グラニト・ジャカのインタビュー
昨日Player Tribune上で、動画と文章両方の形でグラニト・ジャカの非常に興味深いインタビューが公開されていましたので、その内容を抜粋して紹介したいと思います。
ファンとの関係性・クリスタル・パレス戦に関して
ファンから自分がブーイングされるのを聞いた時は足が止まってしまった。数人どころではなかった。スタジアムの多くのファンからだった。こんなことを未だかつて経験したことはなかった。非常にショックだった。トンネルで観客席を見上げた時、ファンの顔が見えた。この時の光景は一生忘れないだろう。今でも目を閉じれば思い出すことが出来る、彼らの怒りの表情を。
グラニト・ジャカ
ファンから愛されていない、どころではなかった。あれは純粋な憎しみだった。
批判には慣れているものの、この時にジャカはアーセナルファンからのコメントはあまりにリスペクトを欠いており、勝つ個人攻撃的だと感じていたそうです。『アーセナルのキャプテンだって人間だ。だから傷つきもするし、ファンからの侮辱にあのような反応をした。間違った行いだったか?イエス。だがもう一度同じことが明日起こったら違うリアクションをとるだろうか?正直に言って、わからない。』と語っています。
③
— Takuma Yamanaka(山中拓磨) (@gern3137) April 14, 2022
この瞬間のことは一生忘れられない。僕とファンとの関係はここで違うものになってしまったし、もう元に戻ることはない。割れたグラスのようなものさ。欠片を繋げることは出来るけれど、ひび割れはずっと残り続ける。
ファンとの関係性は以前通りにはいかない一方で、もうクリスタルパレス戦の様な出来事は経験したくない、と水に流して前に進んでいるようですね。この出来事のあとで、レノやベジェリンはジャカの家を訪れ励ましてくれ、エドゥからは心配の電話がかかってきたとか。
また、ファンは選手の家族や、人生、どのような人間かを知らず、90分だけを見てそれで終わりであること、そして、もっと親密な関係性を築いたり、選手とファンの関係性のあり方に関しては改善の余地があるとジャカが考えている点は興味深かったです。
ジャカは自身をターゲットにするのはいいが、家族は関係ない、放っておいてくれというメッセージもファンに向けて発信しています。そして、実際にアーセナルファンと面と向かってあった際にはいつも『最高の選手だよ』などといった声をかけられており、その後オンライン上で悪口を言われるくらいであれば、正直に声をかけてくれた方がまだましだと相当ウンザリしていたようですね。
また、怪我が非常に少ないイメージがあるジャカですが、15歳の時にACL断裂による長期間の離脱を経験しており、その後も思うようなプレイが出来ず、ファンからも『なんでまだサッカーを続けるんだ?』とヤジを飛ばされサッカー選手の道を諦めることも考えていたそうです。
退団直前、そしてミケル・アルテタの監督就任
ユーゴスラビアでコソボの自由と独立を主張したことを理由に政治犯として拘留された経験を持つジャカの父は、苦境をものともしないタフな人物で、ジャカに対しても、常にドイツ時代から『逃げるな』と言っていたそうです。
その父ですらも、クリスタルパレス戦後にはジャカに移籍したほうがいい、と進言したそうです。この影響もあり、アルテタがアーセナルの新監督に就任した時点でジャカは移籍の決意を固め、既に家族との話し合いや荷造り、飛行機の手配なども済ませた状態で、新監督のアルテタに別れを告げるつもりで話し合いに臨んだとのことでした。
しかし、そこでアルテタはジャカの状況と移籍希望に理解を示しつつも、明確にプランを説明し、『君がアーセナルを去るのは間違っていると証明するのに6か月だけ時間をくれないか。その後も移籍したければ、自由に移籍すればいい。』と慰留を行ったのだそうです。
そして、直感的にアルテタのことを信頼できると感じたジャカは、父や家族の反対を押し切って、即座にアルテタの提案を受け入れることを決めたとのこと。
父は『もう終わったことだ。なぜまた戻る?』といったけれど、僕はもう自分で自分の人生について決断できると思った。『新しい挑戦なんだ。一人だってロンドンに残る』と家族には告げた。もちろん、最終的に彼らは僕のことをサポートしてくれた。
頭は既にアーセナルを離れていたが、まだ心は離れていなかった。そして、僕の心が自分自身に『こんな形で移籍するわけにはいかない』と告げていた。僕のことを嫌うやつら、僕のことを無価値な選手だと思うやつらを満足させていいのか?と思った。それは僕のやり方じゃない。
感想・まとめ
全体的に非常に興味深く、ファンと選手との関係性について考えさせるジャカのインタビューでした。本当は普通に子供とスーパーに行って、一般の人のような生活がしたいが、子供がマクドナルドが食べたいと言っても、一緒に行けば翌日新聞の見出しになってしまうだろうからそれはできない、といった話や、SNSとのファンから自分が出場していなかった試合ですら中傷が寄せられ、彼らが試合すら見ていないことが分かった、といった話もありました。
アルテタ監督就任時の経緯も合わせて考えると、昨夏ジャカの移籍が許可され、ローマ移籍一歩手前までいっていたのは少々不思議でもありますが、恐らくジャカとしては、アーセナルを去ること自体にそこまで抵抗があるわけではないものの、キャプテンはく奪に至った件を経て、逃げるように去るのはどうしても自身の人生の哲学と相反する、ということだったのでしょう。
最近は非常に慎重に選手のコメントやメディア露出はコントロールされていることも多い中、グラニト・ジャカの素の部分が透けて見えるようで、一人の人間としての彼に対してとても好感が持てる素晴らしいインタビューでした。
パーティが離脱となっている中、プレイ面でジャカの重要性は今までにないほど高まってもいますし、今後の活躍にも期待したいですね。
ディスカッション
コメント一覧
アトから考えれば感情的なよくない行動でしょうが、その前のジャカへの感情は確かに不当な扱いだったように思います
そしてクラブは自己責任の名のもと選手を守ってやらなかった
サンジェイ体制のこの時期ラムジー契約取り下げ、エジルの扱い、ムスタフィへのサポート、オフィシャルでのコシェルニー造反アナウンス
これまでの価値観人を大事にしてきたクラブが対話をしなくなった
結果はいわずもがな
アルテタがまずするべきだったのは選手を信頼すること
こちらが信頼するから相手も信頼してくれる
苦しいときに誰がクラブのために戦うのでしょうか
リーグ180試合出場はカソルラロシツキジャックより多い、トレイラなんかとは同じ土俵にもたってない訳です
当然合理的な判断もあったでしょう、ボルシアけって給料半分のローマけって延長するのもわかります
おそらくこれから決定的には認められない、それは虚しいことです
開き直って淡々とプレーしてるように感じられるときもあります
ジャカがハッピーでないなら近い将来お互いにちょうどよい頃合いがくる気がしてならないです