スタッツで見るルーベン・ネヴェスとグラニト・ジャカ

スタッツ・戦術

一時はアーセナル移籍秒読みか!?という勢いだったルーベン・ネヴェスの獲得だが、最近は状況は少し落ち着いている。恐らく、アーセナルはネヴェスのことをジャカの代役として見ており、ジャカのローマ移籍が決まるまでは、次の一歩を踏み出せない、という状況なのだろう。

ただし、最近イタリア方面からアーセナルは20m€というジャカの移籍金の要求額をローマ側のオファーに近づける形で妥協しようとしている、という話もあり、こちらは近いうちに決まってしまうかもしれない。

そうなれば、アーセナルもネヴェスにせよ、他の誰かにせよ、ジャカの代役獲得に向けて本格的に動き出すことだろう。

今回は、ルーベン・ネヴェスはジャカの代役として適した選手なのか、プレミアリーグでのスタッツをジャカと比較しながら見ていきたいと思う。

(記事中のスタッツは特にソースの言及がないものは全てFBref経由で提供されているスタッツボムのもの)

基本プロフィール

まずピッチ上でのプレイのデータを見る前に、より基本的なプロフィールを見ていこう。

ジャカ:
29歳
スイス代表
残り契約2年
身長185cm
利き足: 左
Transfermarkt上の市場価値: 22m€

ネヴェス:
24歳
ポルトガル代表
残り契約2年
身長183cm(Wikipediaでは183cmとなっているがTransfermarktでは180cmとなっている)
利き足: 右
Transfermarkt上の市場価値: 45m€

二人とも欧州圏の選手であり、かつホームグロウンではないので、HG枠やユーロに関しての有利不利などはない。今回のユーロでもネヴェスもジャカも代表入りしている。

最も大きな違いは利き足で、恐らくジャカの代役として獲得するのであれば左CMFとしてのプレイを想定しているはずだが、もしこのポジションがネヴェスになった場合は、左側から左足でボールを供給する役割は一列後ろのガブリエルあるいはマリが担うのだろうか。

とはいえ、ネヴェスは左CMFとしても問題なくプレイは出来るはずだ。

また、このあと見るスタッツにも表れているが、ジャカは中盤の選手としてはそれなりに空中戦に強いが、ネヴェスは身長がジャカより低いこともあって、この分野におけるアドバンテージはない。

2人とも同じく残り契約が二年となっているので、arseblog氏も指摘している通り、移籍金の差は年齢と興味を示しているクラブの差だろう。ただ、Transfermarkt算出の市場価値を見るに、もし報道通り35m程度で獲得できるのであれば、むしろ少し安いくらいだと言えるようだ。

攻撃面

ジャカ

https://fbref.com/en/players/e61b8aee/Granit-Xhaka

ネヴェス

https://fbref.com/en/players/44bfb6c5/Ruben-Neves

やはり、まず最も目立つのはシュート数の違いだろう。最近のジャカはそこまでシュートを打たないが、ネヴェスはこのポジションの選手としては非常に積極的だ。平均して一試合に2本以上のシュートを打っている。

アーセナルの選手でいうと、オーバメヤンが90分当たり2.16本なので似た水準で、ラカゼットが2.01なので、アーセナル基準で言えばストライカー並みにシュートを打っていることになる。

ただし、ネヴェスの枠内シュート率は21%とそこまで高くない(ちなみにパーティは15.4%、ウィリアンはさらに低い15%となっている。アーセナルで21%に近い数字なのはエルネニー、ティアニー、ウーデゴールあたりだ)のでシュートを多く打つこと自体がどれほど効果的か、というのは議論の余地はあるが、それでもプレミアリーグで昨季は5点決めているのは中盤からの得点が喉から手が出る程欲しいアーセナルにとっては総合的に見てポジティブな要素ではないだろうか。

また、そこまで大きな差ではないもののアシスト期待値は若干ネヴェスの方が高く、ボックス内でのタッチ数も同様だ。大した差ではないが、ジャカと比べると若干ボックス内での仕事も出来るタイプ、という見方は出来るかもしれない。

一方で、全体のパス数や成功率で言うとジャカの方が大きくネヴェスを上回っており、ボールを失わない安定感という意味ではジャカに一日の長がありそうだ。

パスの長さごとの本数でいうと、ジャカが短:中:長の割合が約700:900:300本ずつという感じなのに対して、ネヴェスは400:800:400くらいなので、ショートパスの本数が明らかにジャカと比べて少ない。

本数自体はチームごとのスタイルの違いがあるので一概には言えないが、ショートパス成功"率"がジャカの91.5%に対してネヴェスは88%とそこまで高くないのが若干気になるところだろうか。

また、FBrefの分類だと0-15ヤード、15-30ヤード、30ヤード以上、というくくりなので表れていないが、同じ中距離に分類されるパスの中でも、Smarterscoutのデータでは20m以上のパスがネヴェスの方がジャカよりもかなり多い。

もう一つしいて言うのであれば、中長距離のパスが多いわりにプログレッシブパスの数がジャカに1本近く水をあけられているのが懸念と言えば懸念だろうか。ただしこれも自チームがボールを保持する場面が増えれば本数もある程度は増えるだろうが。(昨季のアーセナルの平均ボール保持率は53.8%に対してウルブズは49.3%だった)

守備面

ジャカ:

https://fbref.com/en/players/e61b8aee/Granit-Xhaka

ネヴェス:

https://fbref.com/en/players/44bfb6c5/Ruben-Neves

守備面では、上で述べた通り、空中戦の強さという意味ではネヴェスはジャカには及ばず、あまり貢献は期待できないものの、タックル、インターセプト、プレス、ブロックでは大きくネヴェスが上回っており、よりボールを奪う上で積極的な守備が期待できる。

もちろん、何度も言っている通り、ウルブズの方が守備機会が多い、という事はあるはずなので絶対値で見る際にはその点を割り引いて考えなくてはならないが、タックル成功率はジャカ64%に対してネヴェス73%、プレス成功率(プレスをかけてから5秒以内にボール奪取に繋がった%)もジャカの28%に対してネヴェスは33%と上回っており、単にいたずらに企図回数が多いという理由でタックル数やプレスの数が多いというわけではない。

ただし、相手のドリブル突破に対してジャカは51%ストップしているのに対し、ネヴェスは39%しか止められておらず、ドリブル突破されてしまう回数はジャカよりもはるかに多い(ジャカは90分当たり1.1に対してネヴェスは1.9)。やはりどちらかというと安全志向というより積極的にボール奪取を狙いに行っているようだ。

とはいえその結果として、90分当たりのタックル+インターセプト数、ブロック数共にネヴェスはジャカを大きく上回っており、昨季のアーセナルトップの数字を記録したトーマス・パーティよりもさらに上だ。

まとめ

もともとネヴェスとジャカはスタイル的には似た選手のはずだが、スタッツを見る限り、攻守ともにより安全志向なのがジャカで、積極的なタイプがネヴェス、という違いが表れているように思う。

もしアーセナルに移籍したとして、より細かくパスを繋いでいくスタイルのチームでどのようなプレイを見せるかは興味深い所だ。また、守備面のスタッツはどちらかというとジャカよりもむしろパーティに近いものがあるため、パーティあるいはネヴェス+より攻撃的なMFという起用法もありかもしれない。

総合的に見て、今後の成長のポテンシャルも考えると、ジャカに差し引き20m€程度上乗せすることでより若く、積極的な守備が期待できる選手を獲得できるのであれば、これは悪くない取引になるのではないだろうか。

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Posted by gern3137