【戦術コラム】アーセナルはいかにしてリーズを打ち破ったか
一時の好調はどこへやら、5試合で1勝のみというアーセナルと、直近の5試合で3勝を挙げていたリーズの激突となった今回の試合だったが、ミケル・アルテタはきちんとチームが前に進んでいるということを示すことに成功した。
先発メンバー
アーセナルは4-2-3-1でのスタートとなり、レノが出場停止明けで復帰、セドリック、ガブリエル、ルイス、ベジェリンというバックラインで、中盤の後ろにジャカとセバージョス、前に右からサカ、ウーデゴール、スミス=ロウ、その前にオーバメヤンという布陣で、ウーデゴールはアーセナルでの先発デビューとなった。
アーセナルのフォーメーションはリーズの 4-1-4-1相手に完璧といっても良く、リーズの規則正しいポジショニングに乱されることなく、アーセナルは規律を保ち、自分たちのタレントを最大化できる、有利な1対1を作り出すことが出来ていた。
さらに、アーセナルはリーズに狭い陣形をとらせてそちらに集中させると、正しい時間帯に正しい場所へボールを運ぶことが出来、これによりボール前進と危険な攻撃を繰り返すことが可能となった。
ハイプレス
リーズは数的優位を作ってメリエからショートパスでつなごうとする動きを見せたが、アーセナルはカバーシャドウを活用して、相手の一本目のパスが出たとたんにフリーなCBの一人を遮断することでこれに対応した。
これによりアーセナルのプレスは数的優位を得られ、タッチラインをもう一人のDFのように使うことで、マンツーマンでプレスを仕掛けられていた。このため、リーズは有利ではないサイドに展開するか、ロングボールを蹴ることを強いられた。
アーセナルは4-2-4のような形で前からプレスをかけることも多く、この時プレスに行っていない逆サイドのウイングはよりバランスよくジャカとセバージョスをサポートできるような形をとった。
これにより、リーズがアーセナルのプレスの第一波を突破した時のリスク管理もできていた。これは、前回のリーズ戦からの改善点と言えるだろう。特にペペのレッドカードの後、リーズはサイドに集中して攻撃を仕掛けてきていた。
実際にリーズがアーセナルのプレスを突破できたケースは、基本的には深く降りてきたMFへの縦のボールからで、そこからアーセナルのウイングの裏側に動いたサイドバックにボールを展開した。
この時の対応に関しては、彼らがマークしていなくてはならないサイドバックを見失っていたという意味で、スミス=ロウとサカの若さが出たといえるかもしれない。
アーセナルがPKを得たシーン、この画像が、アーセナルの典型的なハイプレスの場面だ。
サカがクーパーへのコースを切り、オーバメヤンがエイリングにプレスをかけ、ウーデゴールがストライクをマークすることでショートパスのオプションがなくなっている。ここでサカがメリエにさらにプレッシャーをかけ、彼が左足でのロングボールを選択せず持ち直したところでパニックとなり、サカを倒してしまったというわけだ。
アーセナルのフリーな選手の作り方
アーセナルがボール保持時にリーズはマンマークで対応していた。アーセナルはこれを利用し、相手を引き延ばしただけではなくショートパスをつなぐ際に一人空いている選手を作る(ルイスかガブリエル)ことでこれに対応した。
リーズはワントップだったので、バンフォードがCB2人に対応しなくてはならなかった。このため、バンフォードはどちらのサイドを切るか選択しなくてはならなかったが、ジャカ、ルイス、セバージョス、ガブリエルのおかげでアーセナルはどちらかのサイドが弱点ということはなく、プレスを突破してリーズを押し戻すことが出来ていた。
特に三角形と素早い判断を活かしてのパス回しとワンツーにより何度もリーズを突破することに成功していた。
また、他のチームがリーズ対策として用いていたファイナルサードに深い位置から選手を上がらせる策をアルテタも同時に用いた。
ラフィーニャとハリソンは規律が取れた選手だが、プレミアリーグでシーズン通して60ヤードをカバーし続けることが出来る選手などほとんどいない。
これを活かしてセドリックととくにベジェリンはラフィーニャ相手に数ヤードを稼ぐと、そのまま駆け上がり、攻撃のサポートだけではなく自身が得点機に顔を出したりもした。
ウーデゴール
かなりの期待を持ってアーセナルに迎えられたウーデゴールだったが、彼はこの試合で出来ることを示した。ボールを持った時に素晴らしいだけではなく、彼の走り込みとスペースを見つける力はまさにアルテタが望むものだった。
最初は私は彼が後ろに下がりすぎ、チームの攻撃はバランスを崩してしまうのではないかと危惧していたが、スミス=ロウとサカがその場合のカバーは担当しており、ウーデゴールが下がった際には中央でのサポートを提供することが出来た。
よく見られたのは2人のうちどちらか一方が近くにやって来て、もう一方で裏にはしるというパターンで、これによりウーデゴールに与えられる時間が増えた。
今後よりチームメイトとの連携が深まるにつれて彼に何が出来るかは楽しみだ。既にその片鱗は見せている。
総括
まとめると、リーズはアーセナルにとって完璧な相手だったといえるだろう。彼らは攻撃の意識が高く、マンツーマン寄りのアプローチだったので裏へのスペースが多くあった。
オーバメヤンやサカと一対一で対峙して無事で済む選手は多くなく、リーズはその代償を支払うこととなった。
最も重要だったのは、アーセナルがリーズのエネルギーと激しさに圧倒されることがなかったという点だ。ガブリエルとルイスの二人が常にフリーであろうとし、かつ守備陣、中盤と前線が連携して相手プレスを突破、そしてオープンなスペースを活用することに成功した。
後半にはインテンシティが下がり、リーズが試合の主導権を握ったことで二失点こそしたが。
ウーデゴール、スミス=ロウとサカの3人を同じチームに組み込むことはできるのかという意味でも興味深い試合だったが、ウーデゴールを中央に置き、ロウを左にサカを右にという布陣でアーセナルは利用可能なスペースを突くだけのクリエイティビティと抜け目なさを発揮できた。
さらに、彼らがオーバメヤンへのチャンスを演出できたのは素晴らしい。オーバメヤンが復調傾向にあるのも何よりだ。
リーズ相手に4-2というのは良い結果だし、パフォーマンスも素晴らしかった。皆シャープで自信に満ちていたが、特に個人的にはセバージョスのプレイは良かったと思う。彼はチームの各ユニットをつなぐうえでセンセーショナルな活躍を見せ、ベジェリンへの素晴らしいアシストまでもを記録した。
ゆっくりとだが、アルテタのアーセナルが姿を見せつつある。
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