プレミアリーグの今季破棄の可能性とその影響
コロナウイルスの危機が広まり始め、プレミアリーグの関係者がルールブックを読み返した際に、シンプルながらも厳しい現実が明らかになった。
このような事態に備えたルールは全くない。サッカーがシーズン途中で中断することになるとは想定されていなかったのだ。
そのせいで、これから何が起こるかの議論は激しさを増している。あらゆる解決策が検討されているが、そのうちのより抜本的な提案の一つは、ここ数日で勢いを増している。
それは、今シーズンを破棄、なかったことにすることだ。
それは3月12日にプレミアリーグの延期が決定された夜に2つのクラブが支持を表明したアイデアで、ウェストハム・ユナイテッドのカレン・ブレイディは土曜日に新聞のコラムで彼女の姿勢を明らかにした。
他クラブからの反発を受けて、この提案は一時的に棚上げされたが、先行きが不透明な状態が続いていることで、この提案は再検討され始めている。少なくとも4クラブが今ではこの案を支持しており、選手のハリー・ケインもこの案への支持を表明した。
彼のような有名な選手がシーズンの中止について話すということは、やはりこの選択肢が現実的になっているという証拠だろう。
だがそもそも、シーズンを無効にするなどということは可能なのだろうか?その技術的な問題とこの案のメリットは?また、それは実際に何を意味するのだろうか?
シーズンの無効化。それは読んで字の通りの意味だ。19/20シーズンはなかったことになる。
つまり、2019/20シーズンは起こらなかったことになる、ということだ。2020/21シーズンに、今季を再びゼロからやり直すということであり、すでに8ヶ月が経過しているにもかかわらず、今季の成績はすべて無視されるのだ。。
クラブにとってだけではなく、選手にとってもそれは同じで、この期間のすべての結果と記録は消去される。彼のすべてのゴールがカウントされないと言われても、ケインがこの案を支持するかどうかは少し疑問である。
そして、さらにクラブにとって重要なのは、プレミアリーグの放映権を獲得した企業がが法・契約の両観点から金銭の返還を要求する権利を持っているということだ。もしシーズンが無効になった場合、プレミアリーグのクラブは12億ポンドもの損失を被るのではないかという懸念がされている。
だからこそ、大多数のクラブが、今季を最後までプレイすることを目指している。のだ。
一部のサポーターがそうではないとしても、現在のプレミアリーグの上位10チームは全て、今季の無効化を望んでいない。
リバプールのタイトル獲得がなくなることが話題に上がることが多いが、実際にはより問題となるのは順位表のより下の方だ。
『シーズンの無効化はすべての解決策の中で最悪のものになるだろう』とある情報筋は言う。
これは、政治的な問題に発展する可能性があるところでもある。 4つの下位クラブは、プレミアリーグ残留が保障されることで得られるものの方が、返還しなければならない放映権料よりも多いと感じられているため、シーズンを無効にすることに賛成していると言われている。
これこそが議論の本質であり、クラブにとって非常にシビアな金銭の問題なのだ。全てはお金が決め手になるだろう。
金銭面の理由から、プレミアリーグの多くのクラブはシーズンの無効化を望んでいない
。だがもし、仮に彼らが意見を変え、シーズンを中止し無効化するほかないという意見で一致したとしても、プレミアリーグの20プクラブ間の投票だけでは十分ではないという問題もある。
規定によると、サッカー協会とイングランド・フットボールリーグの合意がなければ、プレミアリーグが一方的にシーズンを無効にすることはできない。同様の理由から、降格クラブや昇格クラブの扱いを一方的に変更することはできない。
EFL(イングランドの2-4部クラブが属する)の立場は明白である。 彼らはシーズンを最後までやり抜くことを決定している。それがいつのことになろうとも。それは、プレミアリーグのどの理由よりもはるかに差し迫った動機によるものだ。
下位クラブの経営はプレミアリーグクラブよりもはるかに危なっかしく、最大で45ものクラブが経営破綻する可能性があると言われている。
そのため、EFLの立場が変わることはなく、事実上、プレミアリーグは袋小路に追い込まれることになる。
さらに、法的な問題が発生する可能性すらもある。複数の情報筋によると、プレミアリーグがシーズンを無効にして夏から再開しようとした場合、昇格を目指すクラブは特に大きな損失を被ることになるという主張は正当なものだ。
その結果、予想されるのは、彼らが「非常に攻撃的」になるということだ。
そして、 シーズンの無効化に反対する多くの人が、国民のサッカーへの信頼度が揺らぐという問題を指摘する。
リーグが破棄され、試合に意味がないことがあるとサッカー界が事実上宣言してしまえば、今後もサッカーの試合結果を100%信頼することができないということを意味する。
それはある意味では、サポーターとの契約が破られることと同じだ。もしかすると、これが最も重要な問題かもしれない。
2020-21シーズンはどこかの時点で切り捨てられ、延期されなければならないことが必至である以上、早急に決断を出そうとすることに意味はない。
タイムリミットの設定というのも今回の議論のカギになる。プレミアリーグクラブ上層部の多くは、非常に多くの人がなくなっている時期にこのような議論をしなければならないことに違和感を覚えている。
上層部の一人は『今シーズンを終えなければならないことについて不平不満をぶちまけるべきではない。結論を出すにあたっての締め切りは恐らく1ヶ月後だ。今の段階で不確かな情報に基づいて推測しても意味がない。サッカー界はもう少し待つ必要がある。』と話している。
UEFAが大人な対応を見せ、必ずしもシーズン終了の日程を今までと合わせることはないという見解を発表したことがこの意見に支持が集まる要因となっている。
とはいえ、議論のための時間は無限にあるわけではない。
もし、スポーツの公平性、サッカー界への信頼を理由に今季を中止すべきではない、と主張するのであれば、それはシーズン途中の中断にも適用されるはずだ。
もし例えば中断期間が6ヶ月を超えている場合、それは本当に2019/20シーズンの正当な続きとみなすことができるだろうか?移籍市場などはどうすればよいのだろう?
このような逡巡が、今もまだプレミアリーグの破棄という案が議論の対象となっている理由だ。可能性は低いが、一応無効化の可能性は排除されていない。
もちろん、プレミアリーグ自身がこの可能性を排除しようとする可能性はある。プレミアリーグの会議は今週中にも招集が予定されており、彼らはこのアイデアをきっぱりと抑え込もうとするだろうと予想されている。
しかし、現時点では何も決まっていないし、どのような可能性も排除することは出来ない。前例がないからだ。
唯一確かなのは、来年以降のプレミアリーグの規則には、もし不慮の事態によりリーグを中断しなくてはならなくなった場合どう言う対応をとるかという条項が盛り込まれるだろう、ということだけだ。
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コメント一覧
いつ落ち着くのかもわからないですし
19-21シーズンでもいい気がしてきた笑
まぁ移籍市場とかあるから無理なのかも知れませんが