ベン・ホワイト: 変幻自在の天才右サイドバック

分析Lewis Ambrose,海外記事

ベン・ホワイトは一人の人間としても、サッカー選手としても、型破りな人物だ。キャリアの多くをCBとして過ごしてはいるものの、リーズとブライトン時代には中盤でのプレイ経験もあり、ブライトンでのアーセナル移籍直前のシーズンでは主に3バックの右としてプレイした。

ここから彼は前に上がり、ランプティへのサポートを提供した。

この期間彼はCBと右サイドバックの間ともいえる位置でプレイしていたので、アーセナルでホワイトが右サイドバックとして成功を収めたのもそこまで大きな驚きではないのかもしれない。

だが、それを考慮に入れてもこのコンバートは非常にスムーズなものだったし、アルテタは少しずつホワイトの役割を拡大し、ホワイトの成長は、進化を遂げたアーセナルにとって必要不可欠なものだった。

20年前どころか10年前と比べても、現在のサイドバックの役割は変化している。10月にホワイトはアルテタのもと右サイドバックをプレイすることに関して以下のように述べた。

もともと俺は右サイドバックでもプレイ出来たし、最終ラインであればどのポジションでもできたと思う。だけど、アルテタがサイドバックに求めるものは他の監督がこのポジションに想定しているものとは全く違う。

アルテタのチームで右サイドバックである、というのは同時にMFであり、CBであり、ウイングであり、そしてトップ下でもある、ということなんだ。だから、CBやサイドバックとしてというよりも、自分の能力の全側面を磨く必要があった。

そして、それが最も顕著に表れているのが直近の数か月だ。

ホワイト自身が語った通り、彼は試合に応じてどころか、同じ試合中でも数秒間の間に変幻自在に役割を変えることを求められている。 だがホワイトはその役割を何の問題もなくこなしている。

この何試合かの彼のヒートマップを見れば、どのようにホワイトの役割が変化しているかは明らかだ。

リバプール戦のようなビッグゲームでは、彼は昔ながらのサイドバックのように、主に外に位置し、時々はサカのサポートに上がっていく、というプレイを見せた。

一方でウエストハム戦では彼はジンチェンコ欠場の穴を補うかのように、かなり頻繁に中に入っていた。また、シェフィールド・ユナイテッド戦ではむしろもっとも重要なのはファイナルサードでサカを助けることであり、ブレントフォード戦も似たようなものだったが、ただしもう少し守備の負担は多かった。

これらの4試合は全て同じ2か月の間に行われたもので、また、これらの試合でホワイトはチームシート上は同じ右サイドバックとして起用されていた。だが、チームメイトにとって最もよい形を作るために異なる役割をこなしていたのだ。

例えば、以下の画像はリバプール戦で相手がプレスをかけてきた際の布陣を示したものだが、この時ホワイトは通常の右サイドバックの位置にいる。

だが、ロングボールが前に出た瞬間、ホワイトは前に上がるのではなく、中に入った。

この場面でホワイトが最優先していたのは、攻撃を助けることではなく、中央のスペースを埋めることだったのだ。中に入ることでスペースを埋めつつ相手の左ウイングをマークするような形となり、ボールロストの際にもアグレッシブなカウンタープレスで対応できるようにし、アーセナルが攻撃を継続できるように備えていた。

この時結果的にはアーセナルはボールを失わなかったが、ボールが自身の右サイドのファイナルサードへと展開されたので、今度はホワイトの仕事はオーバーラップでオプションとなる(あるいは相手DFを引き付ける)か、サカが1対2で前に出ることで空いた後ろのスペースで待つことで、攻撃のサポートをすることとなった。

ブレントフォード戦でのホワイトの2アシストは、この2パターンの形から生まれたものだった。

サカのような相手を恐怖に陥れることができるウイングとプレイする際には、自分でスペースに走りこまないことも有効となる。

2アシスト目の場面では、ホワイトは何度かウーデゴールやサリバとパス交換を行い、相手を押し下げたのちに、外側のランを繰り出した。

トップレベルではこのように、どの場面ではシンプルなパスを出すだけで良く、どの場面では前に走るべきなのか、という状況判断が結果を分けることも多く、ホワイトはほとんどこの判断を誤らない。

また、リバプール戦に話を戻すと、ホワイトのプレス回避力は素晴らしく、このため彼が中央にいるか、右サイドにいるか、あるいはCBのような位置にいるかに関係なく、大きくアーセナルのビルドアップに貢献する。

ホワイトは足さばきも良く、自信を持って落ち着いたプレイができるため、タイトなエリアから抜け出すことができ、恐らくチャンスと感じて出てきたに違いないリバプールのプレスを回避するうえでこれらの能力は役立っていた。

このような場合にリバプールが頻繁にとる対応が単に、更にプレスを強めることだが、直接的にはホワイトは関わっていないが、最初の二得点はホワイトとサリバ、ガブリエルが3バックとしてリバプールを引き付けた所から生まれた。

また、この3人を後ろに控えさせることができることで、アルテタはより前の選手たちに柔軟性を持たせることができる。ウーデゴールが流動的なポジションをとったり、ハヴァーツが下がって連携したり、マルティネッリが頭上を越すボールに縦に走りこんだり、といったプレイを見せても、アーセナルはそこまで守備が乱れる心配をしなくて済む。

ホワイトに関して特に素晴らしいのは彼がスピードとスタミナを備えているため、ここまで説明してきたようなプレイをすべて同時に行えることだ。ホワイトはスリーバックの一角としてプレイしたかと思えば、次の瞬間にはサカのためにオーバーラップに駆け上がっている。

また、ウエストハム戦では中に入ってボランチのような位置からも何度かサカのサポートのために上がっていった。

また、ベン・ホワイトは単に中に入って守備に備えるだけではなく、サイドのサカへのボール配給も行っていた。

そして、ベン・ホワイトのプレイに関してこれこそが最も重要なポイントだ。ホワイトのプレイを一つ一つ取り上げてみると、これは世界トップレベルというわけではない。だが、ホワイトはこれらのプレイ全てを同時に行うことができる。上でホワイトが語っていた通り彼は右サイドバックであると同時に『CB、MF、ウイング、トップ下』でもあるのだ。

しかも、ホワイトは一瞬の間にこれらのポジションを行き来する。

単に彼はモダンなサイドバックに求められる、時折中に入ったプレイをこなすだけでなく、試合中に展開やチームメイトと相手の位置に応じてどのポジションに変化すべきかを正しく判断することができるのだ。

昨季アーセナルの全力のプランAは最終的に相手にとって予測することができる、少し単調なものになってしまった。.だが、今季のアーセナルの選手たちはより自由に動き、常に相手をプレッシャーをかけながら試合を支配することができる。

そして、それを最もよく象徴しているのが今季のホワイトのプレイだと言っても過言ではないだろう。

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Posted by gern3137