SwissRamble氏によるアーセナルの財務分析 2021

分析財務

先日アーセナルの年間のFinancial Results(19/20シーズンのものですね)が発表されましたが、それに関する分析を皆さんおなじみSwissRamble氏がツイッター上で行っていましたので、その内容を紹介したいと思います。

収益と経費(≒支出のようなもの)

・収益の総額: 343m£(前年度の395m£から約50m£減少)
・経費の総額: 302m£(前年度の317m£から15m£減少)
・これらに加えて移籍金償却費、利息の支払い、税引きなどを加えた総計: 48m£の赤字

昨年度から新しいスポンサー契約がいくつか始まり、商業収入は増加している。(111m£→142m£と31mポンドの増加)

だが、ヨーロッパ中のクラブと同じようにCOVID-19のパンデミックの影響を受け収益が大幅に減少。放映権料は183m£から119m£と64m£(35%)減少し、マッチデー収入も無観客試合の影響で17m£(18%)減少した。

アーセナルの給与は7m£、移籍金償却費は年間換算で22m£増加しており、ここにエメリ解任のコストだと思われる臨時支出4mの増加(6m£→10m£)も加わった。

その他の部分で8m£支出を抑えることには成功したが、結果的に移籍金償却費に利息の支払い、税金などもすべて合計すると前年度の27m£の赤字に引き続いて、19/20シーズンも48m£の赤字となった。

コロナの影響と選手売却益

税引き前で54m£の赤字というのは確かに悪い数字だが、ただし、新型コロナウイルスのパンデミックはヨーロッパ中のクラブの経営に悪影響を与えている。

アーセナルはコロナがなければ54m£程度収益は多かったはずで、赤字額も19m£に収まっていたはずだった。

また、プレミアリーグ内であればエヴァートンの140m£、セインツの76m£、ブライトンの67m£、国外であればローマの179mポンドやACミランの171m£、インテルの90m£にバルサの85m£やユベントスの79mポンドなど、アーセナルの税引き後48m£を大きく超える額の赤字をそれぞれ計上している

アーセナルの損失がそこまででもないのは選手売却によって助かっている所もあり、前年度が12m£だったのと比べて、昨季はビエリクとイウォビの売却により、断トツで選手売却益がリーグ一位(143m£)のチェルシーに次いで2位の数字(60m£)となっている。

他クラブと比較して

アーセナルはピーク時の2017年と比べて79m£収益が減少しており、3年で-79m£というのは、国内のビッグ6の中では最悪の減少幅となっており、3年前と比べてそもそも収益が減少しているクラブはアーセナル以外にマンチェスター・ユナイテッドのみとなっている。

パンデミックの影響下にありながらも、3年というスパンで見ればリバプールの126m£やトッテナムの86m£など順調に収益を伸ばしているクラブも国内には多い。

収益が343m£というのは国内では6位の数字で、7位のエヴァートン(186m£)とはまだ差があるが、過去二年間はトッテナムを下回っている(昨季のトッテナムの収益は392m£)し、それだけではなく、トッテナムにはマッチデー収入、放映権料、商業収入全ての点で上回られている。

デロイトが発表しているヨーロッパサッカークラブ長者番付では11位のままだが、10位のユベントスとは9m£と少しの差しかない。

だが、アーセナルは2011年には欧州5位だったにもかかわらず、現在は11位と下降傾向をたどっている。

懸念点

アーセナルは二年連続で、合計86m£の損失を計上した。54m£の赤字というのはプレミアリーグの歴代クラブのランキングでも21位とかなり高い水準で、マッチデー収入がほぼゼロとなる今季はさらに悪い数字となるだろう。

公式発表でもあった通り、選手売却は収益捻出の一つの手だが、今期に関してはエミ・マルティネスの売却以外に目立ったものはなかった。

サッカークラブというのは営業利益を挙げるクラブは数少ないが、それでも昨季のアーセナルの営業損益99m£というのはリーグワースト三位だ。

チェルシーのように、これを選手売却でカバーできるのでないのであれば、この状況が続くようだと大きな懸念だ。

また、ヨーロッパコンペティションから得た収益もアーセナルはこの5年で214m£とビッグ6中最低となっているし、アーセナルはマッチデー収入の割合が大きいので、相対的に無観客試合の影響が非常に大きい。

また、商業収入はアディダスとエミレーツ航空との新契約のおかげで改善されたとはいえやはりまだリーグ6位だし、給与カットのおかげで隠れているが、実際にはアーセナルの給与額はこの3年間で26m£上昇している。

ただし、これでもトッテナムを除いた他の4クラブと比べればかなり安いので、ポジションに見合った額とは言えるかもしれない。

負債とオーナーの手助け?

他のビッグクラブのオーナーとは違い、基本的にはアーセナルへの援助などを何も行ってこなかったオーナーのスタン・クロエンケだが、昨季ついに160m£の借り換えを行い(代わりに返済したわけではない)、これによりアーセナルは本来担保的に口座に取っておかなくてはならなかった27m£が自由に使えるようになった。

また、トッテナムと同じようにアーセナルも120m£の短期融資を政府から受け、今年の5月に返済予定となっている。

他のクラブと同じように、アーセナルの選手獲得も借り入れによって行われており(後払い/分割払いということ)、選手獲得の移籍金分のアーセナルの負債は77m£から154m£へと急上昇している。これは、リバプールに次いでリーグ第二位の高さだ。

他のクラブから受けてとれる支払いが47m£あるので、差し引き107m£となっており、アーセナルは主に今後の2年間でこれらを支払う必要がある。

COVIDの影響を受けたその他の多くのサッカークラブと同じように、アーセナルの2019/20シーズンのファイナンシャルリザルトは明らかに良くないものだった。

クラブも声明で"財政面で難しい状況が続いている"とそれを認めている。

これまでのアーセナルの自立経営モデルは、基本的にチャンピオンズリーグの出場権に依存していた。来季アーセナルがCL出場権を獲得できる可能性はかなり低く、今後も何らかの形でのオーナーからのサポートが必要になるかもしれない。

source/参考:

(EBITDAやキャッシュフローの話などもありましたので、もし興味のある方はぜひSwissRambleさんのツイートをご覧ください。)

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Posted by gern3137