【戦術コラム】シェフィールド・U戦のジャカの左サイドバック起用を徹底解説
ついにアーセナルが日曜夜の試合で勝利した!
重要なELの2試合に挟まれたリーグ最下位の相手との試合ということで、そこまで興味深いものにならないのではないかと予期されていたが、戦術的にこれまでにないアプローチをアーセナルが獲ったことでなかなか面白いものになった。
グラニト・ジャカが左サイドバックとして先発したわけだが、実際のところ任せらたタスクは中盤の時とそこまで大きく変わらなかった。
今まではティアニーが駆け上がった際にその後ろの左サイドバックのポジションに落ちる、という流れだったが、今回の試合ではジャカは最初からこのポジションを取り、そして、そこから大きく動く必要がなかった。
これまでの他の試合と比較するために、ジャカのヒートマップを見てみよう。以下がそれぞれスパーズ・ニューカッスル・レスター相手に中盤でプレイした際のジャカのヒートマップだ。
そして、こちらが日曜日のシェフィールド戦のジャカのヒートマップだ。
ボール保持時の彼のプレイエリアは中盤でプレイしていた時とあまり変わっていないというのが見て取れると思う。
中盤にいたとは言えないが、サイドライン際にいたり、あるいは本職の左サイドバックが良く行うようにハーフラインを越えてオーバーラップしたりというわけでもなかった。
過去には、アーセナルの5人は後ろ、5人は前というビルドアップの形について少し触れたが、今回もそれは同じだった。右側でボールを持った時には、アーセナルは以下のような布陣をとった。
そして、左側に展開する際には、セバージョスがサイドに開き、セバージョスが元居た位置に向かってラカゼットが下りるような形だった。
実際のところ、アーセナルのボール保持時の形はティアニーの場所がセバージョスと入れ替わっているという点を除けばジャカを中盤に置いて左サイドバックにティアニー、という形と非常によく似ていた。
これが単純にティアニー不在時の苦肉の策なのか、あるいはシェフィールド対策だったのかは興味深い所だが、恐らくこの両方の要素があっただろう。
シェフィールド・ユナイテッドは3バックに3人のCMF、そこに加えてツートップという形で、中央に配置された選手の数が非常に多い。
まず第一に、このせいで相手には右ウイングが居なかった。したがってシェフィールドが右サイドからドリブル突破を図る、といったことはないので、俊敏性があまりないジャカを左サイドバックに置いてもそこを突かれることはなかった。
アルテタはこの試合では不安はないと考えただろうが、他の相手に対してどう感じるかはまだ不透明だ。
第二に、相手がこのように中央を埋めてきた場合、対策としては空いているサイドで数的優位を作るか、あるいは相手選手をサイドにつり出したうえで中央を活用するかのどちらかになる。
恐らくこれでアーセナルの普段とは違う布陣の説明がつくだろう。この試合でジャカとチェンバースが非常に多いボールタッチを記録し、サイドを最大限活用しようという意図が見えた。
セバージョスが左に出ていきラカゼットが後ろに落ちることで、パーティと右よりのトップ下だったサカとのトライアングルを形成していた。
これが相手のプレス回避に効果的だった。
中央から出ていくセバージョスに誰かついていくべきか?
もしついていけばラカゼットはフリーになる。CBがラカゼットについていけば、当初の戦略である5バックでスペースを埋める作戦は使えない。裏に走りこむペペやマルティネッリに対して脆弱となる。
また、それと同時にアーセナルはウイングに非常に高く開いた位置をとらせることで相手を押し込み、シェフィールドが押し上げてアーセナルのビルドアップを阻害することを許さなかった。
シェフィールドはセバージョスとチェンバースについていけばいつも通りの5バックのファイナルサードを封じる戦術が通用しなくなり、かといってMFがそちらに対応すれば今度はアーセナルは中央で優位を得ることが出来るようになる。
そして、相手の中盤の幅が非常に狭かったことで、マルティネッリとセバージョスが継続してオーバーロードを作り出せていた。
もちろん、対戦相手のクオリティのことは割り引いて考える必要があるが、それでもアーセナルが試合を支配し、勝利を収めるのを見るのは良いものだ。
アルテタにとっても、今後継続するかはわからないものの、左サイドバック問題の解決策の一つを提示できたのは嬉しいことだろう。
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