ヌノ・タヴァレスを巡るジレンマ
アーセナルが正左サイドバックを起用した状態でシーズンを終えられる日はくるのだろうか。
キーラン・ティアニーは素晴らしい選手だが、一つだけ問題点がある。怪我の多さだ。彼は今季を含めてアーセナルで3シーズンを過ごしているが、それぞれのシーズンの出場時間は986分、2299分、1916分となっている。彼にシーズン30試合以上の出場を期待することは難しい。
2021年夏
もちろんアーセナルもこれをわかっており、昨夏には控えの左サイドバック獲得に乗り出した。多くの名前が噂に上がったが、単に穴を埋めるような選手ではなく、より将来性のある選手を獲得することをクラブは決め、6.8m£でベンフィカからヌノ・タヴァレスの獲得することとなった。
以前アルテタは彼の獲得に関して、スカウティング部門を称賛するコメント残している、
スカウティング部門は才能発掘の素晴らしい仕事をしたよ。年齢のプロフィールもフィットしており、クラブが支払える移籍金だった。彼は既にかなり好印象だし、アーセナルのプロジェクトにフィットすると思う。
デビューを果たしたタヴァレス
そして、実際にキーラン・ティアニーが怪我をした際にはタヴァレスにプレミアリーグで先発する機会が訪れた。初戦はアストン・ヴィラ相手のもので、この試合から多くのことが分かった。
彼が才能あふれる選手だということ。タヴァレスはフィジカルは素晴らしい、前に駆け上がって、利き足でも逆足でもプレイすることができる。スタミナもあり、常に前線に上がっていく姿勢はアーセナルファンを感心させた。
彼はまだ成長途上であることもわかった。ただし、彼はまだ21歳で、この年で完ぺきな選手はほとんどいない。守備面、ビルドアップ時の落ち着き、ファイナルサードでの状況判断は改善の余地があった。
だがそれは今後成長によって解消していくものと思われたし、10月から12月にかけて好調で、ティアニー復帰後も少しの間先発を続けた。
ティアニーの帰還
アンフィールドやオールドトラフォードでスタメンを続けたタヴァレスは苦戦し、エヴァートン戦では1-0でアーセナルがリードしている状態でティアニーに代わって彼は登場したが、その後の20分で2失点を喫してしまった。
もちろんこれがタヴァレス一人のせいというわけではなく、この3試合の敗北は何人かの選手が残念なパフォーマンスを見せていた。
だが、ここでアルテタはティアニーをチームに戻さなければならないという決断を下した。その後アーセナルは12月中盤から3月末にかけて素晴らしい調子を維持するが、この間、全ての試合でティアニーが先発し、タヴァレスの出番はほとんどなかった。
続くタヴァレスの不調
タヴァレスが自信を欠いているのは明らかだったが、彼がまだ若く、異国の地でハイレベルなリーグでのプレイを始めたばかりだということを考えるとそれも理解できることだ。
1月に入ってノッティンガムフォレスト戦で出場機会を得たタヴァレスだったが、ここでも彼の不調は続き、アルテタはハーフタイムになる前に彼を下げるという決断を下した。
このような行為は選手の自信に大きく影響を与えるものだったと考えるファンもいるだろうが、実際にタヴァレスのパフォーマンスは残念だったし、恐らくこれ以上プレイさせずに選手を守るという意味合いもあったのだろう。
ただし、タヴァレスの交代によって試合展開は大きくは変わらず、結局この試合でアーセナルは1-0で敗北することになったが。
そして、その後は全く出場がない状態が続いていたが、タヴァレスは先日のクリスタル・パレス戦で約5か月ぶりにプレミアリーグで先発を果たすこととなった。
この試合、ほぼ全員の選手がショッキングなパフォーマンスを見せていたと言っていいともうが、またしてもハーフタイムで下げられたのはタヴァレスだった。
また、もう一つ留意する必要があるのは、最近の左サイドバックの役割は以前とは異なりより低い位置での守備の比重が高まっており、これはタヴァレスがあまり得意としていないところでもある。彼のベストなクオリティは前に上がっていってのプレイで、そのような事由が与えられなければ輝くことが出来ないが、今のシステムではそれは難しい。
中に入って守備を固めることが出来る冨安の様なサイドバックが居れば左サイドバックはもう少し前線に上がることが出来るだろうが、今彼はチームを離脱しており、セドリックはこのようなプレイを行わないため、タヴァレスの強みを生かすようなシステムをアーセナルは起用できなかった。これが、彼のこの試合でのパフォーマンスの悪さに繋がった。
もしかすると、ジャカをより中盤の低い位置で起用する4-2-3-1を用いていれば、状況は少し変わっていたかもしれない。
ミケル・アルテタは直ちに解決策を見つける必要がある
クリスタル・パレス戦で、タヴァレス交代後、アーセナルのパフォーマンスが改善されたのは事実だが、恐らくこれは試合展開も影響しているだろう。パレスは2-0で前に出る必要がなくなり、下がってアーセナルに対応することが出来た。
だが、ブライトン戦ではチームの中心的なMFを左サイドバックに起用し、中盤を11月以来プレミアリーグで先発がない22歳の若手に任せるという策は機能しなかった。これは驚くべき結果だったとは言えないし、ファンからも不評だった。
スタジアムでは、タッチライン際でヌノ・タヴァレスがウォームアップをしていた際に観客から『ヌノ!ヌノ!ヌノ!』と声が上がる場面があり、タヴァレスはこれに対して拍手で応えて見せた。
アルテタは今の事態に対する対応策を見つける必要がある。今のシステムは選手の強みを活かせていない。シーズン残りの8試合ではチームの勝率が最も高いシステムを起用する必要がある。このためには選手たちが、集団として、そして個人としてよいパフォーマンスを見せる必要があるが、そのためには彼らは慣れ親しんだポジションでプレイしなくてはならい。
監督、コーチ、そして我々ファンはタヴァレスをサポートしなくてはならない。彼は自信を取り戻す必要があるのだ。
もちろん、まずその一歩はアルテタがタヴァレスを信頼することで、それがなければ、もしかするとタヴァレスのアーセナルでのキャリアはこれで終わり、ということになってしまう可能性もある。
ティアニーがフルシーズンの稼働が難しいことを考えると、彼と同レベルの左サイドバックをもう一人獲得すべきだという意見もあるが、それは今シーズンが終わってから考えれば良い話だ。
アーセナルが今以上に控えの左サイドバック(そしてアーセナルはまさにその選手を夏に獲得したわけだが)を必要としているときはない。
source:
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません