【戦術コラム】アーセナルはいかにしてトッテナムを打ち破ったか
週末の試合でラメラの素晴らしい先制弾(その後彼はイエローカードをもらって退場するという非常に興味深い位置に血を送った)をウーデゴールとラカゼットのゴールが打ち消し、アーセナルが勝利を収めた。
試合の大部分を通してアーセナルはコントロールを握っていたし、勝利に値するパフォーマンスを見せたといってよいだろう。今回はこの試合のアーセナルの戦略と戦術を分析していこう。
先発メンバー
アーセナルは4-2-3-1で、レノの前にティアニー・ガブリエル・ルイス・セドリックという4バックで、ジャカとトーマスのダブルボランチ、スミスロウ・ウーデゴール・サカの2列目にラカゼットのワントップという布陣だった。
遅刻のせいでオーバメヤンは先発メンバーを外れた。
トッテナムも同じく4-2-3-1で上図のような布陣だった。
アルテタはボールを支配することで試合のコントロールを握ろうと画策した。モウリーニョは異なったやり方で試合をコントロールしようとし、前回の試合と同じようにカウンターを狙い、アーセナルにボールを持たせながらも主導権は渡さない、という狙いだったはずだ。
モウリーニョは中央を固め、アーセナルのサイドバックに低い位置でボールを持たせて攻撃を無効化するつもりだったのだろう。だが、これはうまく行かず、実際にはアーセナルはサイドバックが高い位置でボールを持てる王なオーバーロードと構造を作り出すのに成功し、何度も危険な場面を作れていた。
5レーン
アルテタが言っていた通り、アーセナルはトップ下を二人起用したような形だった。このような形は通常はむしろトップ下というよりCMFで行われることが多いが、現在のチームではアルテタはスミス=ロウを左のハーフスペースに、ウーデゴールを右のハーフスペースに配置するような形を好む。
これにより、二人共が中に向かっていく際に利き足でプレイできる。さらに、二人が中に入っていくことでサイドバックが外から上がっていくのは容易になるし、中で数的優位が作りやすい状況はカウンターに備えるという意味でもアドバンテージになる。
特にこの試合ではこれが鍵となり、前回の試合でパーティが居ないスペースをスパーズが蹂躙したのとは対照的だった。
アーセナルは5つのチャンネル間でのボール回しがこの試合で素晴らしく、これによりトッテナムのウイングの裏側のスペースを活用できていた。
特にこれが顕著だったのがベイルのサイド、アーセナルにとっての左サイドで、アーセナルが後ろからのビルドアップでスパーズの選手たちを前におびき寄せることが出来た際にその効果はさらに増幅されていた。
プレスをかける際にベイルはティアニーとガブリエルの間の位置をとっており、ガブリエルからティアニーへのパスを遮断するのが狙いだったと思うが、そのためにはより前に出なくてはならず、その後ろにスペースを空けてしまっていた。
アーセナルの横幅
既に述べた通り、アーセナルはスパーズの中盤と最終ラインのライン間に侵入し、ドハーティとの1対1を作り出せていた。
そこからアーセナルはクロスを上げることも出来たし、更に裏へのパスを狙うことも出来た。ウルブズ戦ではドハーティは素晴らしいプレイを見せていたが、これは中央に追加でもう一枚裏をカバーできるCBがいたからだ。
だが4バックだとこのような選手は配置できない。スパーズのCMF(主にホイビュア)はこれらのスペースへの走り込みをケアしようと奮闘してはいたが、このような形だと人につくことになってしまうため、アーセナルの選手たちが素早くポジションチェンジを行った際には対応できていなかった。
ポジションだけではなく、素早くボールがサイドに展開され、スパーズの中盤を斜めに切断するようなボールが非常に効果的だった。結果としてホイビュアとエンドンべレがカバーしなくてはならないエリアがあまりに広すぎることになってしまったからだ。
アーセナルの攻撃の41%は左から、42%は右から行われた。特に成功したのが左からの攻撃で、それがスミス=ロウのキーパス4、アシスト期待値0.36という数字に象徴されている。
また、彼のxGビルドアップへの貢献も0.4非常に高い数字だった。(これを上回ったのはティアニーの0.47、トーマスの0.49、ウーデゴールの0.64の3人だ)
ウーデゴールもこの試合では右のハーフスペースで非常に大きなインパクトを残し、ファイナルサード内で37ものボールタッチを記録した。
プレス
今回の試合の守備で特筆すべき点はアーセナルの2人のCBがハリー・ケインを静かに抑え込んだことだろう。特にケインが後ろに降りていったときにアーセナルのCBはアグレッシブに対応し、非常に効果的だった。
彼らは高い位置からプレスをかけ、トッテナムに前にボールを展開する時間とスペースを与えなかった。
前半のアーセナルは素晴らしくスパーズは無理やりケインにボールを送るしかなかったので、これはアーセナルにとってボールの方向を予測して対応するのが楽だった。
ここでも同じく5レーンの配置が活き、ピッチ上を広くカバーし、ターゲットとなるスパーズの選手を見つけてミスを誘うことが出来ていた。
またアーセナルのプレス回避という意味では、先ほども述べた通りベイルの位置取りがあまり効果的とは言えず、ビルドアップ時にルイスがフリーになって、ベイルの裏側でティアニーがドハーティと一対一になるようなボールを出すことが出来た。
正直な所、この戦術はそこまで予測が難しいものではないので、モウリーニョがこれを予測して対応してこなかった、あるいは試合中に何らかの対策を施してこなかったのは驚きだった。
スパーズの2人のFWはどちらかというとジャカとパーティへのボールを止めることに注力しており、ルイスが自由にプレイできており、アーセナルのゲームプラン通りとなった。この試合で彼はファイナルサードへのパスを9回、プログレッシブパスを3回企図している。
キープレイヤー
既に言及した以外の選手で言うと、セドリックとパーティのパフォーマンスも非常に良かった。パーティは相手の攻撃を遮断しボール回収を行い、アーセナルのプレス網の後ろで控えてカバーと深さを提供した。
また、ボール保持時もジャカとの相性は良く、空中戦でも強さを見せ、CBの前のエリアをよく守った。
彼のボール配給は効果的で、62本のパスのうち成功率は82.9%、6本のプログレッシブパスに成功、2本のキーパスも記録した。
守備面でも3タックル1インターセプト、7度のボール回収(このうちの6度は高い位置だった)を行った。
セドリックはボール回収8、タックル2、インターセプト1という数字で、ボール保持時には4本のプログレッシブパスと1本のボックスへのパスを記録し、5度クロスを上げた。
総括
まとめると、アーセナルは今回のダービーでトッテナムを圧倒したといっていいだろう。
最近のアーセナルは自分たちの足元に銃口を向け続けてきたが、そんな中たまにはチームが戦術面で素晴らしく、戦う準備が出来たメンタリティで試合に臨むのを見るのは良いものだ。
また、ラメラとは違い、アーセナルの選手たちがプレッシャーにのまれず、愚かなタックルを連発したりしなかったのも良かった。
この試合は、アーセナルがスミス=ロウとウーデゴール2人の良さを消すことなく同時に起用できるという良いデモンストレーションになったと思う。
さらに、パーティも今のアーセナルの中盤の他の選手にはないものをもたらせるという事を示した。
試合のコントロールとチャンスの創出の多さが今回の試合の大きな収穫だろう。
この好調が出来るだけ長く続くことを願いつつ、ここからアーセナルが順位表の上のチームをどこまで追い上げられるか見てみよう。まずは木曜日のオリンピアコス戦だ!
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