ

伝統的なレベルでの印象で言っても、データで見ても、パーティは多くの素晴らしい素質を備えていることがわかる。フィジカル面で存在感があり、野心的なパスも出せ、チームの中心になる準備は整っている。

アーセナルの重要課題の一つであるチャンス創出に関しての貢献はあまり多くないだろうが、戦術的柔軟性と、中盤の支配権をチームにもたらしてくれるだろう。

金銭面での懸念も妥当なものだが、もしトーマス・パーティが期待された通りにチームをワンランク上に引き上げてくれるのであれば、その価値はあるといえるだろう。

トーマスは実績・能力・メンタル共に申し分のない、アルテタにとって完璧な選手となれるポテンシャルを備えているのだから。

Source(該当サイトの許可を得て翻訳しています):

記事執筆者のフィル・コスタさん

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Posted by gern3137