アーセナル22/23選手紹介兼シーズンプレビュー 守備的MF編
トーマス・パーティ
パーティを"守備的MF"とカテゴライズしていいのかに関しては若干微妙なところだが、昨季は基本的には4-3-3のアンカーのような位置でプレイした。ボックストゥボックス型MFのように、前に顔を出しても生きる選手ではあるだけに、当初はこの起用に懐疑的な意見もちらほら見られたが、結果的にはこれは大当たりで、その軽やかな機動力とボール奪取力の高さ、そして正確な縦パスによるボール前進と全てがかみ合い、このポジションで圧倒的なパフォーマンスを見せた。
これこそ、当初彼の獲得が発表されたときにアーセナルファンが夢見ていた姿だと言っていいだろう。プレイ面ではほぼ完ぺき(ミドルシュートを除けば)と言っていいくらいだったのだが、やはり懸念はアトレティコ時代は怪我しらずだったにもかかわらず、プレミアに来てからはかなり怪我がちとなっている点だろう。
昨季アーセナルの転換点となってしまったのが怪我によるティアニー、冨安、パーティの離脱だったが、クラブは夏に左サイドバックのジンチェンコを補強、右サイドバックも開幕から二試合はホワイトが冨安に代わって良いパフォーマンスを見せているが、中盤のみは補強はなく、移籍の報道を見る限り、クラブが守備的MF獲得に動いている様子はない。
パーティの能力の高さの裏返しでもあるのだが、単独でアンカーとして起用した際に彼に準ずるレベルでプレイできる選手はチームに見当たらず、またこれはあくまで想像だが、そのようなワールドクラスの選手はマーケットにも出ていない、あるいは出ていたとしてもパーティの控えとして移籍してくるつもりはないだろう、というクラブの判断なのかもしれない。
パーティ不在時にはダブルボランチを用いるなど、システムを微修正するのが現実的な解決策となるかもしれない。
アルベール・サンビ・ロコンガ
昨季前半は印象的な活躍を見せたものの、後半に関してはカップ戦などがなかったこともあり出場機会が得られず、パーティの離脱に伴って突然訪れたチャンスでは思うようなパフォーマンスを見せられない、という形でシーズンを終えた。
一貫してアーセナルコーチ陣はロコンガをパーティの後継、守備的なMFとして見ているという報道が出ていたが、今季はより前での起用もあるのではないか、という噂もあり、まだ彼の本職がどこになるのか明確に決まっているわけではなさそうだ。
出場した試合での結果に関しては、パス成功率はかなり安定して高かったし、ファイナルサードへのパス数は5とかなり高い水準だった。特にドリブルによるボール前進はチームトップクラスの数字で、これだけ見ると低い位置での起用が向いていそうなのだが、一方でアンカーとして起用するにはもう少し守備面のブラッシュ会アップの必要がありそうで、かといって。ここまでキャリアを通して数ゴール数アシスト程度しか記録していないことからもわかる通り、より攻撃的なMFとしてプレイさせた際にどれだけ前線で貢献できるかは未知数(キーパス数は90分当たり1.38と悪く無い数字を残したが、どちらかというとスタート位置は後ろ寄り、という形の方が活きるようにも思える)、難しい所だ。
ジャカ、パーティ、エルネニーとアーセナルの中盤は今すぐにというわけではないが、そろそろ世代交代をクラブが考え始めるであろう年齢の選手が中心となっているため、若手のロコンガが飛躍を遂げてくれれば、有難いことこの上ないが、どうなるか。
ここまでの所、どちらかというとまだロコンガが自信をもって本当に心地よくプレイできている姿は見られいないという印象があり、今季はヨーロッパリーグがあり、かつ交代枠も5ということで、昨季とは違い恐らくある程度安定して出場機会を得られるはずなので、本領発揮に期待したい。
モハメド・エルネニー
上位チーム相手には若干心許ないが、アーセナルが押し込む時間が多そうな試合であれば、パーティの代役としてアンカーを務められるかもしれないのがこのエルネニーだ。
ウナイ・エメリ時代はほぼ構想外といっても良く、トルコへのローンを経て移籍は間違いないかと思われ、実際に昨季は途中まだあまり出番もなかったが、シーズン前半はパーティの代役として白羽の矢が立っていたロコンガが徐々に不安定なパフォーマンスを見せたのに伴って、シーズン終盤は出場機会を得て印象的な活躍を見せると、そのまま契約延長も勝ち取った。
当然と言えば当然だが、何か月も出場がない中で突然の試合出場に苦戦した印象のロコンガとは対照的に、いきなり良いパフォーマンスを見せられるのは流石は経験豊富なベテランの技、といったところか。
控えでも構わないのでアーセナルに残れるものなら残りたい、アーセナルはファミリーなんだと語る彼はある意味他の誰よりもアーセナル愛が強い選手といってもいいかもしれない。現代のサッカー界ではかなり稀有な存在ではないだろうか。
プレースタイル的には、安全なパスを回させれば超一流、ボール奪取力とボール前進力は悪くはないものの、特に秀でているというほどではなく、前線での貢献は年に1度スーパーミドルを決めるのを除けばそこまで期待できない、と従来からそこまで大きく変わっているわけではないが、前への意識は以前よりも高まっているように感じられるし、ずっとベンチに置いても文句ひとつ言わず、いざ出番が来れば監督の指示を忠実に遂行する、という能力には長けているため、アルテタにとっては非常にありがたい存在だろう。
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