アーセナルはアンチェロッティ招聘に慎重になるべきだ
火曜日に、カルロ・アンチェロッティがナポリをCL決勝トーナメントにチームを導いた一時間後に解雇された。それにともなって、エヴァートンやアーセナル、ウエストハムといったクラブからの興味が報じられている。
だが、アンチェロッティというのはとても奇妙な監督だ。ボブ・ペイズリーとジネディーヌ・ジダンと並びCLの複数回優勝を記録している3人の監督の一人であり、彼のリラックスした雰囲気は選手たちに人気だ。
彼は、現代のより苛烈でストイックな監督たちと比べて非常に好感の持てる人物だ。だが彼は過去20年のうち16シーズンは欧州トップレベルのクラブで指揮をとっているが、リーグ優勝は4度しか成し遂げていない。
アンチェロッティの率いたPSGがモンペリエにリーグ優勝を許し、また彼の率いたレアル・マドリードがアトレティコにタイトルを奪われている。彼の所属クラブを考えると、そこまでパッとした成績を収めているとは言えない。
バイエルンでの彼のキャリアがその象徴だ。2016年にペップ・グアルディオラからその職を引き継ぐと、ペップのインテンシティが高く細部にこだわるアプローチに疲れたチームから当初は歓迎され、バイエルンは良いサッカーを見せ、選手も幸せそうだった。
だが、その後時間が経つとあまりに緩いトレーニングの様子が明らかになり、グアルディオラ時代の姿は影形もなかった。結果も悪化し始め、最終的に選手自身がより厳しい監督を望み始め、アンチェロッティの退任を求め始めた。
アンチェロッティは選手を落ち着かせ、特定の試合に関して良い準備を行うことは非常にうまい。彼の落ち着いた性格は、ビッグクラブの複雑な政治的なやり取りをこなすのにもむいている。
グアルディオラの後継ぎとしてや、スコラーリ後のチェルシーがそうだったように、厳格な監督の後には短期的な利益をチームにもたらすことはあるが、彼は何もないところからチームを作り上げ、毎週選手たちの最大限の力を発揮させようと心を砕くようなタイプではない。
サッカーの様子は昔とは大きく変わってしまった。ほんの15年前には、選手をメンタル面で適切な状態に導くだけで、良い選手たちとほんの少しの運さえあれば、成功を収めることは可能だった。
ジダンが証明して見せたように、今でもそれはトーナメント戦であれば可能だ。だが、リーグ戦のように長期にわたる大会ではクロップやグアルディオラが証明しているように、トランジションへの対応が上手く、引いた守備を崩すことが出来る、より戦術的に成熟したチームが成功することが多い。
したがって、アーセナルが念頭に置かなくてはならないのはクラブにとって必要なのは何なのか、という点だ。もしチームがスーパースターたちをうまく管理し、戦術で縛り付けることなく自由にプレイさせる必要があると感じているのであれば、アンチェロッティは理想的なチョイスだ。
アーセナルが置かれた状況を考えれば、確かに彼は短期的にはアーセナルを安定させる効果があるかもしれない。
だが、アーセナルフロント、そしてアーセナルファンはアンチェロッティがゼロからチームを作り上げ、未完の大器を監督の哲学に合わせて育成してくれるというような幻想は抱かない方がいい。
アンチェロッティはそこまで強烈に選手を追い込むだけのエネルギーや性格を持ち合わせておらず、それが常に優しげでいられる理由かもしれない。彼は他の監督のようにタッチライン上で怒り狂ったりはしないのだ。
もちろん、だからといって(戦術面で最先端とはいえないにせよ)アンチェロッティが監督として劣っているというわけではないし、アーセナルのようなクラブにとって彼が間違った陣せ音あるといいたいわけではない。
だが彼は限られた環境で、限られた役割を与えることで輝くタイプの監督だ。プレミアリーグのクラブに、そのような環境が現在存在しているかは疑わしい。
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