【戦術コラム】アーセナルがオーバメヤンを中央で起用するべき3つの理由 前編
マンチェスターシティ、リバプール、フラム相手に見られたアルテタアーセナルのトレードマークとなっているゴールには共通点がある。
それは左で隙を窺っているオーバメヤンで、彼の下に最終的にボールを届け、そしてそれを彼が沈める。アーセナルの最高のゴールスコアラーの完璧な活用方法だ。
一方で、これはアーセナルで最もゴール前への走り込みが上手い選手の無駄遣いではないか、という意見もある。
オーバメヤンが左でプレイする際には誰かほかの選手-具体的にはエンケティアあるいはラカゼット-が中央で先発することになり、ジョー・ウィロックですらもゼロトップ気味のポジションでオーバメヤンを左においてプレイしたこともある。
先日のシェフィールド戦でオーバメヤンは中央に移されたが、アーセナルがこれにより一人多くのクリエイティブな選手を起用できるようになり、より危険な攻撃を展開できるようになった。
一人ストライカーを外した方が攻撃力が増すというのは不思議に思えるが、エンケティアに代わってペペが入った後のパフォーマンスを見るに、アーセナルはこれを考慮すべきかもしれない。
オーバメヤンが最後にワントップとしてプレイしたのはユングベリ体制の2019年12月が最後で、この時は両サイドでペペとマルティネッリがプレイした。
確かにこの際のスタッツはあまり良いものとは言い難く
・36分
・7本のパス
・ボックス内でのタッチ数1
・ドリブル、シュート、チャンス創出0
というものだった。
だが、シェフィールド戦では、ついにアルテタから中央でプレイする許可を得たオーバメヤンは中央で生き生きと、命の息吹を吹き込まれた溶暗プレイを見せていた。
なので、今回はオーバメヤンの中央での起用に関する考察を行ってみたいと思う。この試合の後半を見返してみると、画面のオーバメヤンの動きを目で追い続けるだけでもかなり大変だった。彼をマークするのがどれほど難しいタスクか想像がつく。
オーバメヤンはまるでストライカーが試合中にどのような動きを行えばいいかの丸でお手本のような選手だ。
何故オーバメヤンの動きがアーセナルの攻撃を相手にとって脅威としたか、3つの点から解説していこう。
自由なポジショニングによるマーカーの攪乱
これはオーバメヤンがウイングとしてプレイするときにも言えることなのだが、彼はボールがあるのと逆サイドに位置し、相手のマークを外して裏に抜けるプレイを好む。
中央でプレイしたシェフィールド戦でも、オーバはそこにとどまって足元にボールを要求するのではなく、相手のCBのすぐ外側のポジションを取り始めた。
このポジションから彼は縦に抜けて相手DFを超えてくるようなクロスにたどり着くことも出来るし、モススペースが空けばマーカーの不意を突いてそこに走りこむことも出来る。
これは明らかにオーバメヤンが意図的にとっているアプローチだ。アーセナル、そしてオーバメヤンのトレードマークとなったゴールからわかる通り、彼は出来るだけ自分の視野にピッチの多くを収めることを好む。
ボックスのボールと逆側のサイドで彼アクティブに相手のDF達を攪乱した。これにより、シェフィールドのCB達はオーバメヤンを見るのが自分の役割なのか、それともすでにチームメイトがケアしているのか四六時中確認しながらプレイしなくてはならなかった。
そして、ボールが逆の右サイドに移るにしたがってオーバメヤンもそれとは逆側に向かって動き出した。
相手守備陣にとって予想不可能なオーバメヤンの動きは厄介で、オーバメヤン自身も自分の一番の強みである加速性能をどのように活かせばいいかよくわかっている。
上の場面では、オーバメヤンが外に離れるのに従って、ボックス内はほとんど空っぽの状態になった。アーセナルは最近低く引いた守備陣を崩すのに苦戦する傾向にあり、このような状況でラカゼットはボール保持者に寄って行くような動きを見せることが多い。上の場面ではブカヨ・サカだ。
だが、オーバメヤンはそのような動きは見せず、ピッチを出来るだけ広く使おうとする。ピッチ上を動き回って、近づくのではなくボールから離れていくのだ。
これにより一見彼がチームの攻撃から孤立しているように見える場面も散見されるが、元来オーバメヤンの一番の強みは味方とのパス交換や連携で活きるものではない。
したがって、彼のボールから離れていくはクリエイティブな選手たちにスペースを提供する動きなのだ。また、同時に、彼はボールの方にいるとは限らないので、ボールの位置に関係なく相手DFはオーバメヤンの位置を気にしていなくてはならない、という利点もある。
(後編に続きます)
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コメント一覧
面白い。説得力あります。…現代サッカーで、誰がフィジカル負担をするかというのは多分、最重要課題と思います。私の結論はラカゼットが無理なら誰も無理、2トップ守備負担は交互にというものですが、ンけティアもいるし、そうでないという理論は本当に興味が惹かれます。