【戦術コラム】アーセナルvsマンチェスター・ユナイテッド振り返り 前編
最近は、ミケル・アルテタの戦術はあまりにも厳格すぎ、ベンゲルのいう所のハンドブレーキを解除し、もっと選手に自由を与えるべきなのではないかという意見も出ているが、むしろ今回は、あまり厳格なプランを持たないスールシャールのチームがいかにアルテタのアーセナルのようなチームに対して無力であるかの良いデモンストレーションとなった試合だった
このアルテタに対する批判はまたシーズンが進むにつれて顔を出すだろうが、日曜日の試合に限って言えば、アルテタがコーチングを重視する理由のよい例だった。
プレス
アーセナルのビルドアップがいかに綿密にデザインされているかは何度も話題になっているが、これはオールドトラフォードでのプレスに関しても同様だ。
素晴らしいプランがかなりの高精度で実行されていた。
ライプツィヒ戦と同じようにダイヤモンド形にユナイテッドが布陣をとったのに対し、アーセナルは中盤へのアクセスを遮断しようとした。
鍵となる役割を果たしたのはラカゼットで、ユナイテッドの中盤の底に張り付いて彼へのボールを防いだ。これは主にフレッジだったのだが彼はCBの間に落ちることが多く(アーセナルがレノをCBの間に押し上げて数的有利を作ろうとしたのとは対照的だ)、こうすれば彼は脅威ではないので、その場合はラカゼットはその次に近くにいる中盤のオプション、多くの場合はマクトミネイへのコースを切りに行った。
ボール奪取に向けて積極的に動いたわけではないので、ハイプレスとはまた違うかもしれないが、アーセナルはパスコースを切ることでユナイテッド側が簡単にボールを出せるオプションを消していた。
ラカゼットが中盤へのボールを消した一方で、ウィリアンとオーバメヤンがラカゼットより前でユナイテッドのCB2人をプレスに行き、サイドへのパスも防いでいた。
そして、その前のエリアではアーセナルはマンマーク戦術を採用した。エルネニーがフェルナンデスに付き、パーティがポグバを見た。ベジェリンとサカがショーとワンビサカを担当した。特にワンビサカはサカの知的なポジショニングと粘り強さによって何度もミスに追い込まれた。
そして、アーセナルのプレスの最後のピースはCBのアグレッシブなプレイで、これが非常に効果的だった。ラッシュフォードとグリーンウッドという二人に対してアーセナルは裏を警戒して引いて構えることもできたはずだが、ホールディング、ガブリエル、ティアニーの三人は高い位置で彼らに対処し、前を向かせることがほとんどなかった。
2トップに対し一人多い3人+レノが後ろに控えていることで、高リスクを冒すことなく前に出ての守備が行えたわけだ。これに関してはアルテタが3バックを継続することを選んだのは成功だったと言える。
特にイエローカードを物ともすることなくガブリエルとホールディングの二人は素晴らしいパフォーマンスを見せ、ユナイテッドのツートップを封殺した。
バックラインに5人を置くことでユナイテッドが時折アーセナルのボックス近くに到達した時にも、サイドの選手が中に入ってカバーしてくれるだろうという認識があるので、もし最終ラインの一つ前で相手に対処しなくてはならない際には誰かが前に出て対応することもできていた。
アーセナルのビルドアップ~ミドルサードまで
また、アルテタのチームはビルドアップに関しても遥かに対戦相手よりも秀でていた。
アーセナルは何度もユナイテッドのプレスをかいくぐり、エルネニーはアルテタの指示を受けその役割を完ぺきに遂行していた。
彼は難しいエリアでボールを受けることを厭わず、常にチームメイトにオプションを提供し、かつ実際にボールを受け取った際にはボールを素早く前進させていた。
ユナイテッドのようにプレスの意図はあるがそこまで効果的ではないプレスを繰り出す相手に対してはエルネニーの冷静さとスペースに常に全速力で走りこむ姿勢は完ぺきに機能した。
またアーセナルはレノをうまく活用し数的優位を作り出すことにも成功した。フレッジとは異なりエルネニーは実際にボールを受ける動きを見せた。
幅の狭いユナイテッドの3トップ(プレス時にはユナイテッドのストライカー2人は外に開き、その間にブルーノ・フェルナンデスが入るような形だった)はエルネニー(時々はパーティ)の下がる動きについていけず、アーセナルは余裕をもってボールを動かし、サイドのスペースに展開、あるいは中盤のスペースに突入することができていた。
ラッシュフォードとグリーンウッドはかなり中央におり、ポグバやマクトミネイが加わってくることが多くなかったため、アーセナルは基本的にあらゆる場面で数的有利を作れていた。
正直なところ、時折プレスに出るユナイテッドの選手と後ろに残った選手との間は笑えてしまうくらいに空いていた。
後半にはユナイテッドは4-3-3から4-2-3-1へとフォーメーションを変え人数を一人追加することでプレスを強化するという手段に出た。
ポグバがサイドに来たことでアーセナルのハイプレスは少し戸惑うこととなった。ベジェリンがポグバに対応しなくてはならなくなったので、ウィリアンはショーを追う必要があり、マグワイアにプレスをかけることが出来なくなったのだ。
エルネニーはフェルナンデスのマンマークを続けたが、アーセナルはサイドで数的優位を作り出すことが出来なくなった。
だが、後半も始まって10分ほどたったところでアーセナルは再び前に進む方法を見つける。ベジェリンがしばしばホールディングからの助けを得てポグバに対処することに成功、これによりガブリエル、ティアニー、サカでラッシュフォードとグリーンウッドに対応することが出来るようになった。
ここから再びアーセナルはプレスと試合のコントロールを取り戻し、ポグバが再び中に入った際にはまたパーティがカバーし、ベジェリンがショーへプレスに行けるようになった。
(後半に続きます)
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ディスカッション
コメント一覧
ハイプレスがきれいにはまった素晴らしい試合でした。
ボール奪取後の動き出しもあるのに、攻撃面での成果がなかなかでないところが今後の課題だと感じました。
一方で今心配することでもないかもしれませんが、アルテタが常に選手に声を掛け指示を飛ばしているのを見て、観客が入りその声がかき消されるようになったときにプレイ(プレス)のクオリティがどうなるのかとても心配になった試合でした。