ライス獲得がアーセナルにとって持つ意味は過小評価されるべきではない
ついに、アーセナルの歴代移籍金最高額を更新するデクラン・ライスの獲得が公式に発表された。
経緯の詳細はこの数週間にわたって報じられており、特にサプライズというわけではなかったが、想定された以上にまとまるまでには時間がかかっており、ついに成立したことは喜ばしい。
ただ、移籍報道がずっと続いていたため、もうある程度アーセナルファンはこれに慣れてしまった側面もあるかもしれないが、今回のライス獲得がアーセナルにとってどんな意味をもたらすかは少々過小評価されているようにお思われる。
これは、様々な側面でアーセナルの転換手となるような獲得だ。
アーセナルは欧州のトップ選手にとって魅力的な移籍先である
ライスの獲得によって、欧州トップレベルの選手がいくつかの選択肢の中から移籍先として選択するクラスのクラブであり、選手にとってアーセナルが魅力的な移籍先であるということが示された。
ほんの一年前でさえも、彼ほどの実績を持ったイングランド代表選手が他の選択肢を蹴ってアーセナル行を決めるだろう、というのは考えづらかったにもかかわらずだ。
ミケル・アルテタの説得力
そしてこれは、今のアルテタが築いているプロジェクトはビッグネームと呼ばれる選手たちが、それに関わり、一部になりたいと考えるようなものであるということの証明でもある。
オーナーからの信頼
105m£というライスの移籍金はアーセナルの移籍金歴代最高額を大幅に更新するものだし、イングランド人選手についた移籍金の史上最高額でもある。
これは、現在のアーセナルのオーナーが監督を完全に信頼しているということの証だろう。この夏アーセナルは既になんと200m£を選手獲得に費やしている。過去にはKSEは何度もファンから批判されてきたが、アルテタはライスを自身のプロジェクトの鍵となる獲得と捉えていたようだが、これはオーナーの金銭的なバックアップがあって初めて可能になったことで、これに関しては評価されるべきだろう。
アーセナルのステータスの変化
また、今回のライス獲得はアーセナルのステータスの変化ももたらし、今後の選手獲得に関しても影響を与えるはずだ。もちろんそれが選手の質に関係しているなどと言いたいわけではないが、例えばアーロン・ラムズデールをシェフィールドユナイテッドから獲得したり、ブライトンからベン・ホワイトを獲得したりするのは今回のライス獲得ほど難しいオペレーションではなかったに違いない。
ライスを獲るためには、マンチェスター・シティやバイエルン・ミュンヘンといったクラブとの競争を制する必要があったのだから。
更なる高みを目指して
さらに言えば、アーセナルのライス獲得は、アーセナルが昨季残した好成績にも満足しておらず、さらにチームの改善を続け、上を目指すつもりがある、ということも示している。
もちろん具体的な布陣や戦術面などに関してはまだどうなるかはわからないが、既に素晴らしく機能していた昨季の中盤を更にアップグレードするような選手獲得をアーセナルは行った。
アーセナルの一段上のレベルに到達しようという意図は堅く、それは選手たちにも伝わることだろう。
ライス獲得の意味の大きさは過小評価されるべきではないし、昨夏のジェズス獲得と同じように、アーセナルが非常に長期間にわたってライス獲得のために地道な交渉を続けていたことからもそれは明らかだ。
そして、アルテタはライス本人に彼の存在が自身のプロジェクトにとっていかに中心的な存在なのかを力説した結果、ライスにアーセナル移籍こそが唯一の選択肢だと信じさせることに成功したのだ。
もちろん、選手としての素質を見ても、ライスはアルテタが望む要素を全て備えている。プレミアリーグ経験豊富だが24歳とまだ若く、ユーティリティ性がある。
そして、ジャカの退団の穴を埋められるだけのリーダーシップも備えた選手だ。彼はウエストハムのキャプテンだった。
少しだけ105m£という移籍金につていの話をすると、もちろん、これがとんでもない額であるのは間違いない。
正直に行って、アーセナルがいつかこのような額を移籍金として支払うことがあるとは想像もしていなかった。
そして、サッカー界を離れて考えると、これがあり得ない額である、というのは多くのファンが感じている通りだろう。
だが、プレミアリーグに目を移してみると、これはそこまで法外と言うわけではないだろう。
リバプールは2018年の1月に26歳のオランダ代表DFファン・ダイク獲得にサウサンプトンに75m£を払っている。これと比較すれば、そこから5年後の今年、24歳のイングランド代表の中心選手に支払う額として100m£というのはそこまで的はずれではないように思われる。
もちろん移籍金を一般化するのは難しいが、今回のアーセナルのライス獲得と5年前のリバプールのファンダイク獲得の共通点を見出すのは容易だ。ジグソーパズルの最後のピース、チームを一人でワンランク上に引き上げてくれるような選手だからこそ、それだけの移籍金が動くのだろう。
最初のインタビューでライスは以下のように語っている
サッカー選手のキャリアというのは一回しかないんだ。ミケルがアーセナルで作っているスカッド、プロジェクトなら信じられると思った。アーセナルの一員でいられることは本当に名誉なことだよ。クラブの歴史、過去にここでプレイした選手たちを見ればそれは明らかだよ。そしてこの夏、僕を含め他の何人かの選手もここに加わった。僕らはアーセナルを以前のようなクラブに戻すつもりだ。勝利を収められるようにね。
ライスのアーセナル移籍は、クラブにとっても選手本人にとっても、タイミングとしては完ぺきであるように思える。彼がインタビューで語ったような野望をアーセナルで成し遂げてくれるように願おう。
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ディスカッション
コメント一覧
リーグの多国籍化が始まって何年になるだろうか。ヴェンゲルの時代には、11人が全て違う国出身というスタートがあった。ライス獲得の効果に付け加えるならば、これによって各ポジションにイングランド人の柱が立てられた事もあるのではないか。
かつてフレンチ・コネクションでアンリ・ピレス・ヴィエラ・ビルトールらが存在したが、アルテタだからと言ってスペイン人でチームを作る事はリーガの二大巨頭と選手を争う事で現実的でない。
枠の問題以上に、サカという旗頭が存在しつつあったチームにラムズ、ホワイトが加わり、スミスロウ、エンケティアとネルソンが台頭した。そして、エドゥのブラジリアン・コネクション。マルティネッリ、ガブリエル、ジェズス、マルキーニョスで、昨季のスタートを単純に入れ替えれば2つの国で11人の内、7人である。
プロジェクトには明確性も重要である。