【アーセナル新加入】スカウトレポート: ノニ・マドゥエケ
多くのアーセナルファンが、最近のアーセナルが非常に多くの選手をチェルシーから獲得しているということを、少々不満に思っている。
チェルシーから移籍してきた選手たちの中には成功した者もいれば、そうでない者もいるが、今年の夏、約50m£という高額の移籍金で獲得されたノニ・マドゥエケも、ケパに続いて、チェルシーからアーセナルへとやってきた選手のリストにその名を連ねることとなった。
Welcome to The Arsenal, Noni Madueke 💨
— Arsenal (@Arsenal) July 18, 2025
マドゥエケの前所属チームを伏せ、単に「トッテナムのアカデミーを離れた後に国外で評価を上げ、イングランドに帰ってきた23歳のイングランド代表」と説明すれば、一見エキサイティングな獲得に聞こえる。
しかし実際のアーセナルファンからの反応はかなり否定的だった。これは明らかに、世界中に多くのクラブと選手がいる中で、なぜまたチェルシーなのか、というファンの『チェルシー疲れ』が理由だろう。
加えて、移籍金額、イーサン・ヌワネリの出場機会に影響があるのではないかという懸念といった要素も絡んでいる。
マドゥエケがアーセナルにもたらすもの
ではなぜアーセナル、特にミケル・アルテタはこの選手をそこまで欲しがったのだろうか?
リーグ戦32試合で7ゴール3アシスト。そのうち半分はウルブズ戦とサウサンプトン戦の2試合で記録されたもので、そこまで特筆すべきものがあるわけではない。しかし、得点やアシスト以外のスタッツを見ると話が違ってくる。
サカを除けば、アーセナルの前線には突破力や混沌をもたらせるようなサプライズの要素が少し不足している。
マドゥエケはそれをアーセナルにもたらせる選手だ。彼はボールを持った瞬間、相手DFを揺さぶりゴールに向かって仕掛けることを最優先に考える。つまり、戦術的な仕組みに大きく依存せずにプレイできる選手ということだ。
チェルシーでも彼のボールを運ぶ力は重要な役割を果たしていた。
特に注目すべき2つの指標がある。
FBRefのデータによれば、彼は90分あたりのプログレッシブキャリーで欧州上位5%(6.82)、ボックス内へのキャリーでは上位3%(4.12回)に位置している。これらはモハメド・サラー並みの数字であり、彼はスムーズなドリブラーではないが、直線的でゴール前への侵入に長けているという特徴がある。
そしてこれは、ここ2シーズンアーセナルが少し苦戦している低い守備ブロックの攻略において効果的になるだろう。SNS上でもこの比較は話題になったが、アクションエリア、ヒートマップ、シュート位置など、ボックスに向かう動きに関して、マドゥエケとサラーは非常に似ている。
さらに注目すべきは、マドゥエケは昨季、シュートに繋がるキャリー数で90分あたり1.63とプレミアリーグ全選手中1位、90分あたりのシュート数が3.64とウイングの選手中トップだったという点だ。
マドゥエケは常にトライを続ける選手だ。
もちろん、彼はその分頻繁にボールを失う。その点に苛立つファンもいるだろう。だがそれは試合をこじ開ける役割を担う選手にとっては許容範囲だ。
センターバックや中盤の選手がボールを簡単に失うのとは性質が違う。ウイングの選手は何度も突破にトライすべきだし、20回仕掛けて1回成功すれば、それが勝ち点3と1の違いを生むかもしれない。
マドゥエケの改善・懸念点
マドゥエケはスプリント力は抜群で、静止状態から一気に加速する力は一級品だが、走り方が硬く、少しぎこちなく、ファーストタッチも緩く、全速力でドリブルしている時にはボールが安定しないことも多く、これはブカヨ・サカのような完璧なフォームとボールコントロールとは対照的だ。
ファイナルサードでの判断もまだ未熟で、サイドラインまで到達した際に、周りを把握しきれずクロスを上げてしまう場面が多く、カットバックも精度に欠けることがある。また、広大なスペースがある時も、なぜかタイトなエリアへ戻っていく癖もあり、チャンスを生かせない場面も見られる。
また、今回の移籍でもう一つ議論となってたのは、マドゥエケの態度面に関する懸念だ。これは彼がチェルシーが放出しても良いと考える選手となってしまった遠因の一つでもあり、コール・パーマーやニコラス・ジャクソンとのPK騒動や、マレスカから何度も「もっと努力せよ」というコメントを受けたりなどもあった。
ただ、一方で、PSV時代やイングランド代表で彼と関わった関係者からは、彼の勤勉さを称える声もある。これに関しては、外部から実際のところを知ることは不可能だが、究極的にはアーセナルが獲得に踏み切ったということは、これは特に問題ないという判断なのだろう。
また、もう一つの懸念が彼の怪我歴で、PSV時代には多くの試合を欠場している。累計のプレー時間は同世代のサカ(23501分)やマルティネッリ(15402分)と比べてもかなり少なく(11826分)、これをネガティブに捉えるかあるいは逆に「消耗が少ない」とポジティブな見方をするべきかは微妙の所だ。
まとめ
SNS上での反応についてあまり深入りしたくはないが、正直に言って一部の層の反応は異常だった。クラブの補強方針について疑問を持つのはファンとして当然かもしれないが、選手がInstagramのコメント欄を閉鎖し、獲得に反対する署名活動やアートの破壊まで行われるというのは、どう考えても一度頭を冷やした方が良い。
この補強には様々な懸念があるし、その多くはこの記事で取り上げた通りだ。私自身も、特に移籍金や彼のポテンシャルに関しては少し疑問を持っている。ただし、移籍金に関してはこれが今のプレミアリーグの相場だという現実もある。エランガ、クドゥス、クーニャ、そしてエンベウモといった選手たちは皆同じような移籍金で移籍している。
そして、マドゥエケは給与が比較的低いため、長期的に見れば他の選手よりもトータルのコストは安くなる可能性もある。
ここ数年、アーセナルはウイングの層の薄さに悩まされてきた。サカは18歳になって以降ほぼ全試合に出場しているし、昨季のレアル戦では、キーラン・ティアニーが即席の左ウイングとして出場し、PSG戦のベンチにはユースのバトラー=オイェデジやカビアが並んでいた。
少なくとも、マドゥエケがその穴を埋められるならば、それだけでも十分良い補強になる可能性はあるだろう。
確かに、マドゥエケの獲得には多くの疑問があるが、逆に言えば、それこそが、この選手の最大の魅力でもあるのだ。
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