【独占】チャールズ・ワッツさんインタビュー

インタビュー

今回『ミケル・アルテタ アーセナルの革新と挑戦』の出版に際して原著者のチャールズ・ワッツさんをインタビューさせてもらったので、その内容をお届けします!

書籍の執筆や、アルテタのアーセナル全体に関して

まず最初に、アルテタのアーセナルに関して一冊の本を書く、という経験は、振り返ってどうでしたか。

(以下ずっと太字がワッツさん)
本を書くというのは非常に大きなプロジェクトだったね。もともと私はスポーツジャーナリストになることを目指していたというわけではなくて、単にアーセナルについて何かを書くことが仕事に出来れば、と考えていただけだったから、その中でこのような機会を貰えてうれしかった。

ただ、正直に言って、本を書く、というのは私が最初に考えていたよりもずっと大変だったよ。

この本の主役となるのがアルテタですが、最初に監督に就任した時に、アルテタはアーセナルで成功するだろうと思いましたか?

もちろん、この任命はギャンブルだとは思ったし、ここまでの成功を収めるだろうと予測していたわけではなかった。アーセナルが置かれた状況と再建というタスクの大きさを考えれば、何度か難しい状況が訪れるのは当然だ。

だけど、本にも書いた通り、彼の最初の記者会見で感服していない記者はいなかったと思う。彼は経験がなく、若かったが、それでも、アーセナルを立て直すための明確なプランを持った人物だ、というのは明快だった。

それに、かなり成績が落ち込んでいた時期でも、クラブ側から一度でもアルテタの解雇を検討しているような雰囲気を感じられたことは一度もなく、そういった意味ではアーセナル側からのミケルへの信頼は常にあった。

23-24シーズンについて

23-24シーズンが終わって少し経ちました。直後の落胆から時間をおいて冷静に振り返ってみていかがでしょうか?

もちろん、苦い結果とはなったが、今年のアーセナルは多くの記録を破り、プレミアリーグでも最も優れた守備も持ったチームだった。この2年のアーセナルは他の時期であれば間違いなくリーグを優勝していたはずだし、リーグ優勝に恥ずかしくないだけの質を備えていた。

これはポジティブに捉えていいと思う。

ただ、シーズン終了直後にアルテタがアーセナルファンに向けて『満足してはダメだ』というメッセージを発したが、これは彼が内部的に、選手たちに向けて発したメッセージと全く同じだった。アルテタは選手たちにも今季を振り返って、二位で満足するな、と伝えたようだよ。

夏の補強に関して

今の時期といえばやはり移籍市場に注目が集まっていますが、何かアーセナルの補強について話せることはありますか?ベンジャミン・シェシュコに代わるFWの候補は誰かいるのでしょうか?

私の理解では、この夏アーセナルにとって最優先の補強ポジションがストライカーで、その中で第一希望のシェシュコ獲得に動いた、というわけではない。どちらかというと、シェシュコ獲得は逃すには惜しすぎる、素晴らしい選手を獲れる大チャンスだったので動いた、という方が近いようだ。

なので、今後アーセナルが継続してストライカーを探し続けるかどうかは不透明で、ウイングを今後狙うかもしれず、そちらの方が可能性が高そうだ。

ただ、ここまでの情報を見る限り、どちらかというと高額の獲得はサイドの選手ではなく中盤になる可能性も大いにある。だが、今年のアーセナルは全く情報を出さないし、6番の獲得に動くのか、8番の獲得に動くのかもまだわからない。

個人的には、どちらかというと8番タイプのMFを獲るべきではないかと思う。ライスは6番でも8番でも最高のプレイを見せるが、やはり6番として世界最高だと思うからだ。だが、ずっと噂が出ているズビメンディはどちらかというと6番よりの選手だし、今後どうなるかは何とも言えない。

冨安健洋について

日本語訳版の発売に際してのインタビューということで、少しだけ冨安健洋に関して聞いても良いですか?彼のことをどう思いますか?

本当に素晴らしい選手だよ。

獲得の経緯も、ずっと噂されていたわけではなく、突然名前が報じられて一瞬で移籍が決まった。そして、そこから即座にファンのお気に入りの選手の座を勝ち取ってしまったね。難しいアウェイの試合では最も信頼できるDFだし、強く、空中戦に長け、アタッカーを止めるのが非常に上手い。

素晴らしい獲得だったと思う。契約延長はパフォーマンスで勝ち取ったものだし、怪我さえ避けられれば、彼を超えるDFはプレミアリーグにもほとんどいない。

また、彼はファンだけではなく、選手やスタッフからも本当に人気のある選手だ。アルテタは冨安について質問されるといつも微笑んでいる。

私は少し前に彼にインタビューさせてもらったことがあるが、物静かだがリスペクトを持っており、彼がなぜそこまで愛されるのかすぐに分かったよ。

“プラスチックファン"やスタジアムの雰囲気について

確かに、冨安の初ゴールの時のチームメイトのリアクションからも愛されていることが伝わってきました。また、もう一点、ポステコグルーの"プラスチックファン"についてのコメントは英国内、国外でかなり話題を呼びましたが、ワッツさんはロンドンで生まれ育ったローカルなアーセナルファンとして、海外のアーセナル/プレミアリーグのファンをどう見ていますか?

ポステコグルーの質問への回答はまったくもってもっともなものだったと思うよ。サッカーファンはサッカーファンさ。世界のどこにいたって関係ない。別にロンドンのファンがより忠誠心がある、なんてことはないさ。

このような質問がされる背景にはチケットの価格が高騰していて、何十年もずっとスタジアムに通っていたようなファンもなかなかスタジアムを訪れることができなくなっている、という懸念が背景にあるのだと思う。海外からスタジアムを訪れるファンの方が休暇気分でよりクラブのショップで買い物をしたり、お金を落としてくれるので、クラブが優遇しているのではないか?という懸念だ。だが、これはあまり的を得ているとは思えない。

言った通り、どこにいてもファンはファンだ。私はジャーナリストとして世界中を旅しているから、アーセナルが世界中にどれだけ多くの熱烈なファンを抱えているかを知っている。彼らはスタジアムを訪れられなくても、夜中に試合を見るためにわざわざ起きることで、そのクラブ愛を示したりもしている。

イングランドでこの話が話題になるのはチケット代が上がっていることが原因で、それ以上でもそれ以下でもないと思う。

確かにプレミアリーグが国際的なコンテンツになってからスタジアムの雰囲気は変わったが、より家族連れでも訪れやすくなったりと、それをポジティブに捉えているイギリス人は多い。

私は何十年もアーセナルのホーム戦に通っているが、ハイバリーからエミレーツスタジアムへの移転でかっつてのような雰囲気は失われた。だが、ここ1-2年のエミレーツスタジアムの雰囲気は移転後最高のものだと思うし、昔ながらのサッカースタジアムの雰囲気が失われつつあるのは、スタジアムを訪れるグローバルなファンが増えたからというより、単純に立見席の撤廃など、安全面上の制約の影響の方が遥かに大きかったと思う。


さっきも言った通り、チケット価格の高騰などで、スタジアムを訪れるファンの層は変化したかもしれないが、それが雰囲気に影響を与えたということはないだろう。だって、この数年でエミレーツスタジアムの雰囲気は過去最高レベルに良くなっているのだからね。

日本のアーセナルファンへのメッセージ

最後に、日本のアーセナルファンや読者に向けて一言メッセージを頂けますか?

今はアーセナルファンにとって非常にエキサイティングな時期で、私の本がそのストーリーをよく伝えられているといいな、と感じます。私がこの本を書くのを楽しんだのと同じくらい、皆さんも読むのを楽しんでくれることを願っています!


書籍詳細はこちら:

ワッツさんのXやYoutube:

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Posted by gern3137