【戦術コラム】マンチェスター・シティ戦で機能したこと、機能しなかったこと 前編
失点とその後の調整
マンチェスター・シティはただでさえ勝利に助けを必要としないチームなのに、開始から90秒で失点するなど自分で自分の足を撃つようなものだ。
この時点で既にティアニーはデブライネあるいはシウヴァのポジショニングに惑わされ、シティは簡単にマフレズにボールを通すことが出来ていた。試合開始直後の一本目は事なきを得たが、シティは二度目のチャンスを見逃してはくれなかった。
再び外に張り出したマフレズに対して、デブライネがティアニーを中に止め、ロングパスを受け取ったマフレズがまたしても中にクロスを入れ、今度はスターリングがそれを決めて見せたのだ。
シティが一点リードし、彼らは更なる得点の匂いをかぎ取っていた。5分の時点でも同じようなデブライネとマフレズのポジションチェンジからティアニーは同じような問題に直面し、今度はデブライネがスターリングにパスを通した。この時点ではガナーズの大量失点もありうるかに見えた。
だが、ここからアーセナルはこれに知的に対応することに成功した。
ジャカがティアニーの前のエリアのカバーの責任を持つようになったのだ。CMFが左サイドバックの前のスペースに位置するというのは普通のことではないが、シティの攻撃がユニークだったせいで、ユニークな解決策が必要になった。
うまくいったカンセロ対策とマンツーマンのアプローチ
10分以降はジャカが常に後ろをチェックしながら、ティアニーが決断を迫られる状況に陥らないようチェックしつつ、かつシティのキープレイヤーとなっているカンセロにずっとついて行くというタスクをサカがこなせるようにしていた。
彼は中盤に入ってパスとドリブルで多くのチームを苦しませていたが、アーセナルはこれに良く対応し、グアルディオラはフラストレーションをためていた。
カンセロがボックス内にパスを一本も出せなかったのは今季この試合でたった2試合目だった。タッチ数も先発した試合では3番目に少なかった。
試合後グアルディオラはアーセナルのマンマークのアプローチがシティにいつものやり方でプレイすることを許さなかった、とコメントしていたが、間違いなく彼が意味していたのはカンセロのことだろう。
もちろんシティの柔軟なローテーションとボール保持時の選手の質を生かした攻撃はカンセロを抑えていても効果的で、アーセナルはバラバラにされないようにハードワークを行う必要はあったが、10分以降は試合序盤に最も脅威となったシティの攻撃の形は封じることに成功した。
その他のシティの攻撃ルートへの対応
アーセナルはシティの以心伝心の電撃のような攻撃に引き裂かれないよう十分にコミュニケーションをとりながら、マンツーマンのアプローチでお互いの役割をカバーしあった。ヨーロッパ有数の攻撃相手に良く対処したといえるだろう。
特にシティは深い位置からのCBとサイドバックの間を突いたランを狙っていたが、ティアニーに常にサポートがつく用意した修正はうまく行った。
シティがこの試合で記録したプログレッシブパスの本数は今季プレミアリーグで最も少なかった。
だがシティももちろんそれを黙ってみていたわけではなく、それに対してはジョン・ストーンズが前に上がって右サイドで更なるオーバーロードを作り出せる形を作ろうとしていた。
彼のアグレッシブなポジショニングのせいでアーセナルは押し込まれ、深い位置からカウンターを行うのはほぼ不可能になった。次にシティと試合を行う際には、アルテタはこれを何とかしたいと考えていることだろう。
問題は、シティ相手に守備を行うためには、ピッチの低い位置に人員を揃える必要があるという点だ。味方全員が相手ゴールから70ヤードほど離れた位置にいる場合に、カウンターを繰り出すのは非常に難しい。
フェルナンジーニョとカンセロの隙を突いたアーセナル
試合の最初の荒波を乗り切って以降は、アーセナルがプレッシャーから解放され、自分たちがボールを持った際もシティを苦しめることが出来ると示すことは非常に重要だった。
アーセナルはシティがフェルナンジーニョ1人をCMFとして起用されていることに目を付け、それを利用した。ウーデゴールとサカが下がった場合に、彼が二人共をカバーするのは不可能だとわかっていたからだ。
まずサカが下がり、その後それとは逆のサイドにフェルナンジーニョを引っ張り出すことにより、サカがいたスペースを活用する形が見られた。カンセロがついて行くことはないので、ティアニーがサイドでフリーになれるのだ。
以下の画像はアーセナルが初めてシティ陣にボールを侵入させた場面のもので、サカとティアニーがカンセロがどちらを見ればよいのか迷うような状況を作り出すことに成功している。
その後もアーセナルはシティ相手に勇敢なビルドアップを披露し、リスクの高いプレイも時折見せた。もちろんこれは失敗することもあるが、ハイプレスをかけてくる相手に対しては、しばしば有効な解決策だ。
このような試合展開でのアーセナルの選手の何人かのパフォーマンスにアルテタは今後への期待を見出したことだろう。
例えばホールディングはずっとボール保持時に落ち着いており、一人、時には二人かわしてボールを前に進める素晴らしいプレイを見せた。
カンセロが時折2人以上の選手を見なくてはならなくなっている状況を利用して、ジャカも非常にうまく左のスペースにボールを展開することが出来ていた。
アーセナルがどれくらいシティを無効化できていたかというと、アーセナルはなんと自陣のディフェンディングサード内でシティが一度プレスをかけるごとに14.6タッチを記録することが出来ていた。前回のシティ戦ではシティの一度のプレスごとに4.6度のボールタッチしか記録できず、かつシティの対戦相手の今季の平均は1度のプレスごとに6.6タッチであるにもかかわらずだ。
グアルディオラのシティがハイプレスをためらって保守的になることはあまりなく、ここまでプレス数を減らせたというのが、アーセナルが彼らを苦しめることが出来ていた何よりの証だ。
(後半に続きます)
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