ジェイソン・ローゼンフェルドの退団がアーセナルに与える影響
数週間前にAthleticが、アーセナルが3億円程度で買収したデータ分析会社、StatDNAの創業者であるジェイソン・ローズフェルドのアーセナル退団を報じた。アーセン・ベンゲルを追ってFIFAに加わるのだという。
アーセンは世界で最も早く90年代から既にデータの活用を始めていた監督の一人であり、アーセナルのStatDNAの買収にも主導的な役割を果たした。
この会社は世界中の選手たちのデータベースを持っている。わかりやすい例を使えば、WhoscoredやSquawkaのようなものだ。だが、一般に提供されているそれらとはデータのレベルが違う。
StatDNAのデータベースは分析レベルが深いだけではなく、なんと多くのクラブの各年代のユースレベルの選手たちのデータさえもカバーしている。
ガーディアンによれば、『StatDNAのスタッフは世界中の試合を観戦し、細部まで情報を入力する。単なるアシストというだけではなく、パスが得点者の走るスピードを落とさないものだったのかまでを精査し、チャンスがストライカーの利き足で決められたものか、またGKのポジショニングがどうだった窯で記録される』のだそうだ。
彼らの細部へのこだわりはすさまじい。フットボールハッカーという本でミスリンタートが自前のソフトでカンテと似た特徴を備えた選手という条件でトレイラを発掘したというエピソードが語られているが、StatDNAも同じようなソフトウェアを持っており、ボタン一つで一定の特徴を持った選手を探し出すことができる。
ミスリンタートがやってくる前は、アーセナルは自前のスタッツ分析チームを持っており、彼らを統括するのがローゼンフェルドだった。
だが、我々は短期間の間に二人のデータ分析のエキスパート(ローゼンフェルドとミスリンタート)を備えたクラブから、ミスリンタートの言葉を借りれば『単に代理人を通してオファーされた選手を買うだけのクラブ』になった。
昨夏アーセナルにはテクニカルディレクターがおらず、サンジェイ、カジガオ、ローゼンフェルドのチームがエメリの望む選手を獲得した。
報道によると、ザハではなくペペを獲得すべきと進言したのはローゼンフェルドなのだという。
アスレティックによると、サンジェイはエメリとの契約延長の準備を進めていたが、それにストップをかけたのがローゼンフェルドだったのだという。
同じように、ウナイ・エメリが強烈にプッシュしていたデニス・スアレスの獲得をやめ、若手をトップチームに昇格させることで対処するように、と進言していたミスリンタートの目も確かなものだったといえるだろう。
とはいえ、データに精通していれば、すべてうまくいくかというとそういうわけでもない。アーセナルはトータルでエルネニー、ムスタフィ、ガブリエル、ルーカス・ペレスといった選手たちに70M以上を費やしているが、彼らはスタッツが良かっただけでピッチ上で違いを残せたとは言えない。
また、総合的なスタッツがあまりよくなかったため、アーセナルはグリーズマンの獲得を見送ったともいわれている。
ミスリンタートの獲得に関しても、ムヒタリアン、ソクラティス、リヒトシュタイナーなどは成功だったとは言えない。
アーセナルはより代理人主導の選手獲得モデルに移行しており、直近の3人の選手、ルイス、ソアレス、マリの3人は全員サンジェイに近しい代理人の推薦で獲得したものだ。
彼らのコストは17Mで、今の紙上を考えれば、これは代理人とのコネクションをうまく活かした獲得という見方もできる。
誤解されがちだが、アーセナルはジューラブシャンやカナレス、ジョルジュ・メンデスといった代理人たちが連れてくる選手をそのまま獲得しているわけではないだろう。
まず、分析担当スタッフも含めたテクニカルチームがエドゥの元加入しているし、アルテタもデータとビデオの分析には非常に長けている。
アスレティックが報じた通り、移籍を最終的に決断する権限はアルテタにあるらしく、彼はパブロ・マリのビデオなどを見て最後の分析を担当し、OKサインを出したそうだ。
アーセナルは今季ティアニー、マルティネッリ、ペペ、サリバといった選手たちも獲得しており、彼らはスーパーエージェントたちに担当されていた選手というわけではない。
ローゼンフェルドがアーセナルを去るのは痛手だが、単にアーセナルが新しい方向に動き出しているというだけだ。テクニカルディレクターに率いられた分析チームが既に存在しているし、判断力が確かな監督もいる。
このような構造で、どちらにしろ、ローゼンフェルドにはエドゥのチームで分析を担当するくらいしかやることがなかったはずだ。
アーセナルはクラブの意思決定にかかわる人数を減らす方向に歩んでいる。もちろん多様性のある意見を取り入れるのは重要だが、それにより決定が遅れてしまうこともある。
次の夏の移籍市場は非常に興味深いものになるだろう。アーセナルにとって新しい時代の始まりであるというだけではなく、選手獲得チームにとっても新方針を披露する機会となる。
もちろん変革にはリスクが伴うが、この夏どんな選手がアーセナルに加入するか楽しみに待ちたいと思う。
(Source: http://ltarsenal.com/jaeson-rosenfeld-how-statdna-gurus-departure-will-affect-arsenals-business/)
ディスカッション
コメント一覧
練習の為だけに、ある種の選手を雇うチーム、監督がかつてはいた。今でもいるが大分減った。。アーセナルの功績は大きい。エドゥは退団後それを発信し続けてくれた。戻ってからは、「まず今いる選手が大事」といった。また、アルテタの采配、選手のチョイスも完全にスポーツ的な意味でも納得できるものであり、ローゼンバーグ氏は、安心して退団したのだろう。…20年かけて創り上げた道徳的規範は守られた。
名前間違えました。すみませんでした。