今季のアーセナルを象徴するようなリバプール戦
日曜日のリバプール相手の2-2の引き分けは、今季のアーセナルのすべてが詰まったかのような一試合だった。
いけるのではないかという期待、サカの素晴らしさ、つまづき、苦境への対応力、続出する怪我人、微妙な判定、そして単独で見れば悪いというわけではないが、もっとできたのでは、という気持ちから残念に思える結果。
試合の始まりは良かった。
サカとティンバーの復帰が間に合い、かなりメンバーは揃っていた。ティンバーが左サイドバックとして起用されたが、アルテタがキヴィオルとジンチェンコをオプションとしてどう感じているかもあるにせよ、サラー相手により1対1に強いタイプの選手をぶつける選択はある程度理に適っていた。
ホワイトが素晴らしいボールでサカを相手の裏に放つと、そのままニアポストに強烈なシュートを沈めた。今季サカはさらにワンランク上の選手になりつつあり、いきなり一つ目のチャンスを決めてしまった。
形が全く同じゴールというわけではないが、タッチの正確さとそのクオリティ、容赦のなさはワールドカップでのベルカンプのアルゼンチン相手のゴールを思い起こさせた。
リバプールがルイス・ディアスのスマートなフリックからファンダイクのゴールで一点を返したが、試合は互角だった。そこからアーセナルは試合の主導権を握り、5本のシュートを放った。
メリーノは得点する前にもライスのフリーキックから惜しい場面もあり、彼が肩を痛めたように見え、怪我の再発かと思われたが、その後もプレイを続けることができた。
そして、更に前半が進み、またしてもライスのセットプレイから、今度はメリーノがヘディングで勝ち越し弾を挙げた。
ボールは素晴らしく、ヘディングも勢いがあった。
オフサイド判定を半自動化するという話がどこに行ってしまったのかわからないが、非常に長いVARチェックを経て、ゴールが認められた。
ハーフタイムの時点でアーセナルのパフォーマンスはリードするにふさわしいものだった。
だが後半開始すぐまた怪我に見舞われてしまった。今回はガブリエルがヌニェスとの接触で膝を痛め、試合を続けようとしたが再び座り込んでしまった。
彼はキヴィオルと交代し、これが試合の流れに大きな影響を与えた。
これをデータなどで示すのは難しいが、ガブリエルの交代がチームに与えた心理的なインパクトは大きく見えた。キヴィオルのプレイは特に悪くはなかったが、やはりガブリエルほどの存在感はなく、既にサリバが不在だったこともあり、これがチームの姿勢に影響した。
そこまでチャンスを作られたわけではないが、リバプールがボールを持つ時間が増え、どちらかというとアーセナルはこのままボールを持たせてリードを守り続けるつもりのように見えた。
さらに、残り20分という所でティンバーも交代となり、これによりアーセナルは試合の終盤を右サイドバックにMF、普段の右サイドバックを右CB、第三チョイスのCBを左CB、そしてまだ18歳で今季開始時点では5-6番手の選手を左サイドバックに配置した布陣で戦うことになってしまった。
もちろん、ルイス=スケリーのパフォーマンスは良く、彼の状況判断や、何かを起こそうという姿勢は好感が持てた。
とはいえ、この最終ラインはあまりにも急造シフトで、試合後にメディアでなぜアーセナルはもっと積極的に勝利を目指してプレイしなかったのか、などといったコメントもあったが、これは的外れな問いというわけでは一方で、このような局面でアーセナルがリスク回避に動いたのが何故なのか推察するのは難しくない。
最近のアーセナルの基礎には常に圧倒的な守備力があったからだ。
だが、恐らく最もこの試合で悔いが残る場面はアーセナルが失点を喫したことではなく、3点目を決めることができなかったことだろう。
ルイス=スケリーが良いボールをマルティネッリに届け、81分だったので疲労もあったかもしれないが、マルティネッリのファーストタッチはベストなものではなく、これはこの試合初めてではなかった。
アルテタがチームについて批判的なことを会見で口にするのは非常に珍しいが、試合後以下のように話していた。
2失点目はカウンターからだった。あのような場面ではファイナルサードできちんとシュートまでつなげる必要がある。その10秒後に相手に2対1を自分たちのボックスで作られていた。あのような時にボールロストしてはならない。
リバプールのカウンターが素晴らしかったのというのはもちろんある。アレクサンダー=アーノルドのパスは高精度で、カウンターの連続でアーセナルの守備陣は少し乱れていた。このような隙をサラーのような名手に与えてしまえば、そこを突かれてしまう。
だからこそやはり、もう少し自分たちの攻撃の精度も挙げる必要があった。
アルテタはサカとマルティネッリに代えてジェズスとヌワネリを投入した。
何故か認められなかったハヴァーツの幻のゴールについては、キヴィオルがファウルだったとは思わない。ただ、そもそもボールがゴールラインを割る前に主審が笛を吹いてしまったので、もし笛が吹かれていなかったらゴールが決まっていたかの分析は非常に難しい。選手たちはこれに反応するからだ。
他にも微妙な判定はあった。試合序盤にファンダイクがハヴァーツを蹴りつけた場面でイエローカードすら出なかったのは驚きだった。もしこれがグラニト・ジャカだったら・・・これ以上言う必要はないだろう。
コナテがマルティネッリを倒しPKではないか、という場面もあった。マルティネッリが完全にマイボールとしてボールをコントロールしていたかといわれると微妙ではあるが、これもどちらに転んでいてもおかしくなかった。
恐らくだがもしこれが逆の立場で、アンフィールドでアーセナルの選手が同じようなプレイを見せればPKとなっていたのではないだろうか。
だがいずれにせよ、この試合はアーセナルが2度リードを奪い、自分たちのプレイ次第で勝てる試合だった。
けが人が続出している最終ラインの影響を除外してこの試合を分析するのは難しく、サリバとガブリエルのCBコンビはプレミアリーグ最高といえるだろうが、この試合では二人ともが後半ピッチにいなかった。出場していたティンバーもまだフルコンディションではなく、もちろんウーデゴールが居ればまた試合は違った展開になっていただろう。
もちろんけが人がいるからといってそれを言い訳にはできないが、だが、それが試合の結果に繋がった要因ではある。
今季アーセナルは常に怪我人による主力の不在への対処を強いられており、昨季までクラブがほとんど固定気味にスタメンを送り出せていたのとは対照的だ。
ただ、試合後『全てがうまくいかないように感じられますね』と問われたアルテタはポジティブなコメントを残した。
そんなことはない、これがサッカーだ。想定外の環境も我々を強く、よりよくしてくれる。今日のような試合が見せられたんだ、私は代わりに出場する選手たちに対して疑いを抱いていない。前半は非常に良かった。勝ち点3を掴み、アーセナルがどのようなレベルにあるのか示す必要があったが、それはできなかった。だが、レベル的には近い所にあるのは間違いない。
アルテタの言わんとしていることはわかる。これだけ出場停止や怪我で主力を欠いても、リバプール相手に互角の戦いができたし、ここから主力が復帰してきた時のアーセナルのポテンシャルは明白だ。
だが、試合終盤の同点弾、プレミアリーグの優勝争いの激しさを思うと、どうしても楽観的になるのは難しい。
とはいえ、まだ次の代表戦ウィークまでにいくつか難しい試合が待ち受けている。ミッドウィークにはカラバオ杯の試合もあり、プレストン戦、そして次のニューカッスル戦のメンバー編成をどうするか、深く考える必要があるだろう。
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