エジルとエメリとアーセナル 前編
パレス戦ではジャカの一件の衝撃が大きすぎて、そちらにもっていかれた感はありましたが、ホームの試合にもかかわらず、メスト・エジルがまたしてもベンチ外となっていました。
誰に非があるのか、などといった話以前に、最初にエメリとエジルの確執の話が報じられたのはもう一年以上前ですから、未だにこの問題が解決されておらず、チーム最高給を得ているスター選手が干され続けるというのはクラブの金銭面、イメージ面にとって非常にマイナスなことはまちがいありません。
今回はエジル、エメリ、アーセナルフロント3者の立場を整理しつつ、この件に関して考察してみたいと思います。
エジルの立場
この3者の中で一番わかりやすいのがエジルの立場で、エジルは一貫してアーセナルへの残留を希望する姿勢をとっています。どんなに出場機会がなく、また監督との衝突が報じられた際にも、一言も移籍を考慮するような発言をしたことがありません。
当然ながら2020/21シーズンまでは契約がありますので、エジルが出場機会に関わらずアーセナルで契約を全うするという固い意志を見せているのであれば、誰もエジル移籍を強いることはできない、ということです。
また、本質的な問題とは直接関係はありませんが、エジルはツイッターのフォロワー2400万というその圧倒的な数(現役選手ではロナウド、ネイマール、イニエスタに次ぐ第4位、当然プレミアリーグではトップ、アーセナル公式で1500万程度です)が示す通り、オンライン上での影響力は非常に強いです。
これだけの規模のアカウントになれば、恐らくエジル自身ではなく、SNSを運営するチーム/あるいは少なくともアドバイザー的なチームがいるのだと考えるのが自然な気がしますが、彼らは非常にうまいやり方で運営しています。
You make me laugh… pic.twitter.com/DohUXm3oSH
— Mesut Özil (@MesutOzil1088) October 23, 2019
Trained with this AFC legend this morning 💪🏼❤⚽ Always a pleasure to see you my Bro @piresrobert7 __ Best of luck for the match now from both of us ▶ @Arsenal 🙏🏼 #UEL #YaGunnersYa #M1Ö pic.twitter.com/EHASSIA3ac
— Mesut Özil (@MesutOzil1088) October 24, 2019
昨季のヨーロッパリーグ敗戦の時のベルカンプを引き合いに出したツイートもそうでしたが、今季もエジルのベンチ外が続いている時期と重なって『笑わせてくれるね』(上のツイート)とツイートしており、こちらは英国では、確証こそないものの、これが恐らくエメリ宛なのだということは間違いない、というコンセンサスとなっています。
かと思うとピレスと共にチームをサポートする姿勢を一貫してし続けたりと(もし戦略的にエジル自身、あるいはエジルが抱えるSNSチームが運用しているのであれば、という前提ですが)非常に人々の心をつかむの上手いなあという印象なので、イメージ戦略という意味ではエメリ監督はもちろん、アーセナル公式でさえもかなわないのではないか、と感じます。
現に、今回の問題を巡ってエジルを悪く言う声はあまり聞こえてきません。
クラブ側の立場
ただ、一つ注意すべき点は、エジルに週給30万£越えといわれる超破格の新契約を提示したのは現フロントではない、ということです。その前のベンゲル-ガジディス体制であり、噂ではガジディスが主導したといわれています。
そしてこの契約は、エジルの活躍に対する報酬というよりも、アレクシスを失ったアーセナルが二枚看板のもう一人であったエジルをクラブのイメージ的に絶対留めなくてはいけない、という状況の末にとった苦肉の策という側面が強く、正直なところこの額はアーセナルの金銭事情を考えると正気の沙汰とは思えません。
この額はオーバメヤンやラカゼットといた他のスター選手の給与よりも圧倒的に高額ですし、レンタルで1年放出するだけでも1800万£近く浮く、とういこともあり、フロントがエジルの放出を望むのも無理はないという見方はできます。
そして、ベンゲル監督時代の終盤から言えることですが、エジル自身がまだまだ良い選手ではあるものの、オーバメヤンやラカゼットを超える活躍を見せ、その給与に値する活躍が出来ているかと言われれば、そうは言えません。
ラムジーの退団などからもわかる通り、現フロントは一貫してクラブのためを追求するにあたって非常にドライな姿勢をとっていますし、今回もその方針の一つなのでしょう。
したがって、なんとかしてどのような方法をとってでもエジルを放出したいフロントと、契約もあり、アーセナルの都合に合わせて移籍する義理は特にないエジル、という対立は比較的理解のできるところではあります。
ずいぶん前からムヒタリアンとエジルの放出をフロントは画策している、という話は出ていましたし、昨年の冬にもエジルの移籍を許可した、という話は出ており、恐らく一貫してフロントはエジルを給与に見合っていない選手とみなしているのでしょう。
エメリ監督の立場
さて、ここに絡んでくるのがエメリ監督で、この中ではどういう意見でいるのか一番わかりにくい人でもあります。
何故かというと、エメリ監督は当初はW杯で不遇の時を過ごしたエジルを擁護するコメントを出したり、5人のキャプテンに任命したりと、信頼を示していますので、エジルがエメリ監督就任当初からプランに含まれていなかったとは考えづらいからです。
ですが、その後昨季の前半にトレーニング場での二人の衝突が報じられたのをきっかけに二人の関係は悪化していきます。その後エメリ監督のいうところの"戦略的理由"でエジルがチームを外れることが増えましたが、その際には明らかに不自然にエジルが外れた試合もあり、単に戦術的に評価できない、というだけではないはずです。
練習態度に関する問題も噂されましたし、今季もエジル以上にベンチ入りに値する選手がいる、などといったコメントも監督はしています。
とはいえ、オーンスティン氏も報じていた通り、エジルがチームメイトと険悪になっている、というわけでもないようですし、上述の通りイメージ戦略ではエジルが圧倒的有利という状態なので、もし単に自主練が足りない、などといったレベルではなく、明確にエジルに非があるような問題(練習に現れない、指示に従わない等)があったのだとしたら、このチャンスをクラブが逃すとも思えないので、それに関する報道がされていてもおかしくないように思えます。
そのようなリークが全くない、ということは、エジルの練習態度などが決定的な問題点だという可能性は低いように思えます。
また、こちらは後編でも触れますが、その後エジルがまたチームに復帰したのも、なんにせよエジルが抱えていた問題は修復不可能なレベルのものではなかったということの証明のように感じられます。
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