プレミアリーグにおけるVARの介入条件
今季からついにプレミアリーグでも導入され、いろいろと物議を醸しているVARですが、先日Jリーグでの導入も決定されましたね!どのような条件でVARが介入し、あるいはVARが介入しないのか、そして介入する場合はどういう扱いになるのか、プレミアリーグの公式ページを参照しながらまとめてみました。
(出来るだけVARに関するルールを精確に読み取るよう努めましたが、もしかすると解釈が間違っている可能性もあります。また、これがそのままJリーグでも全く同じとは限りませんのであしからず。)
VAR介入の対象となる4つのケース
試合の流れをスムーズに保つため、そもそもVAR介入の対象となるケースは限定されています。まず第一に、"はっきりとした、かつ誰の目にも明らかな誤審(clear and obvious error)"、または"深刻性を伴う見逃された事象(serious missed incidents)"が発生した場合に限ってVARが介入することとなっています。
このどちらかが、"(誤審が)試合を変えてしまう可能性のある4つの状況 (four match changing situations)" 下で発生した場合に限る、ということです。
その4つのケースというのは、
ゴール(ゴールに至る過程も含む)
PK(PKに至る過程も含む)
一発レッド(2枚目のイエローカードによる退場は含まない)
イエローカードあるいはレッドカードを提示する選手を間違えた場合
で、ゴール、PK、そしてレッドカードが出された場合はVARは自動的にその過程に見逃しや誤審がないかをチェックします。ですが、逆に言えば、他のケースでは、いくら明確な誤審があっても介入はしません。
例: センターサークル付近で、既にイエローカードを一枚もらっている選手がファウルを犯した。これは、本来イエローカードであるはずの明らかなファウルだったが、主審の見逃しによりノーファウルとなった。その後、ボールは最終的にラインを割ってスローインとなった。
この場合、このプレイはどちらのチームの得点・PKとも関わっていませんし、かつ一発レッドカードの対象でもないため、VARの介入により二枚目のイエローカードの提示を促す、などといったことはできません。
以下に、各ケースをそれぞれ詳しく見ていきましょう。
ゴール&PK(+ゴール・PKに至るまでのプレイ)
得点あるいはPKが与えられた場合はは自動的にVARによりチェックされ、得点・PKに至る過程で、オフェンス側に反則がなく、ゴール/PKが成立するかどうかを確かめます。あくまで得点あるいはPK獲得に至った直前の攻撃の最中に、ということなので、必ずしも攻撃側がボール保持を開始した時点までさかのぼるわけではなく、"相手が守備を組織するチャンスが与えらえたか"や"攻撃の流れ"を考慮して総合的に判断されるようです。
また、興味深いのはボールがアウトオブプレイになった段階で攻撃の流れは切れると判断されるため、公式のQ&Aに記載されているように、もし本来ゴールキックのはずだったのに誤審でコーナーが与えられ、そのコーナーから得点が生まれたとしても、VARのチェックの対象にはなりません。(コーナーから得点に至る過程が始まったと解釈されるので、その前の段階はVARの対象外なので)
そして、プレミアリーグ公式サイトでは、この4つのケースでVARによって覆されうる判定を2種類に分けており、一つは"事実的な判定(事実かどうか厳密に判定可能な判定)(factual decisions)"、もう一つは"主観的な判定(subjective decisions)"です。
事実の判定
オフサイドや攻撃の途中でボールがピッチ外に出ていたなど、VARを用いて事実として厳密に判定できるものに関しては、攻撃に至る過程でそれに当てはまり、かつ主審がそれを見逃していた場合VARはそれを主審に伝え、原則として主審はゴールを取り消ことになります。
線を出ているかどうか、オフサイドの場合は体がオフサイドポジションかどうか、などは静止画で見れば厳密に判定できるため、いくらほんの数センチでも違反は違反、というスタンスなのだと思われます。
明記されてはいませんが、恐らくこちらが先ほどのVARの原則のうちの"深刻性を伴う見逃された事象(missed serious incidents)"に対応しているのでしょう。こちらのケースの場合は、"clear and obvious(はっきりと誰の目にも明らか)"であるかどうかは関係ない、と書かれています。
主観的な判定
より複雑なのがこちらの主観的な判定で、通常のファウルやハンドはこちらに分類されます。これらに関しては、VARは"はっきりとした、かつ誰の目にも明らかな誤審(clear and obvious error)" をみとめた時のみ介入する、ということになっています。
この場合に、主審とVARチームは話し合い、主審が何を見た、あるいは何を見たと考えているかVARチームに説明します。それがVARチームがカメラで見たものと食い違っていると感じた場合は、VARチームは判定の変更を提案します。
しかし、最終的な権限は主審に残るため、VARチームの提案を受け入れないことも主審には可能です。PKの判定が取り消された場合には、守備チーム側からのドロップボールで試合は再開します。
PKに関して
また、PKにつながるファウルではなく、PK事態に関しては、GKのポジションやボールへのダブルタッチなどこちらもはっきりとした誰の目にも明らかな誤審があった場合はVARは介入可能です。ただ、"直接的な影響がある"ペナルティエリア内への侵入に介入する、ということなので、少し早めにペナルティエリアに入っていた、などは特にPKへの影響なし、とされれば止められることはなさそうです。
イエローカード・レッドカードを提示する選手を間違えるケース
一番シンプルで分かりやすいのがこのケースで、イエローレッドを問わず、反則を犯した選手と異なった選手にカードを提示した場合、あるいは、誰に提示するべきなのか判断できない場合はVARの介入対象となり、主審に実際に反則を犯した選手に罰則を与えるようVARチームが提案します。
一発退場
VARの介入が許されている最後のケースが一発退場です。これには2枚目のイエローカードによるレッドカードは含まれません。(その試合には影響はないが、二枚目のイエローカードがイエローではなく一発レッドカードが妥当、という場合は介入の可能性はある。累積警告や出場停止試合数に影響。)
したがって、これにより起こりうるのは"レッドカードの取り消し(イエロー、あるいはカードなし)"または、"見逃されたファウルや、イエローカード/カードなしと判断されたファウルに関してレッドカードの提示"の二つです。
得点やPKの場合と同じく、 “はっきりとした、かつ誰が見ても明らかな誤審(clear and obvious error)" が認められた時にVARは介入し、他のケースと同じように主審との会話を経て、主審が目にしたものとVARチームの見解が異なる場合に判定の変更が提案されます。
ここで一つ注意すべきなのは、試合の流れを損ねないために、VARが介入することのできる時間帯の期限が決められている、という点です。
問題の行為がプレイ継続中に起きた場合は次に(スローイン、ゴールキック、コーナーキック、フリーキックなどで)プレイが中断され、リスタートが行われるまでにVARは判定を覆すためには干渉する必要があります。
また、もし問題の行為がプレイ中断中に起きた場合は、その後の試合再開後の次のリスタート時、つまり2度目の試合再開時までに干渉する必要があります。
また、VARが導入されたといっても、主審VARチームどちらともが見逃してしまったファウル、というものが存在する可能性も十分にあるので、以前と同じく、試合後にビデオで明らかになった悪質な行為に対してあとから出場停止を課されるパターンというのも廃止になるわけではありません。
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