今季のアーセナルの攻撃の好調を支える戦術に関する考察 後編

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繰り返し現れるパターン

以下の図は、アーセナルが3-2で勝利を収めたワトフォード戦でのマルティン・ウーデゴールの得点場面だ。

右サイドでセドリック、ウーデガールとサカの3人がトライアングルを作っていることが見て取れる。

通常であれば、このようなボール前進のためのトライアングルは一人の選手が大外で幅をとり、もう一人がより中のスペースに、そして最後の一人がその間の後ろのスペースに位置どることで生まれるものだ。

今回のウーデゴールの様な一番内側の選手は、攻撃の流動性を保つためにこのような場面ではワンタッチパスが推奨されているが、それこそまさにウーデゴールが意表を突いたヒールパスで行ったことで、これにより彼が前に向かうスペースを得ることが出来た。

そして、そのままボールはファイナルサードへ侵入し、最終的にウーデゴールにサカがカットバックを届けることに成功する。

ここで注目したいのは、アーセナルの前の5人のポジションとその役割だ。

ボールを運ぶのはサカで、チャンスがあれば中に良いボールを入れることが要求されている。ラカゼットは前に走り込むことでワトフォードのCB2人を低い位置に留めている。これにより、DFたちとMFの間のスペースが広がり、そこにウーデゴールとサカの二人がこの間に位置してカットバックを受けに行くことができた。

そして、逆サイトの大外にはマルティネッリが居て、中でボールに誰も触れず流れてきた際にはチャンスに出来るように待ち構えている。ワトフォードの選手はジャカに気をとられておりマルティネッリにはスペースがある。

ここでカギとなったのはサカとラカゼットの動きで、これが前線にウーデゴールが利用できるようなスペースを生んだ。そして、実際にボールが訪れた際にウーデゴールは冷静にこれを沈めて見せた。

マンチェスター・ユナイテッド戦でも、サイドからボールが入った際に同じようなパターンが見られていた。またしても得点者はウーデゴールだったが、今度は組み立ては左サイドから行われ、スミスロウがハーフスペースからトーマス・パーティにボールを素早く落とした。

アルテタアーセナルの攻撃時には、片方のサイドに相手のプレッシャーを集めて素早く逆サイドに展開する、という形は定番だが、これもその一つだった。

マンチェスター・ユナイテッドは中央のブロックを固めることでガナーズのボール前進を阻もうとしており、サイドは比較的空いていた。これを察知したパーティが逆サイドに完璧なスルーパスを展開する。

右ウイングの位置でマルティネッリがこのボールを受けると、彼の目の前には広いスペースが広がっており、正確にウーデゴールへとボールを届けることに成功した。

これが実は、先ほど開設した形と同じであることがわかるだろう。

ストライカーのオーバメヤンのランがマンチェスター・ユナイテッドのバックラインを押し下げ、ウーデゴールとスミスロウが入るスペースがライン間に生まれている。そして、逆サイドではタヴァレスが待っている。

そして、アーセナルはマンチェスター・シティのようなエリートチーム相手にも、この場合は相手CBを押し下げているのがラカゼットとサカの二人で、そこからサイドからボールが入った瞬間に後ろに下がってサカがボールを受けた、という若干の違いはあったものの、似た形を作ることに成功していた。

まとめ

知的なプレイで相手ボックス内に多くの選手を送り込むような動きをアーセナルは昨季から散発的に見せていたが、その頻度が今季は大きく増えており、それが以下の図に示されている。

これは、オープンプレイからのボックス内のシュート数とその際にボックス内に居た選手の人数を対比させた評だ。

アーセナルはボックス内のシュート数がかなり欧州でも上位であるだけではなく、平均して約2.6人のアタッカーをボックスに送り込んでいる。

そして、これにあたってもう一つ重要となるのが中盤のラインと最終ラインが、前線が簡単にプレスを突破されてしまうのを防ぐために出来る限り前線に近い位置を保つことだが、アーセナルではこれが上手く行われている。

ホワイト、ガブリエル、パーティといった選手たちはがこの中心となっており、相手を低く留めることに成功している。彼らは高い位置でデュエルに勝利することが出来るし、必要とあらば守備的な位置に戻ることも出来るからだ。

恐らく、アーセナルが先発をある程度固定できていることも攻撃の流動化には一役買っているだろう。選手たちはボールの位置に応じてそれぞれが何をすればよいか、味方はどこにいるのか、相手の布陣、そして自分がどのようなポジションを取ればいいかを理解できており、これがより素早いポジションチェンジやサイドチェンジに繋がり、攻撃のスピードが上がっている。

もちろん、もう改善の余地はないというわけではなく、リバプール戦で示された通り、アーセナルはいい試合を見せたものの、違いとなったのはボックス内のクオリティだった。

どのような選手がやってくるかはアーセナルが来季ELに出場するのかCLに出場するのかによっても変わってくるかもしれないが、夏にトップクラスのセンターフォワードを獲得できれば獲得により、チームは更にワンランク上に引き上げられることだろう。

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Posted by gern3137