徹底分析: 冨安健洋
プロフィール
冨安健洋のポジションは、ディフェンダー、以外の言葉で表現するのは難しい。彼は右利きで、右サイドバックや右ウイングバックとしてのプレイも苦にしない。だが、スリーバックの右や左のCBとしてプレイする能力もある。
上の画像のうちの、彼のヒートマップは非常に興味深く、両サイドに分かれているのは彼のユーティリティ性を示しているが、同時に前に上がって行って攻撃にかかかわる意識の高さも見て取れる。
ベルギーでプレイしていた時代は、スリーバックの一員として、ラインブレイクを行うようなファイナルサードへのプログレッシブパスが一番の強みだった。
この後彼はイタリアを経てイングランドへ、ということになるわけだが、彼は3バックの右CBとして完璧な選手だ。
ドリブルによる持ち上がり
この能力が彼をサイドバック、センターバック両方でのプレイを容易にしているとおいえるが、彼の強みの一つはボール保持時のドリブルでの持ち上がりだ。
彼は基本的にはCBとしてプレイするときはほぼ常に3バックの一角としてのプレイで、ビルドアップ時には数的有利を得ている場合が多い。つまり、冨安がボールを受けるときには時間とスペースが与えられているケースが多いということだ。
冨安はパスもうまいのだが、自分で自信をもってそのままドリブルで持ちあがることも出来る。ボールを自信をもって扱えるCBが守備陣にいるのはボール前進において非常に大きな効果がある。
このようなドリブルにより、単純にボールを前に運ぶことが出来るのはもちろん、相手は上がってきた選手に対応しなくてはいけないため、相手守備陣のほかの部分にスペースが生まれることになるからだ。
上の画像の場面がそのよい例で、ヴェローナ戦で冨安はボールをもって相手のコンパクトなブロックの手前まで運んだ。最終的には彼はファイナルサードギリギリのところにたどり着き、斜めのパスで裏のスペースにボールを届けることに成功した。
ヴェローナ守備陣は中央をコンパクトにふさいでいたのでサイドへのパスを選択したのだろう。
一方こちらはインテル戦のものだが、ボローニャがボールを最終ラインから前に運ぼうとしているところで、GKを含めてインテルの前線の2人相手に4対2が形成できている。
このため、冨安がボールを受けたときには体を開き、外に向かって2対1の形で相手のプレスを突破することが出来た。これによりボローニャは楽にミドルサードにボールを進めることが出来た。
パス
上にも述べた通り、冨安はパスもうまく、イタリアではベルギーほどの数字は残せていないものの、それでも十分に高水準で、20/21シーズンもプログレッシブパス、ファイナルサードへのパス共にかなり多い。
画像の場面は、冨安がいかにしてチームにとって効果的な存在になれるかという例だ。彼は左CBとしてボールを持っており、先ほどの場面と同じように、ボール保持者にあまりプレスはかかっていない。
このような場面で彼は中央の選手に直接ラインブレイキングパスを出すことが出来るが、時としてこのようなパスが必ずしも正しいオプションではないと認識するだけのサッカーIQの高さもも持っており、サイドに開くパスが最適だと考えそれを選択することもある。
もちろんこの状況で彼は自分でそのままボールを前に運ぶことも出来、その場合は相手選手をつり出すことができるだろう。
こちらはまたしても冨安が守備ラインを離れてドリブルでボールを運んでいる場面だが、特筆すべきは、ここで彼が自分よりも良い位置にいるチームメイトが居ると見るや、正しいウェイトと角度で彼に向けてのパスを出したという点だ。
これにより、チームは素晴らしい位置でボールを持つことが出来た。
スペースの守備
冨安は守備時に体格や力強さというよりも、スピードとアスリート力に頼るタイプのDFだ。
彼はサッカーIQが高く、集中力を切らしたり、明らかにポジショニングをミスをすることがほとんどない。体勢の移動も素早くできるため、ディフェンシブサードを広くカバーできる選手だ。
彼が様々なポジションでプレイできることを考えれば、当然と言えば当然なのだが、彼は前につり出されたり、あるいはサイドで孤立した場合、そして裏へのボールに後ろ向きで対応しなければならないような場合でも、きちんと対応することが出来る。
この画像の場面で、一枚余ったフリーマンとなっている冨安は空いているスペースを守る役割を課されている。相手がボローニャ守備陣の裏へ、冨安ともう一人のDFの間を狙ったパスを出したが、彼はきちんとそれを読み、相手のランに対応するだけではなく、ボールの奪取に成功した。
こちらの場面では、ボローニャの守備陣は守備ラインを一本のパスで突破されようとしているが、またしても冨安は誰よりも早くこれに反応し、このパスが決定機に繋がるのを防いだ。
ブロックでの守備
また、冨安はコンパクトなブロックを構築して、自分の前にあるスペースを守るのは非常に得意だ。
どちらかというと向かってくるストライカーに対処するというよりもフリーのディフェンダーとして輝くタイプではあるものの、彼は試合の読みも良く、相手の動きを予想して自陣のギャップを埋めることも出来る。
冨安は相手のボールを保持している選手と1対1になっているが、彼はこの直前にチームメイトに向かって腕を振り、チームメイトに相手の中央のストライカー、そしてサイドに選手が走っているという危険を知らせていた。
彼のこのような場面での体の向きはもう少し横向きであるべきにも思えるが、彼は外に向かっても中に向かっても守れる選手で、動きも滑らかなのでこの体勢でも対応可能だ。
最終的に相手は中にボールを通そうとし、冨安はそれをブロックすることに成功した。
こちらでは、インテルが右サイドから攻撃を仕掛けている。サイドの選手にボールが渡り、ボローニャのウイングバックはボールを持った選手の相手をしなくてはならない。
これによりもう一人のインテルのFWがフリーとなる形となったが、これを予期した冨安は外にシフトし効果的にボールにチャレンジし、奪取に成功した。
まとめ
冨安健洋は5大リーグでも指折りのモダンなDFだといえるだろう。彼のユーティリティ性とアスリート力があり、ボール保持時の能力も高い。
彼がイタリアを出て次なるステップへ進もうとしているのは驚きではなければ、今季もし彼が大絶賛を受けることになったとしても、まったく驚きではないだろう。
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