アーセナルの左8番を務めることの難しさ
ミケル・アルテタは現在のアーセナルの中盤の(実質的にアンカー1人、その前に2人の8番を置くという)形を2021-22シーズンに採用してして以降、MFでも特に左8番のポジションを誰が務めるべきかというのはファンの間で常に議論になってきた。
ダブルボランチをやめ、パーティを単独でアンカーに置き、ジャカをより前に、左8番に押し上げる、という形で始まったこの布陣だが、ジャカは非常によくこの役割に適応して見せた。
ジャカのパス数とボールタッチ数は大きく減少し、常にCBからボールを受け取って繋ぎ続けるというスタイルのプレイを見せることはなくなった。この役割はパーティやジョルジーニョが行うことになった。
そして、このシーズンからしばらく時間がたった今、アルテタがこのポジションにどのようなタイプの選手を求めているのかは明快だ。
ジャカが2023年の夏に去った際に彼の代役としてアーセナルはカイ・ハヴァーツを代役として獲得した。
左利き。身長が高く強い。プレスに走ることができ、デュエルを挑み続けることを厭わない。ハヴァーツはこれらの特色をすべて備えた選手だった。
アーセナルでの右8番は中に入れる左利きの選手が起用されるが、左8番はより縦への推進力が重視されてきた。
ただ、ジェズスのコンディションが安定しない中、ハヴァーツはストライカーとしての適性が高く、左8番としてよりも、中央でチームに貢献できることが時間がたつにつれて明らかになった。
この夏成立した3つの移籍がアルテタがハヴァーツの後任に何を求めているかを示している。
スミスロウとビエイラは放出され、メリーノが獲得された。
よりスリムでエレガントなプレイメイカータイプの選手2人がクラブを去り、レアル・ソシエダでデュエル王として活躍した選手が新たにクラブにやってきた。
メリノは多くのタックルに成功するし、空中戦にも強い。ハヴァーツも同様だ。ジャカも縦に走ることができ、デュエルに勝利を収められるMFとなった。彼はチャンスを作るタスクを任されることはなかった。
このような役割が求められるのであれば、なぜスミスロウとビエイラが起用されなかったのか理解するのは容易だ。
ただし、ジャカの時もそうであったように、この左8番のポジションの役割を理解するのに選手はある程度時間を必要とすることもある。ジャカのこのポジションでのパフォーマンスは時間がたつにつれて向上していった。
ジャカ獲得当初にアーセン・ベンゲルが少し彼をアンカーとして起用すべきかボックストゥボックス型のMFとして起用すべきか悩んでいた様子があったのを記憶しているファンもいるかもしれないが、恐らくは、ジャカは中盤の底でのプレイメイカーを任せるべきという考えこそが誤解であり、本来はアーセナル最終盤での左8番での様なプレイが最も向いていた役割だったのだろう。
カイ・ハヴァーツもアーセナル加入直後は少しこの左8番の役割に苦戦していた。最終的にこのポジションに慣れた頃にはジェズスが怪我で離脱し、ストライカーとして起用されることになっていた。
その後左8番を引き継いだのはデクラン・ライスで、彼もまた、例えばビエイラやスミスロウと比べると、遥かにメリーノやジャカにタイプの近い選手だ。
そして現状、ミケル・メリーノもまた、このポジションでまだ輝けていない。試合展開や怪我の影響もあったとはいえ彼はインテル戦でハーフタイムで交代となったし、ニューカッスル戦でもあまり効果的だったとは言えなかった。
リバプール戦ではセットプレイから得点を挙げ、恐らくこのような貢献はアーセナルが獲得を決めた理由の一つだろうが、アーセナルファンが、資金をストライカーに費やした方が賢かったのではないか、と考えるのも自然ではある。
もちろん、実際にアーセナルはベンジャミン・シェシュコの獲得に動いていた。もしこのプランAが実現していれば、ハヴァーツはより頻繁に左8番でプレイすることになっていただろう。
右でウーデゴールとサカがチャンスを作り、そこに飛び込むハヴァーツとシェシュコ、という場面が見られていたかもしれない。
実際には、左から飛び込むのはハヴァーツとメリーノ、ということになった。
ニューカッスル戦のパフォーマンスはパッとしなかったので交代もやむなしではあったが、ただ、試合の終盤にデクラン・ライスがファーポストに走りこんだシーンは、ここにいたのがメリーノであれば、もしかすると結果は変わっていたかもしれない。
また、メリーノに関してはまだ彼がウーデゴールとプレイするところを見られていない、というのも考慮する必要があるだろう。
アーセナルはかなり深刻な創造性不足に陥っているが、そもそもメリーノはそれを解決するための選手ではない。上に述べた通り、アルテタが見据えていたのは2人のクリエイターと2人のボックスに飛び込む選手、サカとウーデゴールが作るチャンスにメリーノとハヴァーツが飛び込む、という光景だったはずだ。
アーセナルの左サイドは昨季から少々問題を抱えていたが、今季もマルティネッリの調子が安定せず、さらにカラフィオーリの怪我もあり、カラフィオーリ、メリーノ、マルティネッリ/トロサールという本来想定されていたであろう組み合わせで連携を構築できるほど試合を行えていない。
ただ、マルティネッリに関しては、サカはパス交換などで連携してくれる右8番のサポート(主にウーデゴールだが、最近はハヴァーツがこの位置に現れることもある)が得られる一方で、ワンツーを行ったり、相手DFを引き付けてくれるような中盤のサポートは左8番からはそこまで得られないことが多い。
過去のアーセナルを見ても、この左8番のポジションは全てのピースが揃って初めて効果的に機能する、というものであるようだ。メリーノついても、カラフィオーリとウーデゴールと揃って何試合かプレイして初めてその評価が下されるべきだろう。
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