我々がキーラン・ティアニーを愛する理由

語ってみた海外記事

『あなたはキーラン・ティアニーのことが好きですか?』はわざわざ問いかける必要のない質問だ。しかし『あなたは何故キーラン・ティアニーのことが好きなのですか?』について考えるのは興味深いかもしれない。

凍るようなホーソーンズでの夜、チームメイトが防寒具で身を固める中、ティアニーは半袖でウォームアップに現れた。

認めよう、私が若かったころ、サッカーをしていた時代は暖かい格好でプレイするタイプの選手だった。私は寒いのは嫌いだ。アンダーシャツ、帽子、暖かく体を保つための装備は大体すべて持っていた。

だから、別に暖かい格好で練習に臨む選手たちについてとやかく言うつもりは全くない。

試合後に服装について聞かれてティアニーは

スコットランドでプレイしていたからね、少し寒いのには慣れているよ、別に害は無いしね。

確かにそうかもしれない。だが、多くの人は寒さが嫌いだ。

ティアニーの姿勢は昔ながらのサッカー選手たるもの男らしくタフでなければならない、という考えと関連があるように思える。

選手たちが寒さを嫌うのも当然だが、ティアニーのような-7度の中ユキヒョウと白クマと格闘でもしようか、というような姿勢はファンの間での彼の評価を高めた。

街が大洪水に襲われ、顎髭を生やした男が必死で全種類の動物を2匹ずつ船に乗せようとする、水位はどんどん上がっていく。

そんな時響く聞き覚えのある、スパイクがコンクリートをたたくカチカチという音。ピッチは水で溢れ、ゴールマウスも水浸しだ。当然そんな練習場には誰も居ないが、そこにティアニーが1人、ボールを腕の下に抱えて現れる。

彼は訝しげに周りを見渡し、チームメイトが救命ボートに乗り込み、少しでも高い場所を目指しているところを見つける。そして彼はため息とともに呟く。

『ちょっとくらいの雨に害はないのに。』

ティアニーはテスコ(イギリスの大手のスーパーマーケット)の袋で生活する男だ。

私もテスコの袋を持っている。彼は本当に庶民的だ。彼が持っていた袋は少し高価なエコバッグですらなかった。薄くてすぐ破れる安物のものだ。恐らく彼はずっとそれを使いまわしているのだろう。

そこには派手なライフスタイルの欠片もない。我々のKTは50万円のルイ・ヴィトンのバッグなど使わない。

しかも、ティアニーは同じ袋を何度も使うことで環境に配慮することも怠っていない。それも、庶民的で男らしいやり方でだ。ヒッピー的な、隙あらば樹に抱き着くようなやり方でではない。少しそれはやりすぎと言うものだ。

だがもちろん、これらは全て、ティアニーにサッカー選手としての実力がなければ何の意味もない。ティアニーがテスコのビニール袋を何枚持っていようとも、もし酷いサッカー選手であれば、誰もそんなこと気をかけないだろう。

私が興味深いと思うのは、こういったキーラン・ティアニーの人間性と彼のプレースタイルは密接に関連していると思われる点だ。

先日アーセナルがチェルシーを打ち破り、ついに連敗街道を脱出した時、我々は大いにエキサイトしていた。だが、試合後にティアニーは『これはただの始まりだ』というコメントを残した。

ウエストブロム戦後に、彼が決めた素晴らしい得点を、チームメイトはジョークで『あれはクロスだったんじゃないか?』と聞いたが、それに対してティアニーは『見返してみないとわからないな』と返した。

彼は、完全に地に足のついた若者で、連勝に浮かれることも全くない。調子に乗ることもないし、そしてそれは彼のプレイにも表れている。

CBとしてプレイしろと言われれば文句も言わず受け入れる。そして、本来のポジションである左サイドバックで起用されれば輝きを放つ。

アーセナルは困難な時期もあったが、彼はそこから学ぼうという姿勢を見せ、それに対する彼の対処法は、さらに努力を重ねる、というものだった。

常に100%を出しているつもりでいるときにさらにギアをあげるのは難しいものだ。

確かに、努力とハードワークは選手がどれだけ走り回るか、スプリントの回数などである程度は測れるかもしれないが、それがすべてではない。数字で測れないものも存在する。

オプタは選手がどれほど勝利を渇望しているか、どれほどチームに尽くしているかに関するスタッツを提供してはいない。

だが、それが選手の中に存在する時、ファンの目には明らかに見て取れる。そして、それが存在しないときもよくわかるのだ。ファンにとって、100%を尽くしていない選手を見分けるのはそこまで難しいことではない。

だが、ティアニーはいつだって100%だ。

彼は守備時に気を抜くことはなく、常にチームのために何かを起こそうとしており、そしていざファイナルサードに入れば素晴らしいボールも配給できる選手だが、下の画像を見てほしい。ウエストブロム戦のものだが、これが何分の出来事だかわかるだろうか?

攻撃の向き的に後半であることは明らかだが、これは90分32秒地点のものだ。

アーセナルは既に4-0で、試合はもう決まっている。90分間上下動を繰り返してきたのだ、この段階で後ろでシンプルなパスを繰り返して試合終了まで乗り切ろう、という選手がいても全くおかしくはないだろう。

だがティアニーは違う。彼は再びエンジンをかけると、オバメヤンのためのオプションとなるため前線に駆け出したのだ。

これこそが、人間性とサッカーピッチ上での素質が融合している良い例だ。

ティアニーのプレイは彼の人柄を象徴するもので、テスコのビニール袋もまた、サッカー選手としての彼にとって重要な一部なのだ(当然、このビニール袋が何かのラッキーアイテムだといいたいわけではない、言いたいことを伝わるだろう。)

アルテタがティアニー、そして彼がチームにもたらすものを高く評価しており、将来のキャプテンだと話すのも全く驚きではない。

ティアニーはまさに、我々がサッカー選手に臨むすべてを体現している。

彼は素晴らしく"昔ながら"に感じられ、"本格派"のサイドバックだ。だが、もちろんモダンなサッカー選手としての必要な素質も備えている。今の時代にはそうでなければサッカー選手として生き残れない。

コラシナツの移籍とともに、ティアニーの方には重荷がのしかかることになった。彼が現状チームで唯一の左サイドバックを本職とする選手だからだ。

もちろん、ナイルズも左でプレイできなくはないし、もしかすると冬に誰か獲得されるかもしれないが。

ティアニーはまさに、スタメン表に真っ先に名前が載る選手で、今のアーセナルにそのような選手はあまり多くはない。

何より、彼を見ているのは非常に楽しい。ティアニーはサッカーを楽しいものにしてくれる。毎週弾丸シュートを叩きこむことはないだろうが、一貫して高いレベルでハードワークとパフォーマンスを見せてくれる。これこそ彼が、多くのファンに支持される理由なのだろう。

source(当該サイトの許可を得て翻訳しています):

関連記事(広告含む)

Posted by gern3137