アーセナルの試合展開に応じた変化に関して
サッカーの試合には三つの展開がある。リードしているか、同点か、ビハインドかだ。この中でリードしている状態が最高で、ビハインドが最悪であることは言うまでもないことだが、アーセナルは直近のプレミアリーグ10試合でリードしていた時間がなんとたったの30分足らずしかない。そして、このうちの1/3以上の時間帯を相手にリードされている。
エヴァートン戦後の会見でアルテタはアーセナルはトッテナムに敗北する可能性は7%だったにもかかわらず敗北した、と述べたがこれは事実だろうか?
シュート数に応じて、クラブが算出するモデルによるとそうである、のかもしれない。だが、アーセナルが試合の長い時間をビハインドの状態で過ごしたのもまた事実だ。
スパーズが前半終了時点でリードしていたのは内容を反映しており、そして、それにより試合後半の流れが決まった。
(詳しくはこちらの記事を参照)
トッテナムは安全なリードを手にし、攻撃をやめた。ジョゼ・モウリーニョ自身が試合後にこれを認めている。したがって、試合はアーセナルが得点できるかどうかに委ねられたわけだ。
では、アーセナルがビハインドの状態で試合を過ごすことが多いのは偶然、あるいはアンラッキーなのだろうか?
答えはノーで、2014/15シーズンから、アーセナルがリードされて過ごす時間は少しずつ長くなってきており、特に直近の二シーズンの傾向は大きな懸念だ。なんと、リードされている時間の方がリードしている時間より長くなっている。
(20/21シーズンは現在の成績を38試合あたりに換算している)
最近のアーセナルの特徴としては、同点時のシュート数がとても少ない。したがって、リードされる機会が増えている。
その後は相手をシュート数で上回れることが多いが、これはむしろ、相手チームがアーセナルは守備的なチーム相手に良いチャンスを作り出すことが出来ないという認識が広まってきてしまった影響が大きいのではないだろうか。
2014-18年までは、ガナーズはどのような試合展開でも基本的にシュート数が相手を上回っていた。18/19シーズンにはリード時ビハインド時で相手にシュート数で上回られるようになり、昨季はすべての状態でシュート数で負け、今季は同点時のシュート数が史上最悪レベルとなっている。
また、最近のアーセナルはビハインドの状態でシュート数こそ稼げているものの、xGで見ると、あまり相手に優位をとれていない。この状態でのチャンスの質が低いからだ。
上の図で昨季と比べてビハインド時のシュート数が今季は上昇しているのが見て取れると思うが(青い線)xG得失点で表した下のグラフでは、ほとんど横ばいなのがわかると思う。
今季のアーセナルはビハインド時にシュート数で相手を上回ることが多いが、xGだと+0.1程度なので、特段相手より得点可能性が高くはない、ということだ。
2018年からアーセナルが大きく変わってしまったのは明らかだ。上の3つのグラフ全てがそれを示している。
かつてのアーセナルは試合展開に関係なくxGで大きく相手を上回っていた。同点の時やリード時もだ。ただし、ビハインド時のxGが17/18シーズンに少し改善されているのは注意してみる必要がある。
これはむしろ、アーセナルがビッグ6相手に大敗を喫することが増え、相手がその時点で攻撃に出なくなるのと大いに関係しているだろう。とはいえ、この時期でさえ全体的にビハインドで過ごす時間は今よりはるかに少ないわけだが。
もしかすると、アーセナルにとってのターニングポイントは、アレクシス・サンチェスの放出だったのかもしれない。彼は非常に高いレベルでシュートを多く打ち、同時にいくつもチャンスを作り出していた。
原因が何だったにせよ、このころからアーセナルは一変する。
かつてのアーセナルは自らが有利な時にxGを積み重ねるのが得意で、同点時、あるいはリードしているときの勝利の可能性が非常に高かった。
だが、このようなスタイルのベンゲル時代のチームとは対照的に、アルテタとエメリのチームははむしろ同点時には失点しないように、そしてリードしているときは同点に追いつかれないことに重点を置いているようだ。
だがこのやり方により、結果的にアーセナルは同点時に得点を目指そうとせず、リード時にはリードを保てず、ビハインド時にそれを跳ね返せないチームに仕上がってしまった。
この問題は非常に根深い。
図らずもアルテタは会見で長い目で見れば確率的にはうまく行くはずだ、と示唆することで今のアーセナルの抱える本質的な問題に光を当ててしまったわけだ。
アーセナルはスコアがタイの状況で相手を圧倒する術を見つけ出さなくては、これからもずっとビハインドに陥り続けるだろう。
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