【戦術コラム】アルテタアーセナルはいかにしてトッテナムに勝利を収めたか 前編

分析

昨季のノースロンドンダービー

昨季の5/12、アーセナルのCL出場権獲得への希望はトッテナム・ホットスパーに敗北を喫したことで散ってしまった。一時期はCL出場に向けてアーセナルは絶好の位置につけていたが、この敗北により、昨季のリーグ戦ではライバルのトッテナムに勝ち点2届かず、CL出場権を譲ってしまったのだ。

この試合ではロブ・ホールディングが退場となってしまった。あくまで結果論ではあるが、アルテタのボール保持にこだわり、自分たちのスタイルを貫くやり方は、カウンターが得意なスパーズ相手にはあまり良いものではないようにも見えた。

だが恐らく、問題はスタイル自体というよりも、アルテタが望んだ仕事を任せられる人員が揃っていないことだったのだろう。

ホールディングはプレスに晒されながらボールを保持したり、孤立した状況で相手アタッカーと対峙したりという状況がそこまで得意ではない。だが、アルテタはけが人のせいで難しいメンバー選考をこの試合では強いられた。

人員の変化とコンテのアプローチ

だが、昨週末の試合は全く違うものとなった。

4バックのメンバーはセドリック、ホールディング、ガブリエル、冨安というメンバーからホワイト、サリバ、ガブリエル、ジンチェンコという陣容に代わり、ジンチェンコ以外の3人は単独でのデュエルに強く、より自信をもってアーセナルは攻撃的なサッカーを展開できた。

結果的にガナーズは快勝を収め、なぜチームがリーグトップに居るのかを象徴するかのようなパフォーマンスだった。トッテナムは撤退してコンパクトなローブロックを敷いて『崩せるものなら崩してみろ』と言わんばかりのコンテからのメッセージだったが、アルテタの相手陣内でのアプローチがアーセナルにとって素晴らしい解決策となった。

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もちろん、コンテはボールを保持せずとも試合をコントロールすることを得意としている監督で、昨季、マンチェスター・シティとリバプールはコンテのアプローチに苦戦し、トッテナム相手にチャンスを多く作ることは出来なかった。

実際に、今回の試合でも前線にオープンなスペースはほとんどなく、アーセナルはライン間に縦パスを入れられる機会は多くなかった。だが、チームは違う形で優位性を演出出来ていた。

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グラニト・ジャカとアーセナルの守備ブロック攻略

以下の画像は前半2分のものだが、スパーズの守備ブロックが明確に見て取れる。ここからホワイトは画像には映っていないが、右サイドのサカに向けてボールを出した。

ここで注目すべきは、グラニト・ジャカのポジショニングだ。ジャカがロメロとエメルソンの2人の間で彼らを引き付けているため、大外のマルティネッリがフリーになっている。

また、ソンがペリシッチをサポートできなかったため、サカはペリシッチと1対1だが、基本的にサカの突破力はペリシッチの守備力を上回っているため、この状況はアーセナルが質的優位を手にしているということになる。

実際にこの後サカはペリシッチの外を抜け、ボックス内にクロスを入れることに成功した。

そして、ジャカがロイヤルをブロックしていたため寄せきれず、マルティネッリがボールを受けシュートを打つことに成功した。

ここからさらにアーセナルは勢いに乗ってトッテナムの守備ブロックを翻弄し続けた。

スペシャルなブカヨ・サカ

例えば以下の場面では、再びサカがボールを持っているが、今回はホワイトがオーバーラップでラングレを引き付け、サカが中に入ることに成功している。

サカは非常に特別な選手であり、欧州のトップクラブが流動的なサッカーを展開する上で、彼の様なクオリティを持つ選手は必須の存在だ。

彼は一気に相手選手を2人あるいは3人同時に相手をすることが出来る。

例えば、以下の場面ではホワイトのオーバーラップのおかげでサカがペリシッチと一対一になりそうなのを察したホイビュアがアーセナルの質的優位をつぶすためにはサポートが必要だと判断しているが、今度は逆にそのせいで中央のウーデゴールが空いている。

そして、先ほどの場面と似たような形で、またしてもジャカがまるでストライカーのようにロメロとダイアーをピン止めしている。 これにより、相手の最終ラインが押し下がっただけではなく、ベンタンクールもジャカへのパスコースをカットするような動きを見せなくてはならなくなった。

ウーデゴールはこの場面ではシュートを選択したが、大外へのジェズスへのパスコースがこの時空いていた。

連携の構築と共に美しいサッカーを見せるアーセナル

今季ここまでのアーセナルは素晴らしいサッカーを見せており、サッカーファンの多くにとってはこれはサプライズだったかもしれない。だが、アルテタが3-4-3を辞め、エミール・スミスロウをチームに組み込んで以降、少しずつ彼の理想的なシステムにチームを近づけていることをアーセナルファンは目にしてきた。

時間が経つにつれて、少しずつ選手の連携は深まり、素早くケミストリーのレベルも上がった。

それを象徴するような存在なのが、サカ、ウーデゴール、ベン・ホワイトのトリオだろう。彼らは特に今季第三節以降自信に溢れ、素晴らしく効果的なプレイを見せている。

アーセナルの先制点の場面がアーセナルの右サイドがどれだけ相手にとって脅威となっているかを示している。試合を通してトッテナムは彼らに手を焼いていた。

(後編に続きます)

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Posted by gern3137