ブエンディアがアーセナルにもたらせるもの
2018年の6月、ノリッジ・シティはヘタフェから当時は無名だったアルゼンチン人MF、21歳のエミリアーノ・ブエンディアという選手の獲得を発表した。
前年ブエンディアはスペイン2部にローンに出て過ごしており、技術面では秀でているものの体の小さい子の若者が、フィジカルが必要なイングランドで活躍できるかについては疑問の声が上がっていた。
だが、その問いにすぐにブエンディアは自分で答えを出す。シーズン序盤のブレントフォード相手の試合でCBからのロングボールを受けると、電撃のような動きでDFの前に抜け出すと、ボールをコントロールしてゴールに流し込んで見せたのだ。
このシーズンブエンディアは8ゴール12アシストを挙げ、ノリッジをプレミアリーグ昇格へと導いた。
この得点は常にダイレクトなプレイを心掛けるブエンディアを象徴するような場面で、そしてこれこそまさに今のアーセナルが必要としているものだ。
中央でプレイでき、ダイレクトで勇敢。プレッシャーのかかる状態でも高い技術を活かして戦う事の出来る能力。彼はノリッジファンのお気に入りで、20/21シーズンEFL最優秀選手に投票されたのも驚きではない。
この3年で彼は素晴らしい活躍を見せており、才能あふれるフットボーラーだ。
CBSのジェームズ・ベンジがアーセナルを含む複数クラブがブエンディア獲得を狙っていると報じているが、もし本当にアーセナルに彼が移籍してくるとしたら、どのような役割を担うことになるだろうか?
今季のアーセナルはずっとダイナミズムと力強さを欠いている。まるで動画を0.75倍速で見ているように見える時もあり、チャンス創出の多くはサイドから行われる。
だが、不動の右サイドバックの不在とティアニーの怪我時の代役がいないこともあり、しばしばアーセナルの攻撃を気迫を欠く。
スミスロウとウーデゴールがチームに台頭しアーセナルの攻撃は息を吹き返したが、ブエンディアこそまさにより安定してチームにバランスをもたらせる存在かもしれない。
彼は右のハーフスペースでのプレイを得意としており、サイドから中に流れ込む形でタイトなスペースでプレイするのが非常にうまい。
ボールを保持してもローブロックを敷いた相手を崩せないことが多いアーセナルにはうってつけの選手だ。
ブエンディアはハーフターンでプレイすることを苦にせず、そこからトレードマークの素晴らしいパスを中央に入れることが出来る。
このスキルにより、チームを守備から攻撃に切り替えるのに時間が減り、スピーディー名アタッカーを揃えるアーセナルにとって、彼は素晴らしいチャンスの供給源となるだろう。
今季のブエンディアのパスのうち33%は前へのもので、U字型のパスがアーセナルの治療薬となってくれるだろう。彼は今季122本のキーパスというとんでもない数字を残しており、これは2位のコナー・ロバーツよりなんと39本も多い。
ブエンディアは右利きだが左足を使うのも上手く、両足でサイドチェンジを行うことが出来る。彼のあこがれの選手はロナウジーニョで、フィジカルに優れた相手のタックルをかわしながらボールを運ぶことが出来、ボックス付近での創造性も素晴らしい。
性格的にもブエンディはポジティブで情熱的で、チーム内でも人気の選手のようだ。すでに息子もいて、彼は落ち着いているし、英語力も素晴らしい。
アーセナルでの起用方法としては、ミケル・アルテタにはいくつかオプションがある。4-2-3-1を用いるのか、それとも4-3-3を用いるのか次第だが、前者なら右のMFとして、4-3-3なら右ウイングとしてあるいはスミスロウと並んだ右側のCMFとしての起用もありうるだろう。
彼の戦術面での柔軟性はアルテタにとって魅力出来であるに違いなく、ブエンディアは試合中のポジション変更にも適応して見せるだろう。
また、ビジネスの目線で見ても、彼の獲得が素晴らしいものになることは間違いない。まだ24歳でこれからピークを迎える選手であり、アーセナルの若返りも一役買うだろう。
現在の週給は2万ポンドと非常に安く、万一エミレーツスタジアムで結果を残せなかったとしても、再売却時の移籍金は見込める。
もちろん、彼がプレミアリーグでどこまでやれるのか、というのに若干の懸念はある。ノリッジで彼がプレミアリーグでプレイしたのは1年だけで、この年は1ゴール7アシスト追いう結果だった。
だが、19/20シーズンのノリッジは結果的に降格する出来だったにもかかわらず、彼はマディソンやマフレズ、フェルナンデスやグリーリッシュらとあまり変わらない攻撃面のスタッツを残していた。
チャンピオンシップでは今季ブエンディアは18/19シーズンの数字を超える15ゴール17アシストという記録を残し、これはMFとしてはとんでもないものだ。
今後の成長の余地もあるし、彼がよりボールを保持し、高い位置でプレイすることが多いチームでプレイすれば、プレミアリーグでもトップクラスの成績をすぐに残せるようになるに違いない。
アーセナルはノリッジのサイドバックのマックス・アーロンズにも興味を持っているようだが、ブエンディアは彼の最高の連携相手となるはずだ。
だがもちろんブエンディアの移籍金は安くはないだろう。プレミアリーグ昇格を果たしたノリッジは金銭面でブエンディアをすぐに売らなくてはならないというわけではない。さらに、つい最近彼はアルゼンチン代表デビューも果たしている。
恐らく、アーセナルがブエンディア獲得に動くかは、ウーデゴールをどうするか次第だろう。もしレアルマドリードが強気な姿勢を貫いてくるのであれば、ブエンディアはウーデゴールの最高の代役になってくれるはずだ。
私個人としては、むしろウーデゴールよりも良いオプションであるように思う。どちらかというとウーデゴールは試合の流れに左右されがちなタイプだが、ブエンディアは自力で局面を打開できるような選手だ。
もしかすると、アルゼンチン代表のもう一人のエミが古巣の良い評判を彼の耳にささやいてくれるかもしれない。
ブエンディアがいればすべて解決というわけではないだろうが、アーセナルの停滞した攻撃を活性化し、攻撃陣を今後何年もさせ続けてくれるような選手であることは間違いない。
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