【アーセナル新加入】スカウトレポート: ピエロ・インカピエ

分析Phil Costa,海外記事

アーセナルは今夏最終ラインの左利きのDFの何人かが移籍市場終盤に退団し、それに伴って今界の移籍市場最後の獲得してレバークーゼンからエクアドル代表DFのインカピエを45m£で獲得した。彼はどのような選手で、何をチームにもたらしてくれるのだろうか。

アーセン・ベンゲルはかつて、サッカー界の最高のストライカーは南米から生まれると語った。そこでは生き残るために適応力、技術的な質、そして闘争心が不可欠だからだ。

それは単にリーグで活躍するためだけでなく、審判など存在しない、ストリートで繰り広げられ、膝の擦り傷や蹴り、肘打ちが日常茶飯事の最も原始的なサッカーで必要とされる要素でもある。

南米は多くのディフェンダーも輩出しており、ストライカーと同様、彼らも攻撃性や献身性、そして時にはラフプレーギリギリのプレイもいとわないプレースタイルという共通の設計図に従っているようだ。

南米サッカーの特徴はストリートだけではない。

食卓に食事を並べることすら贅沢であり保証されはいない地域でプロを目指すことは、人々の心に火をつける。その情熱は、恵まれた環境にあるアカデミーでは必ずしも自然には育たないものだ。

ピエロ・ヒンカピエは10歳でエスメラルダスの家を離れ、夢を追うために南へ350キロの土地へと引っ越した。

その後エクアドル屈指のアカデミーを経てアルゼンチンへ、さらに18歳でドイツへと渡ったが、その時点でドイツ語は一言も話せなかった。

5年後、彼はドイツを4つのトロフィーとインビンシブルズの称号とともに後にし、アーセナルに加入することとなった。ドイツ時代と同じような結果にチームを導くことが出来れば、大いに歓迎されることだろう。

最近のアーセナルの補強に共通するテーマは「積極性」「レジリエンス」「反発力」であり、これらはミケル・アルテタとスカウトチームが明らかにトロフィー獲得のために重視している資質だ。

だが、それら全ては、選手の実力が十分でなければそれらは意味を持たない。そしてインカピエは間違いなく十分な実力を備えている。

彼はアルテタの理想の補強とすら言えるだろう。

まずインカピエはユーティリティ性を備えている。4バックの左CB左SB、3バックの左CB、そして左WB全てを高いレベルでこなすごとが出来る。

彼はまさに現代的なディフェンダーであり、役割に応じてプレーを適応させることができる。さらに、センターバックとして小さすぎず、フルバックとして鈍重すぎない、理想的な体格とフィジカルを備えている。

また、これらどのポジションでも彼は単なる穴埋めのような存在ではない。インカピエを最も的確に表現するなら、上で述べたような「典型的な南米の選手」ということになるだろう。

彼はアグレッシブで、常に全開、前に出る姿勢を崩さず、『少し抑え目で』のような設定は存在しないタイプ(それが大きな魅力でもある)の選手だ

プレーはあまり繊細ではないが、守備の基本は素晴らしく、デビューシーズンに13枚のイエローカードと3枚のレッドカードを受けた後は、ファウルとクリーンな守備の境界を見極めるバランス感覚が大きく向上した。

もしアーセナルでこの時と同じペースでカードを貰っていたら、クリスマスまでに裁判所に呼び出されていただろう。

昨季、彼は1試合平均1.8回のタックルでチーム最多を記録し、さらにタックル成功率65.9%という見事な数字を維持した。これは2000分以上プレーしたブンデスリーガ全ディフェンダーの中で10位だった。

の彼は危険を察知する嗅覚に優れており、守備のパートナーがポジションを外されたり、複数のフォワードに孤立させられた場合でも、左から右までカバーリングできるのが際立った強みだ。

高いリカバリースピードにより距離を埋めることができ、その後はボール奪取のチャレンジのタイミング次第だが、彼はその判断も通常は優れている。

I1対1の守備で非常に優れており、ボックス内でも粘り強い守備を見せる。腰を落とした低い構えで相手を追い詰め、素早いステップで足を出したり、すばやく方向転換できるのだ。

彼のプレーには「やられても決して諦めない」という執念があり、最初の勝負に敗れても、必ず2度目、3度目の反撃を仕掛けてくる。

彼はファウルもあるが、これはむしろ前線寄りのエリアで発生することが多い。リスクとリターンのバランスを考慮した上で、高い位置でのボール奪取やトランジションを狙うためだ。

ファンの一部は長らく、より伝統的なオーバーラップを得意とするタイプのサイドバックを望んできたが、インカピエはそのタイプではない。

だが、だからと言って彼がファイナルサードで無力というわけでもない。シャビ・アロンソ体制のレバークーゼンでは、その役割により適していたグリマルドがウイングバックだったが、インカピエもこの位置で起用されることがあった。彼は前線でも力を発揮できる。

彼は幅を取るのを好み、チャンスがあれば喜んでオーバーラップをし、相手ディフェンダーを置き去りにしてクロスやカットバックを中央へ送ることができる。

アロンソの下でレバークーゼンは強いポゼッション志向だったため、インカピエにはパスや前進のためのキャリーで相手の守備をこじ開ける役割が与えられていた。

彼は昨季のブンデスリーガで100本超のパスを通した試合が3度あった、ライン間を破るパスの本数ではリーグで彼を上回ったのは10人しかいなかった。

また昨季、彼はヨーロッパ5大リーグの23歳以下センターバックの中で最多となる11本のキーパスを記録し、次点のゼノ・デバスト(7)に4本差をつけた。

彼の迫力と主体性はボールキャリーにも発揮され、インカピエは隙間があればためらわずにこじ開ける。彼は中央突破を好むがサイドで仕掛けることもでき、ボールロストが高くつくかもしれないハーフスペースでもあえて賭けに出ることもある。

The Athleticのトム・ハリスが指摘したとおり、昨季の彼のボールキャリーのほぼ4分の1(22.1%)がプログレッシブキャリーでブンデスリーガのディフェンダーの中で3番目に高い割合だった。

ではその彼がアーセナルで最もあったポジションはどこになるだろうか。

エゼのと同様、インカピエは適したポジションというよりも、単に素晴らしいクオリティを備えているという理由で起用されることになるだろうが、個人的には彼のことは左サイドバックの位置で最もよく見ることになるのではないかと思う。

何らかの理由でガブリエルが不在、あるいはローテーションが必要な場合でも左CBの序列はカラフィオーリやモスケラの方が高そうだ。

インカピエは、同じ左サイドバックとして、よりコントロール志向のルイス=スケリーと、より前進志向のカラフィオーリとはまた異なるものをチームにもたらす存在だ。彼はあらゆることを少しずつこなすため、他にはない選択肢をアルテタにもたらすだろう。

また、この夏の移籍市場を終えてアーセナルファンは非常に奇妙な感覚を覚えている―それは層の厚さだ。

これはこれまでのアーセナルらしくない。

38試合を通して一人の選手が怪我無く好調を維持することを願うのではなく、なぜ各ポジションに最低でも2人の有力な選択肢を置いているのだから。

だがアルテタは明らかにマイケル・ジョーダンばりの姿勢で、昨季の負傷者危機を自らへの挑戦と捉え、二度と同じ愚かな事態を繰り返さないよう備えることにしたようだ。

特に最終ラインには各ポジションに2人どころか3人の選手がおり、緊急時のオプションも入れれば4人いるポジションもある。

右サイドバック:ホワイト、ティンバー、モスケラ

右センターバック:サリバ、モスケラ、ホワイト

左センターバック:ガブリエル、カラフィオーリ、モスケラ、インカピエ

左サイドバック:カラフィオーリ、ルイス=スケリー、インカピエ

それをやり過ぎと考える人もいるかもしれないが、現代サッカーの要求水準を考えれば不可欠だ。シーズンは長く、試合はますます激しさを増している複数大会で本気で優勝を狙うなら、大きなスカッドが必要だ。

先発11人と信頼できる控え2人だけで戦う時代は終わった。現代サッカーで必要なのはフレッシュな選手たちと、試合ごとに異なる選択肢を持つことだ。

また、アーセナルは2022年からインカピエを追っており、昨夏にはカラフィオーリ獲得に踏み切る前に彼の名前も候補として挙がっていた。

エクアドル代表は現在黄金時代を迎えているが、それを支えているのがインデペンディエンテ・デル・ヴァジェだ。

サンゴルキを拠点とするこのクラブは、モイセス・カイセド、ウィリアン・パチョ、ケンドリ・パエス、ジョエル・オルドニェスらを輩出しており、2022年W杯のエクアドル代表の実に39%が一度はこのクラブのアカデミーに所属した異なる選手だった。

だがそのような人材豊富なエクアドル代表で、ベテランFWエネル・バレンシアが不在のときは、キャプテンを務めるのはインカピエで、それが彼の質の高さを示している。

彼はさjカーメンの素質だけでなくリーダーシップ、責任感、要求水準の高さを備えているのだ。

サッカーの流れは速く、サイクルも短い。成功は決して保証されない。

だからこそ、重要なのはチームの選手を満足させることではないのだ。アーセナルのャツを着ること自体が戦いであり、インカピエはそのリングでの戦い方を熟知している。

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Posted by gern3137