アルテタとxG(得点期待値)と勝利の確率-アーセナルは”アンラッキー”なのか

スタッツ・戦術crabstats,海外記事

本日行われた記者会見で、アルテタが非常に興味深いコメントを出していた。以下はFootball LondonのChris Wheatlyによる書き起こしからの引用だ。

昨年のエヴァートン戦ではスタッツ的には我々の勝利の可能性は25%しかなかったにも関わらず、我々は3-2で勝利を収めた。週末の試合では勝利の可能性は67%で、敗北の可能性は9%しかなかったにも関わらず負けてしまった。バーンリー戦でも敗北の可能性は3%だったが敗れ、スパーズでも7%の確立を引いて負けてしまったのだ。

さて、このような主張は検証するのは非常に簡単だ。

まず、一番最近の試合を見てみよう。

私のシミュレーションモデルによると、アーセナルの勝利確率は65%で、確かに、アルテタが述べた67%に近い。微妙に誤差があるのは各チャンスの質をどう評価するかの違いによるものだろう。

スタッツボムが算出の値は少しエヴァートン寄りになっており、xGから見たアーセナルの勝利確率を52%としている。

次は昨年のアーセナル-エヴァートン戦を見ていこう。

私のモデルではアーセナルの勝利確率はアルテタの言う25%よりかなり低い9%となっているが、スタッツボム算出の値は19%なのでよりアルテタのものに近い。

とはいえ、多少数字の変動はあるが、アルテタのコメントの趣旨は確かにその通りだ、ということはできる。

さて、それではバーンリー戦とトッテナム戦ではどうだったのか見てみよう。

私のモデルによると、確かにアーセナルの方がバーンリー戦の勝利確率は高いものの3%というのは少し楽観的過ぎる。バーンリーには24%程度勝利の可能性があったようだ。スタッツボムもこれとほぼ同意見で、バーンリー勝利の可能性を21%と算出している。

トッテナム戦も同じく少し低めに見積もられているようで、アルテタは敗戦の可能性は7%だったというが、スタッツボムと私のモデルが出した結果は全く同じで、トッテナムが勝利する可能性は19%となっている。

さてでは、ここから何が導き出せるか、どのようにアルテタのコメントを評価すればよいか、という点に関してだが、確かにアルテタの言っていることは大筋間違ってはいない。xGから見ると、アーセナルの敗戦は確かに不運だったとみることもできそうだ。

だが、忘れてはならないのは、こういった分析を非常に難しくするのが、基本的にリードしているチームはリスクを冒さず、現状のリードを守ろうとする傾向にある、と言う点だ。

スパーズ戦とエヴァートン戦の両方で、アーセナルは早い時間にビハインドに追い込まれ、かつアーセナルが生み出したxGのほとんどは中~低確率のチャンスだ。

これは、相手チームの策略通り、という見方もできる。2点リードしたスパーズにとってはなおさらだ。

アーセナルが3-2で勝利したエヴァートン戦でもこの傾向はみられ、2点リードした後は相手に少しはチャンスを許しつつもこのリードを守ろうとし、結果として勝利を収めた。

基本的に、リードしているチームはシュート数は減少するもののシュート一本当たりのxGは上昇する傾向にあり、かつこのような状況ではxG以上に得点を挙げる確率が高い。

恐らく、これは相手チームが前がかかりになってよりオープンなチャンスが増えることと関係あるのだろう。

同点時の各チームのシュートクオリティは一本当たり平均して0.115だが、リードしている際には0.14になり、逆に試合に負けているときは一本当たり0.1へと下がる。

アーセナルが抱える最大の問題は、試合展開と関係なくチャンスを作ることが出来ない、という点だ。

相手にリードを許しており、最もアグレッシブに攻撃しているべき状況であっても、アーセナルは90分当たり11.8本しかシュートを打てておらず、しかもその一本当たりの平均xGは0.1だ。

確かに、それでもアーセナルはこれらの状況から実際に得点した2点だけではなく5,6点が生まれてもおかしくないxGを創出しているので、これをもって不運だったということはできる。確かに、もう少し運があれば2,3くらいは勝ち点を上積みできていたかもしれない。

だが、だからといって、今のアーセナルが大体順位表通りの試合運びを見せているという事実は変わらない。これは、その他の試合もすべて考慮に入れれば明らかだ。

上の表のとおり、アーセナルは何試合かでは"アンラッキー"で、何試合かでは"ラッキー"だ。

そして、この"アンラッキー"な試合の中でアーセナルは相手にプレッシャーを浴びせチャンスを多く作ったわけでもない。確かに、この勝ち点期待値の通りアーセナルが勝ち点18を獲得していれば今よりはましだろうが、この勝ち点期待値がアーセナルのパフォーマンスを正確に反映しているとはいいがたい。

サッカーという得点数が少なく運に作用されやすいスポーツにおいて、勝利を確実にものにするためには、余裕をもって相手を圧倒できるだけのチャンスを作らなくてはならないのだ。

アルテタの戦術は自チームと相手チーム両方のシュート数を制限する傾向にあり、このような戦術ではより少しの運に左右されやすくなってしまうのは当然だ。

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Posted by gern3137