現在のアーセナルの運営体制の問題に関して 後編
この記事は前編の続きとなっています。
エドゥへの疑問と大きすぎるアルテタへの負担?
とはいえ、これはもちろんクラブ運営、という大きな目線に立って物事を見た場合の話で、実際に現場に立つアルテタがシーズン開始時点で『今年は7,8位でも構わない』と考えていた、とは思えない。
彼は常に勝利を追及しており、今年もCL出場権、タイトル争いを、と考えていた(いる)はずだ。そうなれば、監督が即戦力となる選手を要求するのも当然といえばとうぜんだろう。
本来であれば、こういった短期的な視点と長期的な視点のバランスをとることこそがテクニカルディレクターであるエドゥの仕事のはずだ。
例えば、ウィリアンの獲得はアルテタの要望だったとされているが、そのような場合に『将来のことを考えると、スペインの若手に〇〇〇という選手が居て、スカウトの報告によるとプロフィール的にはウィリアンと似ている。長期的な視点を考えると彼の獲得の方が良いと思うが、この選手はプレミアリーグでの適応はすぐには難しいと思うか?どう思う?』のような提案をするのがテクニカルディレクターの仕事ではないだろうか。
実際にピッチに選手を送り出す立場にある監督がクラブの将来にも目を配るのは非常に難易度が高く、それこそアーセン・ベンゲルのような希代の天才にしか出来る芸当ではない。彼のような監督がアレックス・ファーガソン以外に現れていないことがそれを証明している。
これこそがアーセナルが監督全権型のシステムを撤廃し、短期的な結果を出すのを監督に、将来を見据えたプランニングをテクニカルディレクターやフットボールディレクターに、という構造を導入しようとした理由だったはずだ。
圧倒的な経験を持つベンゲル監督ですら、最終的にアーセナルをCL出場権圏内に保つことは出来なくなってしまったのだ。
監督経験なしのアルテタにピッチ上でのチームの指揮と共にManagerとして長期的なチーム作りまでもを任せるというのは少々無謀すぎる賭けではなかっただろうか。
そもそもエドゥは期間は短かったとはいえサンジェイ体制の一員でもあったわけだし、彼が解任された大きな理由の一つとして、特定の代理人がアーセナルのクラブ運営に関与しすぎている、というのがあったはずだが、その筆頭であるキア・ジューラブシャンはそもそもエドゥの代理人だ。
アルテタと同じく欧州トップレベルでの実績は全くないエドゥに対してファンが疑念を抱くのに十分な要素は揃っている。ここからファンの信頼を勝ち得るためにはかなりの実績をアーセナルで挙げる必要があるだろう。
実際に、夏の移籍市場ではパーティやガブリエルといった選手獲得にこそ成功したものの、サリバは書類手続きの不備でローンに出せず、というシンプルなミスを犯しているし(トーマス・パーティの獲得で忙しかったというのはあるだろうが、それならば契約解除条項があるのだから、最終日に放出をまとめることを見越してパーティ獲得を1日早く決めればよかったのではないか?)、また売却にことごとく失敗し、結局ゲンドゥージやトレイラはローン、そしてそれでも2人の非HG選手が溢れてしまい、メンバー登録外、それによりチームの雰囲気は悪くなる、という不手際を露呈している。
個人的には、エドゥを解任すべきかどうかまではわからないが、少なくとも誰か他に経験豊富な人材をもう一人二人オーナーはフロントに加えるべきだと感じる。
万一アルテタが解任されたとしたら次の監督を誰が決めるのか
さらに、現体制におけるもう一つの懸念が、監督交代に対処する準備が全く整っていないという点だ。
仮に、万一このままアーセナルが降格圏に沈み、いくら何でもアルテタに任せ続けるわけにはいかない、という状態まで悪化してしまったとしよう。
もしそうなった場合、誰が次の監督を決めるのだろうか?
今のアーセナルでは、サッカー面の決断を下すにおいて最も見識があり信頼できる人物がアルテタ、というかつてのアーセン・ベンゲル時代とまったく同じ状況に陥っている。
しかも、過去にクラブ運営の実績があるベンゲル監督とは違い、アルテタのこちらの方面の手腕は未知数、というおまけつきだ。
ベンゲル監督時代終盤にベンゲル監督を仮に解任するとして、イヴァン・ガジディスが後任に正しい監督を選定できると我々は信じられるか?といった疑問が出ていたが、今の状況もそれに似ていて、もしアルテタが解任となった場合に、我々はエドゥがアーセナルにとって最善の監督を選んでくれると全幅の信頼を置けるだろうか?
エドゥではないとしたらでは誰が監督を選ぶのだろう?ジョシュ・クロエンケか?
アーセナルの在籍歴が長いガジディスにサンジェイ・ミスリンタートの二人、バルセロナ、ドルトムントという欧州トップのサッカークラブでの経験が豊富な人材を加え、ベンゲル後の時代に備え、監督が代わっても彼らがクラブを一貫性を持って維持していける体制をクラブは整えることに成功したと思われた。
だが一転、今や彼らは全員去り、テクニカルディレクターのエドゥと監督(Manager)のアルテタ、どちらが最終的な決定権を持っているのかも不透明な状況で、現在のアーセナルはまたしても監督(今回はアルテタ)と一蓮托生、という状況に逆戻りしてしまった。
クロエンケやヴィナイはアルテタを100%信頼している、と言うが、それも当然と言えば当然だろう。他に誰も信頼できる人物はクラブに居ないのだから。
もちろん、蓋を開けてみればミケル・アルテタがアーセン・ベンゲルのような天才監督だった、という事であればこの体制でも問題はないのだろうが、今の所、それを指し示す証拠はあまり多くない。
ディスカッション
コメント一覧
ヒドイもんすね
個人的にクロエンケアウトに根拠は無いと思ってましたが、
決済者がクラブの将来に責任を負うという点では疑問を持たざるを得ませんね
それだけ上手くいってない
プレミアは厳しいです
競争力が大前提、育成はその範疇が実際で
アヤックスのような時間の猶予がありません
クロエンケは競争の厳しさ、マスコミやファンからのプレッシャーがここまでとは考えなかったかもしれない
ゆったりとしたメジャースポーツ経営では、ものを言わなくてやっていけたかもしれない
あくまで目的はスポーツ投資の長期保有でいざとなれば合理的になれてしまう訳で
ジョシュはあのやり方はベンゲルだからできたことだと
取締役会牛耳って、人員削減スリム化して、負債の借換えして合理化を推し進める
それでもチーム強化にカネをまわすんだと
つまんないサッカーでいいんだと
肝心の判断する人材がいない
カジディズは自分が認められる場所にさっさと去り、権力の空白をいいことに悪人が私腹を肥やす
それを許してしまうほどに、責任の所在が曖昧なほどに注意深く経営をしてないことの表れです
ジョシュの影響の範囲内で経営を丸投げできる人材、そんな都合のいいのがいるのでしょうか