マンチェスター・シティ戦から分かった3つのこと
アーセナルはエミレーツスタジアムで惜しくも昨季王者のマンチェスター・シティ相手に敗れた。逆風となったいくつかの要因があったにもかかわらず、シティ相手に先制点を挙げ、アルテタのプロジェクトが実を結びつつあることを示すいくつかの兆候が見られた。
グアルディオラはメディアの前ではリップサービスを行うこともある監督だが、試合後彼はこの日のアーセナルはこの4,5,6年で最高だったと語ったし、確かに試合はそう思わせる内容だった。
トーマス・パーティの存在感
この後トーマス・パーティAFCONに出場するためガーナ代表に合流するが、このマンチェスター・シティはアーセナル移籍後最高のパフォーマンスだったと言ってもいいだろう。
ボール保持時も守備時も圧倒的な存在感を見せ、シティの中盤を寄せ付けなかった。彼はチーム最多のドリブル数を記録し、プレス耐性の強さを見せたし、これによりファイナルサードへボールを届けることが出来ていた。
全体的にマンチェスター・シティはアーセナルのインテンシティに手を焼いており、そこまで強いプレスをかけられなかったのはあるが、それでもアーセナルがより長くにわたってボールを持てる要因となったパーティの技術面の安定性も賞賛されるべきだ。
そして、シティに特に前半プレスを通じてプレッシャーをかけ続け、チーム最多の相手陣内でのボール回収(5)を記録した。前半のアーセナルのパフォーマンスはトーマス・パーティなくしては実現しなかっただろう。
ミケル・アルテタは何度か4-3-3を起用したいという考えを口にしているが、何度か試されたパーティがアンカーの形に彼は苦戦することが多かった。
しかし、マンチェスター・シティのフェルナンジーニョは28歳でシティへと移籍し、その後似た役割を果たすことを学んだことは留意する必要があるだろう。もしかすると、パーティも今似たような学習プロセスを踏んでいるところなのかもしれない。
代表での試合に出場するためパーティはしばらくチームを離脱するが、この状況をいかにクリエイティブに乗り切るか、アルテタの手腕に注目だ。
サカは正真正銘のプレミアリーグのスターである
アーセナルユース卒業生のブカヨ・サカはこの試合で素晴らしいプレイを見せた。彼はアーセナルファンがクラブの将来を信じられる理由の一つでもある。
今季序盤こそサカは昨夏の代表での出来事の影響もあってか調子を落としていたもののすぐに復調し、これで今季すでに得点アシストの合計数10を記録した。シーズンがまだ折り返し地点であることを考えるとこれは素晴らしい数字だ。
サカは既にトップクラスの右ウインガーに成長し、プレミアリーグに揃うレベルの高いDF相手にそれを示している。シティ戦ではアーセナルの選手中トップのxTの数字を記録し、ボールロストも0だった。
スタッツだけではなく、目で見てもサカの素晴らしさは明らかで、ファンを座席から立ち上がらせるようなパフォーマンスを見せた。彼がボールを持つたびにファンはサカが何かを起こしてくれるのではないかと期待していた。そして実際に彼はそれに応えた。
ブカヨ・サカはプレミアリーグでもトップクラスのタレントとして台頭しつつあるが、アーセナルがさらなる高みへと昇るためには彼とチームメイトがこの試合のようなパフォーマンスをコンスタントに見せる必要がある。
だがそれはこの若きスーパースターにとってはそこまで大きな問題ではなさそうだ。
強豪相手にも戦えることを示したアーセナル
以前にもアーセナルはマンチェスター・シティやチェルシーといったチームを打ち破ったことはあり、これはアルテタのキャリアの輝かしい一部だ。アルテタの一年目のこれらの勝利は内容というよりも結果が素晴らしく、アーセナルにFA杯優勝をもたらした。
一方で、今回の試合は結果に関わらず、ガナーズがトップレベルの相手にも互角に戦えることを示した点で、内容面が素晴らしかった。
アーセナルはマンチェスター・シティのバックラインまで相手を追いかける構えを見せ、彼らをプレスで追い込みいらだたせることに成功し、
アーセナルの得点はベン・ホワイトがアグレッシブにボールを奪い取るところから始まり、美しいプレイからティアニーがサカにボールを届けた。
こういった形の得点はアルテタのアーセナルが良く見せるものではあるが、チームがボール非保持時もコンパクトさを維持し、シティにプレッシャーをかけ続けることが出来たのは戦術的な意味での大成功だったと言えるだろう。
マルティネッリはシュートを5本記録するなどマンチェスター・シティを苦しめ続け、これらが一つも得点とならなかったのは少々アンラッキーだった。
ウーデゴールは巧みにシティのスクリーニングをかわし、ボール前進をスムーズにしていた。
チーム全体がこの試合でどのようなプレイが必要とされるかを理解し、訓練されているように見えた。もちろんこれには夏の移籍市場でアーセナルが望む選手を揃えられたのも一役買っていただろう。両利きで技術面フィジカル面共に秀でている冨安のような選手がこの試合で輝いたのがその好例だ。
まだまだビッグゲームでアーセナルは結果を出す必要はあるものの、それにはまず内容を伴わせることが重要で、今回の試合はそのファーストステップとなったと言えるだろう。
以前アルテタはリバプールには多彩な攻撃方法があり、こちらがプレスをかければファンダイクは60mのパスをサラーの足元に届け、相手をしとめることが出来るとコメントしていたが、似たようなプレイをこの試合でラムズデールとマルティネッリが見せ、チャンスにつながった。これは同時にアーセナルの攻撃のバリエーションの豊かさを示してもいる。
ガナーズはもはや深く構えて受動的に相手が先手来るのを待つ必要はないのだ。
アーセナルは自分たちのスタイルを相手に押し付けることが出来る試合の方が増えてきているし、今後も自滅さえ避けることが出来、このようなスタイルを維持できれば、今のプレミアリーグのトップ3クラブに中長期的には近いところまでたどり着けるはずだ。
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