【戦術分析】エジルの不在によりチームにとって過剰な存在となるジャカ 前編

スタッツ・戦術

『カメレオンでさえも、ベースとなる色はあるし、エメリもアーセナルにやってきた当初は何かアイディアがあったはずだ。だが、シーズンが進むにつれてそれは失われてしまった。もしエメリが今後もアーセナルで挑戦を続けたいと願うのであれば、19/20シーズンの出来るだけ早いうちにアーセナルのスタイルを定義しなくてはならない。』

記事を自分の過去の発言の引用からはじめるというのはあまり褒められたものではないかもしれないが、それでも私の昨季の総括が、今季のアーセナルを分析するうえで良い足掛かりになるように思える。

ここまでのところ、今季のアーセナルについて言えることは以下の通りだ。

  • ハイプレスは一貫性を持っては行わない
  • 相手を分析して相手の決まった守備の形に徹底的にプレッシャーをかけるということもない
  • 引いて守り、相手からのプレッシャーを受け入れるのが得意ではない

うっすらとファイナルサードでのスペースづくりに焦点が当てられているような気がするが、それですらも一貫して続くことはなく、かつ思うような結果を残せていない。現状では、チームが何をやろうとしているのか、そしてこのまま勝ち点を積み上げ続けられるのかは不透明だ。

序盤には後ろから繋いでいくことへの意識の高さは見られた。ルイスの獲得もその証だろう。後ろからパスを出せることが彼の最も大きな強みでもある。

今季最初の三試合のレノのパス成功率は75%と高く、後ろから繋いでいくことへのこだわりが表れている。ハイプレスをかけるリバプール相手に86%のパス成功率を記録したのは特筆すべきだろう。

だが、チームはそのこだわりを捨てた。ショートゴールキックからワトフォード戦とヴィラ戦で失点すると、それ以来レノのパス成功率は50%前後をさまよっている。

ユナイテッド戦で分かったように、特にソクラティスはパスをつなぐのに苦戦しており、ルーズなボールでチームメイトを苦境に追いやってしまうことも多かった。

最終的にミスが増えたせいか忍耐力がなくなり、このアプローチは捨て去られることとなってしまった。ワトフォード戦後に語った通り、エメリは忍耐強いビルドアップをアーセナルのFW陣を活かす最適な方法と観ていた節がある。

だが、これがそのリスクに見合うだけのリターンをもたらしていたかと言われると疑わしい。10/1の時点でオプタによると、アーセナルはプレミアリーグで最もボールロストの多いチームだった。

一方で、このアプローチを諦めることの問題は、アーセナルが試合をコントロールしづらくなることだ。ロングボールが増えてポゼッションは減り、当然ながらその分アーセナルが攻撃に賭けられる時間は減り、逆に相手を防ぐために奔走する時間は増える。

さらに、これは、アーセナルが攻撃を仕掛ける際に、オーバメヤンやペペといった選手に多くのスペースを与えられないということも意味する。中央に選手が集まり、素早い連携で打開しようとすることが多かったベンゲル時代とは対照的に、エメリ体制下ではアーセナルの攻撃はサイドに広がる傾向があり、これはいくつかの問題を引き起こしている。

この傾向は、Whoscoredが提供するデータに如実に表れている。

中央での攻撃

2016-17: 32% (プレミアリーグ最大)
2017-18: 32% (プレミアリーグ最大)
2018-19: 24% (プレミアリーグ15位)
2019-20: 24% プレミアリーグ10位)

意図的になのか、致し方なくなのかはわからないが、エメリのチームはサイドに広がる傾向にあり、ベンゲル監督時代の忍耐強さは見られない。

(明日の後編に続きます)

(Source: https://arseblog.com/2019/10/tactics-column-ozils-absence-makes-xhaka-redundant/ )

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Posted by gern3137