今季のアーセナルの攻撃の好調を支える戦術に関する考察 前編
2021/22シーズン開幕の時点で、アーセナルの目標は欧州コンペティション出場権を得る事だった。これまで8位が続いていたことを考えると、ヨーロッパリーグへの出場権を得られるだけでも成功と言えたはずだが、現状アーセナルはヨーロッパリーグどころか、チャンピオンズリーグ出場も狙える位置につけている。
夏の移籍市場閉幕直後はアルテタとエドゥへの批判も見られたが、今となっては、これらの獲得が大成功だったのは明らかで、特にラムズデール、冨安、ホワイト、ウーデゴールの四人は非常に大きなインパクトを残し、寄せられた懐疑的な見方や批判にプレイで応えて見せた。
これらの夏の獲得により、アルテタは自身のポジショナルプレイを具現化するのに適したチームを手にし、ついにファンも彼の理想のチームを理解しつつある。
単調な左サイドの攻撃からの変化
守備に関しては、アルテタはアーセナル監督就任直後にDF陣がトランジション時に晒されないような仕組みを導入した。これは、ウナイ・エメリ体制や、アーセン・ベンゲル体制終盤にも見られたものだ。
これにより、アーセナルは粘り強くなったが、アーセナルのファイナルサードでのプレイには不満を抱くファンもおり、キーラン・ティアニーの左サイドの攻撃一辺倒ではないか、という声も聞かれた。
確かに当初は、右サイドに相手を呼び寄せて、そこから素早くサイドチェンジでオープンになった左サイドにボールを運び、ティアニーが外からクロスやカットバックを入れるという形が多く見られた。
これ自体は有効なチャンス創出の手段だったものの、時間が経つにつれてこれは相手チームに読まれやすくなり、効果的ではなくなっていった。
だがここでアルテタはティアニーのポジションに変更を施した。より彼を深い位置に置くことで、ビルドアップ時の貢献を増やし、かつ、ボール保持時に左ウイングのような位置で常にティアニーを起用する代わりに、場合に応じて、より遅れてティアニーをオーバーラップさせるようにしたのだ。
そして、もう一つの重要な変更点はグラニト・ジャカのポジションだ。
これまでであれば、左サイドからのボール前進はジャカ経由で行われ、彼のラインブレイキングパス能力を活用して、低い位置からボールが進められることが多かった。
だが、12月のサウサンプトン戦頃から、ジャカはより高い位置を取るようになっている。中に走り込んで、左ウイングにスペースを作るような動きも見せるようになり、実質的に左のCMFのようになっているのだ。
これにより、左サイドの選手たちのローテーションは活発化し、よりファイナルサードで相手にとって予想のつかないものとなった。
アルテタが監督初期から示してきた戦術的柔軟性と、ボックス内の人数の増加
だが、今季のアーセナルの攻撃の好調の要因はそれだけではない。
優れた監督というのは、自身の哲学を守りつつも、相手の強みを無力化できる世に自らのチームを対応させられるものだ。
アルテタは、アーセナルの監督就任初期から、チームをに修正を施し、相手を無力化する策が打てる監督であるということは示してきた。ビルドアップの形がその良い例だ。
アルテタはボール保持時のビルドアップの形を2-4-4や2-3-3-2、3-2-5というように柔軟に相手のプレスの形に応じて変えてきた。相手がどのような形でも、ボール前進を可能とするためだ。
だが、どの形でも、チームがボールをファイナルサードに運んでしまベア2-3-5の形となって前線の5レーンに位置した5人の創造力と得点力を活用する、という方針は一貫していた。
このように、5人で攻め、5人で守るという形は、攻撃を可能にするだけの人数を前に残しつつ、相手のカウンターに備えられるという意味で攻守両面でバランスが取れている。
昨季以前のアルテタアーセナルも、今季のアーセナルも、この前に5人を起用する布陣を用いるという点では変わっていないのだが、以前までのアーセナルは攻撃の最終局面がうまくいかないことが多かった。
では、今季は何が変わったのかというと、ペナルティエリアにクロスやカットバックでボールが放り込まれる際に、ボックス内に多くの選手を送り込むことが出来ているという点だ。
ではなぜ、このように多くの選手を送り込むことが可能になったのだろうか。その裏には、今季の継続して現れているいくつかのパターンがある。
(後編に続きます)
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