【最新スタッツ用語解説】ポゼッションバリューとは?【PV(Possession Value )】
PV(ポゼッションバリュー)の概要
・Optaが用いているフレームワークで、 各一連のポゼッションごとに、得点の可能性を算出
・そして、ポゼッション内の各選手それぞれのボールを用いたアクション一つずつに、どれくらい得点の可能性を上昇させたかという値が設定される(PV+: Possession Value Added ポゼッションバリュー付与 と表現される。ボールロストなど、ポゼッションバリューを減少させた場合はマイナスの値となる)
ポゼッションバリューという指標の導入の背景
どのサッカーチームにおいても、得点とアシストの二つが最も評価される指標であるのは間違いない。だが、これらにだけ集中してしまうと、ピッチ上で行われるその他すべてのアクションをないがしろにすることになってしまう。
例えば、守備的MFのボールを前に進める能力をアシスト数や得点数で測ろうとすることに何か意味があるだろうか?
ピッチ上の選手のすべてのアクションの勝ちを計測できるのが理想だ。
選手たちの特定のアクションはチームにとって有益だろうか?それとも害をもたらすだろうか?チームの得点の可能性、勝利の可能性を増すだろうか?
大抵の場合、CMFのクオリティを得点期待値やアシスト期待値で測るのはあまり意味がない。なぜなら基本的に非常に低い数字となるからだ。
したがって我々はプログレッシブパス数やファイナルサード侵入回数といった指標を参考にするが、それでもすべての情報がカバーできるわけではない。
例えば、攻撃の選手のシュート数を見る場合を考えてみよう。我々はFWが何本シュートを打ったか、だけではなく、そのシュートの質に関しても知りたいはずだ。
そのために、2012年にxGという指標が導入され、これによりアタッカーのクオリティや得点力をより正確に測れるようになった。したがって、これをシュート以外のプレイにも適用しようとするのは自然な流れだろう。
各ポゼッションごとの得点の可能性を算出
(訳注: ここでいうポゼッションというのは1度のポゼッション、チームがボールを奪取してから失うまでの一連の流れのことを指します)
選手は試合中常にいろいろな決断を強いられている。彼らは得点の可能性の最大化に努める一方で、失点の可能性の最小化にも努めている。
ストライカーにGKと1対1を演出するパスや、インターセプトなど、一目でチームにとってプラスであるということがわかるアクションもある。
だが、大抵のアクションは、そこまで明確ではなく、より微妙なものだ。
このようなアクションの価値を測定するために生み出されたのがポゼッションバリューだ。バスケットボールのEPV(Expected Possession Value)モデルと同じで、チームがとあるポゼッションから得点する可能性を算定したものだ。
まだこのモデルは発展途上なので、今後も少しずつOptaのクライアントのフィードバックに応じて変化していくだろう。
下のリバプールのアクションの連続を例にとってポゼッションバリューを見てみよう。下の図の最後のアクションはジェームズ・ミルナーによるパスだ。
ポゼッションのこの段階で、これが得点に繋がる可能性はどれくらいあるだろうか?
思い出してほしいのは、ここから先どのような形で得点に繋がるかは関係がない、ということだ。このパスを受けた選手が直接シュートして決まってもいいし、この後20タッチボールが繋がれて生き、最終的にコーナーから点が決まってもいい。
その間にチームがボールを失うことがない限り、全てがこのポゼッションから生まれたゴールとしてカウントされ、それを全てこのポゼッションバリューモデルは計算する。
上の画像のケースでは同じようなポゼッションから得点が生まれる確率は3.3%だ。30回に一度、という言い方もできる。
では、これはどのように計算されているのだろうか?
上の画像に示されている通り、このモデルは現在のボールの位置からさかのぼって最大5つのイベントまで考慮する。そして、これを過去のすべてのデータと比較し、ゴールが生まれる確率を計算する。
一般的に言って、これらのアクションのうち時系列が後のアクションの方がより大きな影響を及ぼすと考慮される。例で言うと、ミルナーのパスの方が、5つ前のアクションよりも影響が大きい、ということだ。
では、これとアクションの価値を測定することと何の関係があるのだろうか?
それを見るために、このミルナーのパスの次に続いた二つのアクションを見ていこう。
ミルナーからのパスを受けたフィルミーノは、ボックスのすぐ手前までボールを運び、サディオ・マネにスルーパスを通すことに成功した。
この局面を同じモデルで計算すると、得点が生まれる可能性は33.9%にまで上がっている。したがって、フィルミーノはこの二つのプレイにより、得点が生まれる可能性、ポゼッションバリューを30%以上上昇させたということだ。
これが我々がPV+(Possession Value added: 付与PV)と呼ぶものだ。
これを適用すれば、ピッチ上のほぼすべてのアクションに対してチームの得点の可能性を上昇させたか、加工させたかを判定することが出来る、というのがわかってもらったかと思う。
ポゼッションバリューを高めるプレイ
では、選手のチームにとって大きくポジティブな貢献をするが、xGやxAには表れてこないケースを見ていこう。
下の画像では、アーセナルのラカゼットが自陣でスローインを受けたが、相手選手に囲まれている。
ボールを受けてターンしたのち、彼は相手陣の深い位置までボールを運ぶことに成功する。そして、先ほどの場面から9秒後に左のコラシナツへとパスを出した。
このラカゼットの一連のプレイがアーセナルの攻撃にとって大きな貢献をしたのは明らかだが、その後のコラシナツのクロスは相手DFにカットされ、コーナーになってしまった。
このようなプレイの場合、ラカゼットがシュートを打ったわけでもなければ、コラシナツがシュートを打つ可能性もほとんどないので、xGやxAの上昇はほぼゼロで、これではラカゼットの貢献は測れない。
したがって、PV+こそがラカゼットのプレイを正確に測るのに必要な指標となる。
ラカゼットがスローインを受けた場面でのPVは1%だったが、ラカゼットがボールをコラシナツに通した場面では7%にまで上昇した。
したがって、ラカゼットは0.06(6%)のPV+を生み出した、ということになる。こちらの方が、このプレイの価値をより正確に反映しているのは明らかだ。
ポゼッションバリューの素晴らしい点は、これをピッチ上のアクション全てに適用できるということだ。パス、運ぶドリブル、ドリブル突破、タックル、ボール回収、被ファウルやコーナーの獲得にも用いることが出来る。
ポゼッションバリューを減少させるプレイ
ボール保持時にチームに貢献するプレイだけではなく、それを失ってしまうボールロストも、サッカーの一部だ。
ポゼッションを失うことは二つの面からチームにマイナスの影響を与える。まず、そのポゼッションが抱えていた得点に繋がる可能性はゼロになる。そして、逆に相手チームが危険な位置でのポゼッションを開始することになる可能性がある。
この2点が両方ともPVのフレームワークでは考慮されており、選手のプレイのネガティブな面も測定することが出来る。
これが適用される二つの例を見てみよう。
ケース1: ワトフォードvsアーセナル戦のソクラティス
下の画像の場面で、ソクラティスはボールを後ろから繋ごうとしたがデウロフェウにインターセプトされてしまった。
この場合、
・失ったポゼッションの価値: 0.01
・相手が得たポゼッションの危険度: 0.14
を合計して、ソクラティスのPV+は-0.15という値となる。
ケース2: トッテナムvsパレス戦のクヤテ
クリスタル・パレスが攻撃側から見て左サイドのボックスすぐ外からのFKを獲得した。
このフリーキックはファーで待っていたクヤテに届いたが、彼は中に戻そうとしたボールをミスしてしまう。この後このボールはクリアされた。
この場合も先ほどと同じように計算すると
・失ったポゼッションの価値: 0.17
・与えた相手のポゼッションの危険度: 0.01
となり、クヤテは-0.18PV+が付与されることになる。
だが、この二つのケースは全く異なる状況であるのがわかるだろう。1つ目のケースに関しては、ソクラティスのミスが直接ポゼッションバリューの増減に直接的に影響したのは明らかだが、2つ目のケースに関しては、クヤテだけではなく、彼のチームメイトがより良い位置でパスの受け手になれなかったこともボールロストに関係しているのではないか、という議論の余地がある。
我々がこのPVのテストモデルを検証した際に、明らかに攻撃的な選手の方が大きくマイナスのPV+を記録することが多いことが示された。
我々はこの問題を修正し、選手の貢献とチームにもたらす正しい要素をより正しく測定するために、ポゼッションのロストに関しては、-0.025(これはポゼッション一つ当たりの平均PVだ)を最大値と設定することにした。
つまり、二番目のクヤテの例では、実際にはクヤテは相手のポゼッションの危険度から-0.01、ボールロストから-0.025のPV+が付与されるということになる。
これにより、アタッカーのボールロストに関して極端にアンフェアに判定されてしまうような事例はなくなるはずだ。
PVから見る19/20シーズンの各チームMVP
サッカーにおいてプラスの貢献だけをする選手はいないし、マイナスの貢献だけをする選手もいない。どれだけポジティブなプレイが多くても、その分ネガティブが多ければ意味がない。
PV+のモデルにより、ハイリスク/ハイリターン型の選手とローリスク/ローリターン型の選手を同列に比較することが可能となる。
実際に19/20シーズンのチームごとに最もPV+の値が高い選手を見ていこう。ただし、まだ消化試合数が少ないのでサンプル数が少ないことだけには留意する必要がある。(訳注: 元記事は19/20シーズンの7節消化時点で執筆された)
見ての通り、全てのアクションは4つに分類されている。
・青 Progressive Actions(前進アクション): PV+がプラスの値をとるアクション
・赤 Regressive Actions(後退アクション): ボールを失ったわけではないが、PV+がマイナスの値をとる(=PVを減少させた)アクション
・黄色 ボールロストから失った味方のPV(先ほどのクヤテの0.025のようなケース)
・橙 ポゼッションロストにより相手に与えたPV
基本的にはPV+への貢献がマイナスを上回れば上回るほど良い、ということになるので、このグラフで言えば、青い部分がその他3つを大きく超えていれば超えているほど良いということだ。
ここまでのところのトップはリヤド・マフレズだが、この表には多彩なポジションの選手がおり、色々タイプの選手をこの指標で評価できるということを示している(もちろん、とはいえ違うポジションの選手を直接比較することにそこまで大きな意味はないが)
ポゼッションバリューは既に存在するゴール前でのパフォーマンスを測るxG、ファイナルサードへのパスの質を測るxAではカバーできない部分を補完する役割を果たし、これにより、我々はピッチ上のボールと関連するあらゆるアクションを評価することが出来る。
異なったポジションの選手を比較できるだけではなく、例えば特定の場面でのカンテのインターセプトにはどれくらいの価値があったのか、などといった守備アクションの貢献度すらも測定することが出来るようになるのだ。
先ほども述べた通りこのモデルはまだ発展途上であり、またアップデートがあるごとにお知らせしたいと思う。
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