アルテタアーセナルのスタイルとキャビアの話
10月は過密日程となっているため、次の試合がすぐ訪れてしまい、幸せに浸る時間が短いのは少し残念だが、今日に関しては、読者の皆様が土曜の勝利の温かい余韻に包まれて過ごしていることを願っている。
もちろん今季の先はまだまだ長いし、更なる強敵と戦う必要もある(まず第一に翌週のここ何年かよりも不安を抱えている様子のリバプールだ)。だが、それでも週末の勝利は非常に大きな意味を持つものだった。
もしアーセナルが負けていれば、トッテナムにより上位を行かれていたわけだし、マンチェスター・シティも勝利したため、首位から陥落する所だった。
サッカーがパフォーマンスの美しさに応じて加点されるスポーツではないし、どの戦い方が正解、というのも存在しないのはわかってはいるが、今のアーセナルは見ていて非常に楽しいチームだ。
まだ道は先に続いているが、今のアーセナルは少し前を考えれば大きく前進している。
ファンとの関係性の修復という意味ではアルテタは非常に大きな仕事をしたが、今のアーセナルのサッカーのスタイルがチームとファンの関係性を良好に維持する上で大きく役立っているのは間違いない。
アーセン・ベンゲルがかつて用いた『毎日キャビアを食べていると、ソーセージに戻るのは難しくなる』という比喩はよく知られているが、その意味では、我々ファンは常にインビンシブルズやその前のアーセナルの栄光の影を追いかける日々が続いていた。
エキサイティングだが効率の良いサッカー。そして結果として訪れる多くの勝利。
アーセン・ベンゲルが我々に提供してくれたキャビアはアーセナルファンに愛されていた。ソーセージも悪く無かったが、最終的には薄い粥になってしまった。
生きていく分には何とかなるが、それだけだ。
もちろんサッカー界のサイクルというのはある程度必然的なもので、ずっと1チームがリーグを圧倒し続けることはない。
問題はアーセナルがここからどのようなチームになっていくのか、という点だろう。
ベンゲル時代にもタフな時期はあったし、それはエメリ体制下やアルテタの下でも同様だ。恐らくだが、クラブによってはアルテタが不調の時期に解雇に踏み切っていてもおかしくはなかった。それが今のサッカー界の現実だし、実際にそのようなアプローチで結果を出すクラブもある。
そして同時に、アルテタアーセナル当初のスタイルはファンを混乱させた。それは無機質で、攻撃の意志、ボックス内での閃きを欠いているように見えたからだ。
彼がバルセロナアカデミーで育った攻撃的MFで、選手時代にアーセン・ベンゲルの下でプレイし、ペップ・グアルディオラの副官を務めたとは信じられないほどだった。
監督就任からほどなくして、アルテタは理想的には4-3-3でプレイしたい、という旨を口にしていたが、それが実現するにはかなり時間がかかった。
アーセン・ベンゲル以前、アーセナルは1-0で勝利を収める堅守のチームとして知られていたが、当時のジョージ・グレアム時代からのファンですらも、どちらかというと、土曜日のスパーズ戦の内容の方が観ていて楽しいと思うのではないだろうか。
ベンゲルがアーセナルで革命を巻き起こした背景には、タイミングが良かったというのもあるが、アーセナルファンが誇れるようなサッカーのアイデンティティを確立させたのはとても大きかった。
もちろん、攻撃一辺倒になるだけでなくある程度のバランスは必要だし、それが上手くいかなかった試合もあったが、攻め、得点し、試合をコントロールする。私が見てきた最高のアーセナルのチームは皆これらを得意としていた。
時代は流れ、サッカーそのものが大きく変わったが、そのようなスタイルのサッカーを観たいというファンの欲求は大きく変わっていない。未だに成功を収めるのはそういったプレイが出来るチームだ。
したがって、アーセナルが大舞台でビッグクラブと渡り合えるようになってほしいと願うのであれば、同時にそのような攻撃的なサッカーを望むことにもなる。
だからこそ、アーセナルがスパーズ相手に見せたパフォーマンスは本当に素晴らしかった。もちろん、結果が最も重要なのは言うまでもない。仮に少ないチャンスを決め切った1-0での勝利のような結果だったとしても、ファンは喜んだだろう。
だが、今回の試合のアーセナルのプレイスタイルがファンの今のアーセナルのプロジェクトとそのプロセスへの信頼を高めたのは間違いない。
恐らく、堅実なカウンターで結果を残そうとするタイプの監督はアーセナルでは少々やりにくい思いをするに違いない。
試合後のエドゥは『チームのバランスを取るプロセスが終われば、次はさらなるクオリティを加える番だ』とコメントしていたが、アーセナルには既にそのプラットフォームが整っており、このスカッドにさらにクオリティが加えられれば素晴らしい。
順位や試合展開に関係なく、どんなものでもダービーに勝利するのは良いものだが、ギリギリのところで昨季敗北しCL出場権を逃した後で、今回の勝利は冷えた料理などではなかった。このままアーセナルが発展を続けていけば、将来的には再びキャビアの日々に辿りつけるかもしれないという予感を伴っていた。
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ディスカッション
コメント一覧
目隠して鼻つまめば何食べても粥、日本には完全メシもあります!
昨年マドリーが優勝しましたが、才能ある選手が能力を発揮すれば止めることは難しい
これはベンゲルさんが一貫して注力してきたことです
問題はいつだって自由度とチームプレー、攻守のバランスです
自由を許されるから自然に能力を発揮しやすい、チーム力通りの結果になりやすい
上限を設けないから、セスクウィルシャーが若くしても攻撃的才能を最大限発揮できる
幅をもたせてるから、エブエのような個性がCL決勝(ダイブによる)先制の起点、ベルカンプラストゲームでアシストをプレゼントできるのです
アルテタは現実的な解決策として、リスク管理を含めた全体的な連係
選手は間違った判断さえしなければ自由にプレーすればいいが
スペースの突き方、フォローの入り方、プレスのかけ方
あらゆる局面のありとあらゆる細部の練度
正しいプレー選択の高度な共通理解につとめてきたのでしょう
プレーが中断したときの意思統一、セットプレーのパターン、ピッチサイドでブレーンとしての指示
とにかくできることは何でも徹底してやる
そのぶんエラーが起きたときの思考停止
コンディション、マンネリ、メンツは懸念されるところです