アーセン・ヴェンゲルとアーセナルとの間の亀裂とエミレーツ帰還の可能性について
先日、映画の『アーセン・ヴェンゲル-インビンシブル』のプレミアが行われ、話題を呼んだ。最初ん断っておくが、もちろんドキュメンタリーなので、実際にアーセナルで物事がどう進展したかを知らない方はいないと思うものの、今日の記事にはこの映画のいわゆる"ネタバレ"を含んでいるかもしれない。
そのため、もしこの映画を見てから中身を知りたいという方は気を付けて欲しい。
まず第一の感想としては、既にこのころのアーセナルのストーリーを全て知り尽くしているとはいっても、再びこの時代を体験するのは素晴らしい、というものだ。
当時の映像で今まで見たことがなかったものも少しあり、このストーリーに魅惑的な背景を添えるだけではなく、映画製作会社も良い仕事をしている。
最近出版されたアーセンの自伝に関しては正直非常に落胆し、ゴーストライターが必要だったと感じた。単に文字に起こすだけではなく、きちんとした構成を提供するだけではなく、アーセンが多くを語ろうとしなかった事柄に対して突っ込んで質問できるような経験豊富なライターが。
もちろん、それでもすべてを明らかにすべきだというわけではないが、この本の中では語られないストーリーが非常に多かった。
今回の映画は一応はアーセンのアーセナルでのキャリア全体をカバーしているものの、中心的となるのは無敗優勝を達成しているシーズンで、ベルカンプ、ライト、アンリ、ヴィエラ、そしてファーガソンまでもが登場し花を添えている。
この中で特に興味深かったのが映画の終盤だ。2018年5月6日に彼が最後のエミレーツのピッチに姿を現すため待っていると、ボブ・ウィルソンが観衆に観客を促しながら紹介をし、実際に観衆はヴェンゲルを温かく迎えた。
だが、その裏側で映っていたのは、非常に居心地が悪そうなアーセン・ヴェンゲルの姿だった。彼は一週間前は誰もが批判していたのに、この日は全員が親切だったと述べている。
私は実際にこの日スタジアムに居たが、この居心地の悪さのようなものはアーセンのスピーチからは感じ取れなかった。誠意ある、温かい観客からの正しいお別れのあいさつに感じられたし、彼の達成したものに対する感謝が見えた。そしてそのスピーチを彼は以下のように結んだ。
『一つの文でこのスピーチを終えたい。I will miss you. 私の人生の本当に重要な一部になってくれてありがとう。皆ありがとう。さようなら。』
それ以来、彼は一度もエミレーツスタジアムを訪れていない。
映画は、アーセン・ヴェンゲルとアーセナルの現在の大きな亀裂を鮮明に映し出している。
恐らく、まだ彼の退団の真相、100%のストーリーは世に出ていないのだと思うが、まだこれは痛みを伴う出来事なのだろう。
ヴェンゲルは他のクラブに移籍するべきだったという旨の話もし、とはいえ多くのラブストーリーは悲しい終わりを迎えるものだ、とも述べている。
そして彼は『もう今となってはアーセナルに帰る特別な理由はないね。残っているのは純粋に感情的なものだけさ』と語った。
このコメントを聞いて、私は非常に悲しく思ったと言わざるを得ない。
まず第一に、彼が明らかにアーセナルに戻ることを望んでいないこと、そして、残りは感情的なものだと話したことだ。
だが、サッカーとは結局のところそれが全てではないだろうか?だからこそ我々は愛するのではないか?サッカーが生み出す感情、良いものも悪いものも、それがサッカーを偉大なものにしている要因の一つで、それがなければファンはそこまで気にかける事をしないだろう。
一方で、先日この映画の先行上映会に出席した現アーセナル監督のアルテタは彼自身が選手としてプレイした元監督について尋ねられ、以下のように、ヴェンゲルが何らかの形でアーセナルに携わることを要望した。
私としては、もっと彼にアーセナルと関係を持ってほしいと思っているよ。選手たちも喜ぶに違いないし、良いインスピレーションとなり、多くをもたらしてくれるはずだ。クラブにとって大きいものになるはずだ。関係者全員にとって、アーセンがもっとクラブと関わってくれることは良いことだと思う。
ヴェンゲルは明らかにFIFAで重要な役割を任されているため、アーセナルに常にコミットしてなどというのは難しいだろうが、もう少し形式的で、彼の影響がクラブであまりに大きく感じられすぎないような役割を持ってもらうことを考慮する余地はあるはずだ。
最近The Athleticでエイミー・ローレンスがアルテタに行ったインタビューで彼はクラブは選手たちがアーセナルの歴史を思いだせるようなものを練習場や施設周りに建設すべきだと主張したと話していた。
クラブのメインエントランスで最初に目に入るのは、天井まである高さの左腕を上げてほほ笑むヴェンゲルの画像だよ。この場所を作り上げた人物とハイタッチして選手が建物に入ってくるのが慣例になっているね。
ただし、アーセンが問題を抱えている相手はミケル・アルテタではないだろう。そして、選手たちでもないに違いない。より上層部だろう。
もしかすると、苦々しい思いを感じていたフロントは既にクラブを去ったかもしれないが、オーナーは変わっていないし、結局のところ彼らがヴェンゲルの退団にGOサインを出したわけだ。もちろん、同じオーナーが多くの人々が彼に新契約を与えるべきではないと考えていた時期にも契約延長をオファーしたわけでもあるが。
実際に問題がどこにあるにせよ、もしこのままこの亀裂が埋まらず、アーセン・ヴェンゲルが二度とアーセナルに足を踏み入れることがないのだとしたらそれはとんでもなく残念なことだ。
ここまで多くのものをアーセナルにもたらした人物が、アーセナルを訪れる特別な理由はない、とずっと感じ続けているのだとしたら。
このような関係性を修復するのには何が必要なのかわからないが、何らかの形で関係修復が実現してくれればと思う。
ミケル・アルテタがこの関係修復を促すようなコメントを公の場で出しているのは勇気づけられる。今のクラブのテクニカルディレクターも、監督も、アカデミー長もヴェンゲルの教え子なのだ。
彼の残したものは彼らを通して今もクラブに生き続けているのは間違いないが、心の底からアーセナルとアーセン・ヴェンゲルが非常にユニークで長期的かつ成功に満ちた関係性を再び修復できることを願っている。
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ディスカッション
コメント一覧
たしかにただいきてる訳じゃない、感情があってこそ
ベンゲルはスタンとは良好だったと
権力が強大過ぎてジョシュ辺りはやりづらかったろう、容易に想像できます
スリムになった自身の息がかかった新たな組織が落ち着いた段階、ファンとの関係が悪いなか
迎え入れる話しが出ても不思議ではないですね
アルテタにとってはおっしゃるようにあまりに一蓮托生、自身のキャリアもある訳です
歯車というのは悲しいかな勝手にまわっていくものだし、いったんはずれたあとにどのような権限を与えれるのか
アドバイザーなんかでは満足しないチャレンジを望むひとです
ジョシュの合理的傾向が強めななか
ある種のクラブとしての理想像を与える存在
お互いにバランスがとれればクラブは良い方向にむかうのではないでしょうか